第13話~因果応報⑥~
ついに明かされたカナリアの会の真の目的。
それを聞いた輝木光は、一体どうするのか……?
今回、ついにカナリアの会との戦いが完全決着!
--------(side:輝木光) ---------
「この国はもっと強く、美しくなれる。俺が変えてみせる」
「必要ないから、悪人と無能は殺すべきだと……?」
「そうさ。全てに施しをなそうとするから、足りなくなるし、矛盾するのさ。バカ共は切り捨てて、未来を築くに値する優秀な者にだけ、資源をつぎ込めばいい」
「……だったら」
「……」
「だったら坂佐場搠、アンタも死ぬべきだな、この悪人が!!」
「……右上かっ!?」
私に向けて引き寄せた巨大な鉄塊が、坂佐場の背後に高速で迫る!
「無駄だよ。この程度の不意打ちでは、方向を『逆転』させるのに、十分すぎる時間がある!」
『ギュウゥーン!』
鉄塊は方向をUターンし、遠くへ飛んでいく。
「なんだ? 勝機がなくなって、諦めたんじゃなかったのか、輝木光。やはり死は怖いか?」
「……私が諦める? 違う」
「勝機がなくなったのは、アンタのことだ! 坂佐場搠!」
「なにっ? ……この鉄塊、括りつけてある! 振り子やブランコのように上部を軸に!!」
鉄塊は1回転して戻ってくる。
そして先程とは逆の方向から、坂佐場へ向かい――。
「ぐおっ!?」
坂佐場搠に命中!
ヤツを吹き飛ばした!
「これでダメージ入れ替えの射程距離外だ。アンタに手札は、もう残ってない!」
「ぐっ……、だが満足に動けないお前と俺……距離をとった程度で……!
……! 俺の吹き飛ぶ先に溶鉱炉っ!? この中に俺を突っ込むつもりか!」
坂佐場のすっ飛ぶ先には溶鉱炉。
この工場に来た時、稼働させておいた。
これが、私にとって最後の切り札!
「はっ、だがな! 無理だね! 吹っ飛ぶ方向を『逆転』させれば、それで問題ない! 起死回生もここまでだ、小娘!」
「させないっ」
『ドっ!』
空中を吹き飛ぶ坂佐場搠に、1つの人影が組み付いた。
「あぐうっ!? た、タックルだと!? 輝木光……お前、俺と一緒に死ぬ気か!?」
「……!」
「……いいや、無駄無駄無駄! 忘れたのか? 俺に触れれば、一瞬で血液を暴発させ……っ! いや、これは!」
「…………」
「組み付いてきたのは人形! ダミーか! 俺が能力を空振るスキを狙っていたのか……! 狡猾なガキめ!」
「…………」
「鉄クズを人型に固めて作ったマネキンとはな。
だが、もはやお前は万策尽き果てた!
ので、今からこの飛ぶ勢いを止め、お前を殺す!」
『とんっ』
しかし、直後。
坂佐場搠の思考は停止する。
「…………はっ? ……鉄クズのマネキンから、蹴り……だと……?」
「……ここがお前の終着点だ、坂佐場。アンタの野望は今、終わったんだ」
「なぜマネキンが蹴りを……!? いや、コイツはマネキンじゃない!」
「安心しな。苦しまずに死ねる」
「『本物』だった!! 鉄クズを纏った輝木光! 『本物に見せかけた偽物に見せかけた、本物』!!」
「お前に殺された人たちよりはマシな死に方だろうよ……」
私は磁力で壁に引っ付き、坂佐場と溶鉱炉から離れる。
「ま、間に合わないっ! 方向を変えられない!」
私の蹴りに気を取られた一瞬が、坂佐場に引導を渡した!
「うがあああぁぁぁああっ!!!!」
--------(side:坂佐場搠) ---------
幼い頃に父は死んだ。
今となっては、ほとんど忘れてしまった僕と父さんの記憶。
だけど、1つだけ思い出した。
父さんがずっと言っていたこと。
そして、僕に託した想いを。
「搠。『正しい』ってのは、どういうことか分かるか?」
「法律を守ることじゃないの?」
「なるほど。それも一つの考え方だよな。じゃあ、イタリアには『ビーチで城を作っちゃいけない』って法律があるんだけど、どう思う?」
「え、何それ。意味分かんないよ。自由に作らせてあげなよ」
「自由に作ったら法律違反だ。悪人だぞ?」
「そんなの横暴だよ!」
「……と、まあこういうように、法律だって色々あるし、完璧ってワケじゃない。法律を作る人間が完璧じゃないんだからな」
「だったら、僕はどうすればいいの? 法律が信じられないなら、何も分からないよ」
「さあな。俺にも分からん」
「えっ?」
「本当の正義なんてこの世にゃあ、ありゃしないのかもなぁ。だから、俺は俺が正しいと思ったことをするんだ。
いや、俺だけじゃない。みんなそうやって、自分を輝かせていくんだ」
「正しいと思うこと……」
「搠。お前の名前は何もヌルヌルしてたから付けたわけじゃない。『ヌル』とは、ドイツ語でゼロ」
「僕は空っぽだってこと?」
「ははは! 違う違う! ゼロってことはプラスでもマイナスでもない、フラットな状態なんだ。だから、どんな時もお前は物事をまっすぐ見据えられる」
「まっすぐ……」
「改めて。10歳の誕生日、おめでとう。これから、まだまだ搠の人生は長い。苦しいことも辛いこともあるだろう。
でもね、暗い気持ちに負けちゃいけないよ。どんな時でも、まっすぐな心を忘れるな。お前が正しいと思ったことをやるんだ。
……もし、いつか俺がいなくなっても、この言葉だけは覚えておいてな」
「と、父さん……」
「わっはっは! 辛気臭くなったな! せっかくの誕生日なのにな! さあ、そろそろ行こう。母さんがご馳走を用意してるぞ!」
「……うん!」
「俺が言いたいのはこれだけ!」
「搠、輝く男になれよ! そうすりゃ、素晴らしい世界は、どこまでも広がる! 今までも、これからも!」
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「……父……さん」
俺は……。
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「俺がいなくなったって、この意志はいつまでも残り続ける! 正しく輝く心は、絶対に消せやしないのさ!
辛くても、打ちのめされても、挫けるな! お前なら正しくあり続けられるさ。
なんてったって、俺の自慢の息子なんだからな!」
--------
僕は……、間違ってたのかな……。
ごめん、父さん……。
--------(side:輝木光) ---------
「かが、や……き……」
(ま、まだ生きているのか坂佐場搠。下半身が溶鉱炉に突っ込んで消えたってのに……)
「……あ…………が………………」
…………。
死んだ……のか……。
「勝った…………」
今度こそ、カナリアの会は終わりを迎えた。
「痛い…………、ケータイで、メグに…………」
(クソ、ケータイの調子が悪い……。でも、意識がなくなる前に……なんとかチャットで……)
『製鉄所』
…………。
これでいい。
それじゃあ、痛覚を消して……。
カナリアの会の真のリーダー、坂佐場搠に勝利した輝木光。
意識を失う前に最後の力を振り絞り、仲間へと連絡をするのだった……。
次回、第13話完結!
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ここまで見てくださりありがとうございました。
今回は短いのと、ここ数日最近PVが絶望的落ちてしまっているため、夜にもアップいたします。
よろしくお願いいたします。
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