↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/100

第11話〜命賭け⑤〜

殺人ロボットの製造に関わってると思われる玩具会社『スレイトイズ』。

その社長、都園懸悟はカナリアの会幹部の超能力者だった。


正体を現した都園の罠でまずは赤井萌に異変が起こる……。

「あうっ.......、ああぁぁぁっ!!」


(呻く赤井の口から、薄い赤井がフワフワと飛び出していくっ!? もしや、これが赤井の魂!)


赤井の魂が衣装棚に吸い込まれていく。

そして、赤井の体は糸の切れたタコのように、倒れ込む。


「モエちゃんっ!」


それを、内木さんが受け止めた。


「もう遅い、内木遊。お前が抱えているのはただの抜け殻。ヤツの主体は既にこの衣装棚の中だ」


「..............」


……どうやらマジらしいな。

内木さんが抱えてる赤井の体は、もうピクリとも動かない.......!


「そんなっ.......」


「返してっ! モエちゃんを返してよ!」


(無駄だメグ。返せって言って返すようなヤツなら、こんなことはそもそもしない......!)


「.......水野恵。俺の誕生日は何月何日だと思う?」


「え、えぇっ!? そんなの分かるわけないじゃん! 意味不明です!」


「3秒以内に当てたら赤井萌を返してやる。3、2……」


(突然なんだ!? この問答に、何の意味が............。............っ! まさか!)


「はぁ!? 分かりました約束してくださいねっ!? それじゃあ、12月.......」


「やめろメグ! 答えるなっ」


「21! ......って、え? ヒカリちゃん何.......」


最悪だ!

間に合わなかった!


「バカ。ハズレだ。水野恵、お前の負けだな」


社長……改め都園がそう言うと同時に……。


「うぐっ.......! うぁぁっ!!」


「メグ!」


「お前のような単細胞を欺くことなど実に容易い」


「ああぁぁぁっっ…………!!」


メグの魂も赤井同様に口から飛び出していく……!


「さて、これでA級もあと2人だな」


(よくも2人を.......っ!)


「このヤローッ! 2人を元に戻せ!」


私はヤツに思いきり殴り掛かる。

きっとコイツは戦闘力がないタイプの超能力者!


半殺しにして力尽くで戻させてやる!


「おっと。ストップだ、輝木光」


「うるせえ! 見苦しく命乞いするんじゃない!」


「待って、ヒカリちゃん! ダメ!」


しかし、それを突然内木さんに制止された。


「う、内木さん.......? どうして.......? 黙って引き下がれって言うんですか!?」


「ほう。気がついたようだな、内木遊」


「落ち着いてヒカリちゃん.......。もしアイツをぶっ飛ばしたとしても、2人はきっと返ってこない.......! アイツを殺しでもしたら、永遠に2人は衣装棚の中......」


「そう。その通りだ。だが、2人の命を諦める覚悟があるのなら、俺をぶちのめせばいい」


「まるで人質か.......! 卑劣な手を.......!」


(クソ.......! 無理だ! 2人の命を諦めるなんてこと、私にはできない.......!)


「できないだろうな。輝木、お前は悪辣ぶっているが、心根から非情になることが出来ない人間だ」


アイツの言う通りだ。

私は仲間を……友達を見捨てられない。


「.......でも、ヒカリちゃん。私には分かるわ。2人を取り戻す方法が。そしてきっとアイツもそれを望んでいる.......」



「察しがいいな、内木遊。では今から、赤井萌と水野恵......この2人の命を賭けて勝負をしよう」



都園がそう言った。


(命を賭けて、勝負.......!)


「俺の超能力の正体はもう分かっただろう」


「何かを賭けて勝負をする.......。負ければ、魂を吸い取られる.......」


「ご名答だ。1度目は『真実を話すことを賭け、野球の勝敗を当てる勝負』、2度目は『赤井萌の魂を賭け、俺の誕生日を当てる勝負』.......。

そして、今から3度目の勝負をするというわけだ。俺はもちろん、この勝負に『赤井萌と水野恵の魂を返すこと』を賭ける」


そうくるわけか。

2人の魂をダシに、さらに私たちの魂を奪うつもりだ。

アイツの狙いは、私たちA級の全滅!


「勝負の内容はなんだ? 1981年6月24日生まれ京都府出身兄弟なしの血液型A型、株式会社スレイトイズ代表取締役社長の都園懸悟さんよ」


「なるほど。調べたからもうさっきの手は使えないと……輝木、そう言いたいのだな?」


これだけ『お前のことは調べたぞ』とアピールすれば、もう誕生日当てといった理不尽は仕掛けられないだろう。


「安心するがいい。俺しか答えの知らないクイズなど面白くない。そもそもお前たちには、『降りる』という選択肢だってある」


「降りるだと.......? 人質を取っておきながら白々しいぞ都園懸悟!」


「俺の能力は徹底的に平等だ。相手が了承しなければ勝負は発生しないし、仮に俺が負ければ魂を吸い取られる。では、競技を決めようか」


了承しなければ勝負は発生しない.......。

ならば、無茶苦茶なものは、透かさず突っぱね続けるんだ。

アイツだって、ここで私たちを全員始末したいと考えているなら、私たちが受け得る妥協点を探ってくるはず。


「そうだな.......。ここはオモチャ会社だ。それらしく、『ゲームで勝負』というのはどうだ?」


都園懸悟の提案してきた勝負は、私たちの想像とは大きく違った。



「げ、ゲームだって.......? ふざけているのか? この局面で.......」


「ふざけている? いたって真剣だ。 勝負事に貴賎などない。価値を決めるのは、賭けるものの重さだ」


「はぁ?」


「大きい代償が伴うのならば、誰だって真剣に向き合うものだ。たとえどんな些細な事でもな。

そして、今から賭けるのは命そのもの。どうだ? これでも俺がふざけているように見えるか?」


「.......ゲームの種類はなんだ。まさかノベルゲームとか、1人用のRPGを選ぶわけじゃないだろ」


(しめた。これはラッキーかもしれない。ゲームなら、こっちには内木さんがいる)


「そうだな……。パケットモンスター.......でどうだ」


(やったぞ! パケモンだ! 内木さんのパケモン強さは尋常じゃない!

私は実際に何度も戦って、9割は負けた。彼女の腕は、私が保証できる!)


「当然不正なデータは使用しない。飽くまでも公正な勝負だ」


「............分かった。じゃあまず私からだ」


覚悟を決めろ。

大丈夫、信じるんだ。


そう念じて私は前に出る。


「ヒ、ヒカリちゃん.......」


勝てる可能性が高い内木さんをあとに残す!

そして、私が都園の戦術、プレイスタイル、思考形態.......それらを可能な限り引きずり出す。


内木さんの勝率を少しでも上げるため、私は捨て駒になった方がいい……!


「輝木。何言ってるんだ? お前一人では、賭け金が足りん」



「はぁっ.......!? なんでだよ!」


「考えてもみろ。まずプレイヤーである俺とお前。これで1対1、平等だ。

だが、それに加えこちらは更に『赤井萌から奪った魂を返すこと』と、『水野恵から奪った魂を返すこと』を賭けている。

俺の勝負の条件として、1人分賭けるのはまだいいが、2人分は釣り合わないだろう? 」


「はぁ?」


「今からの勝負に2人分賭けろ。『2人』を取り戻したいなら、お前らが賭けるのも『2人』だ」


「なっ! バカ言うな!」


「当然だろう。公正でなければ勝負ではない」


(ふざけるなっ。今までのだって公正でもなんでもない! 騙し討ちで人質を取っておきながら.......!)


「た、確かにアイツの……都園の言うことも、一理あるわ.......」


「内木さん! 何言ってるんですか!」


「流石は内木遊。物わかりがいい。生粋のゲーマーなだけはあるな」


「それだと、私たちに許されるチャンスは1度きりになる.......! 負ければ皆殺しなんですよ!?」


「そんなこと、負けなければ何の問題もないはずだ。勝つ自信がないのか? さあ、やるかやらないか。どっちなんだ?」


「か、勝つ自信は.......」


私は黙り込んでしまう。

そもそも私は捨て駒になる気だった。


「.......。俺からのアドバイスだ。ここで言い淀む人間に、大きな賭けを制することは出来ない。しっぽを巻いて逃げることをオススメする」


悔しいがヤツの言う通りだ。

確かに私は今、怖気付いて1歩引いた.......!


初めから負け犬気分で挑む勝負に、勝算はない.......!


「......やらせて」


(! この声は……)



「私がやる。勝つ自信はあるわ。みんなの未来も、私の未来もこの手で勝ち取ってみせる」



「内木さん.......」


内木さんが私の前にせり出し、そう言った。


「ヒカリちゃん.......お願い、どうか私を信じて。絶対誰も死なせない」


そう言った内木さんの目を見る。

私に迷いはなかった。


「......当たり前です。勝負がゲームなら、私がやるより内木さんがやった方がいい......。

その内木さんが勝つというのなら、信じます。魂でも命でも何だって賭けますとも! 元よりそのつもりです!」


「.......。ありがとう、ヒカリちゃん」


「いい返事だ。では宣言しろ。この勝負に......」


「私、内木遊と」


「輝木光の.......」


『命を賭ける!』



『ズオオォッ..............!』


「な、なんだ! この摩訶不思議な空間は!?」


勝負了承の宣言直後……禍々しいとも、神々しいとも形容しがたい謎の薄紅色の靄が、内木さんと都園懸悟の周りにたちのぼった!


「安心しろ。その靄は無害だ。何もしなければな」


困惑する私に都園懸悟が言う。


「何もしなければ......?」


「そうだ。それは公正さを守るためのもの。だから、お前たちがルールを破ったり、不正を働いた際には.......」


「ど、どうなるっていうんだ.......」


「いや、伏せておくことにするよ。なに、気にする必要はない。それとも、『不正をするつもり』だったのか?」


「そんなことしないわ。私は正々堂々と、あなたに勝つ」


(内木さん……)


「良い心がけだ。それでは、ゲーム機に電源を入れろ、内木遊」


「分かったわ......」


『――――♪』


たかがゲームに電源を入れるだけで、この威圧感.......。

今から始まるのは間違いなく、大勝負.......いや、殺し合いなのだ!


(......殺し合い? ちょっと待て)


「都園。お前も魂を吸い取られたら死ぬのか.......? 奪った魂はお前が管理してるんだろ? どうなるんだ?」


もしこれで『自分の超能力だからすぐ戻せます、はいもう1回』とかだったら、私たちが命を賭けたのはバカみたいじゃないか。


それに、こいつは死なすわけにはいかない。

カナリアの会の情報を引き出すために――


「さあな。やはり死ぬんじゃないか? 負けたことがないから分からない」


「!」



負けたことがない.......?

そんなのおかしい!


真に公正であれば、とんでもない不運に見舞われて敗北することだってある。

それがないということは、絶対に勝つための何かがあるってことだ......!


「内木さん、気をつけてください! 勝負事に絶対なんてない。アイツ.......きっとなにか仕掛けてきます」


平等だなんて口だけだ。

間違いなく何かある!



「準備はできたか?」


「えぇ」



内木さんと都園懸悟のバトルが始まる!



--------(side:内木遊) ---------


『キーンコーンカーンコーン.......』


校内に響くベルの音。


これは、11年前。

私が中学生だった頃の話だ……。


都園懸悟の罠により、赤井萌と水野恵の2人は衣装棚へと魂を封じられてしまう。

そして2人の命を賭けて、内木遊はパケットモンスターで都園懸悟と戦うことになった。


その時、内木遊は彼女の忘れられない過去を思い出す……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。