第8話~忍び寄る影⑥~
本日、事前告知なしでお昼アップになってしまい失礼いたしました。
お詫び申し上げます。
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敵の超能力者に洗脳され、輝木光を殺そうと襲いかかる妹の輝木影華。
輝木光と赤井萌の2人で影華を追い詰めるも、輝木影華の策によって部屋が大火事になってしまう……。
「あ、あぁ.......っ!!」
私の部屋が燃えるのはこの際別にいい!
良くないけど!
(それよりも、火があるってことは.......! 光ができるってことだ!)
光ある所には必ず……!
「はいはーい。影の世界に、『1名様』ご案内!
さあおいで? お姉ちゃん!」
引きずり込まれる!
さっき使ったほつれた糸はもう燃え尽きた。
今度は1人になる!
「ヒカリ! 私の手を!」
赤井がこちらに手を伸ばす。
「っ! と、届いた! これで.......!」
赤井と何とか手を繋げた。
これで影の世界に孤立する事態は防げる。
そして赤井なら、影の世界でも問題なく攻撃出来る!
情けない話だが、次に1人で影に引きずり込まれたら負ける。
私じゃ影華に対して有効打ゼロだ!
「させない!
影の世界から.......『右腕』は出ていって!」
「うおぉぁぉ!!??」
なんてことを!
み、右腕が千切れ飛ぶ!
(これ絶対死ぬほど痛いヤツだ! 痛覚の神経を遮断しなくては.......!)
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影の世界にまた引きずり込まれた!
それに、2日連続で右腕を失うなんて……!
「ふー.......ふー.......!!
これが.......、本当の決意ってもの.......!
私に、あんな子供騙しのトリックなんて必要ないの.......!」
「え、影華.......! お前も右腕が.......!」
「しょうがないよ.......。
『右腕』はこの世界に入れないんだから.......!
でも、お姉ちゃんのためなら右腕の1本や2本.......!」
影華は私と違って、痛覚を遮断とか出来ない。
今、とてつもない激痛のはずだ。
なんて無茶な!
「さあ、決着の時だよお姉ちゃん.......! 無能でグズなお姉ちゃんとは、これでさよなら!」
針状の影が向かってくるが、この世界には電気を通すものもないし、影に電気は通らない!
この攻撃は防げない!
要するに――私は死ぬ!
--------(side:???) ---------
11年前のある日。
「おーい、早くしないと置いてくぞ、影華」
「お、お姉ちゃーん.......待ってよぉ! ……イテッ」
「何やってんだ……」
「痛いよー! うわぁーん! わーん!」
「.......全く、しょうがないなぁ。ほら」
「お姉ちゃん.......」
「ごめんみんな。先に学校行ってて。
私は影華をおぶって行くからさ」
「ひかりんお姉ちゃん優しいー! じゃ、また後でねー! 行こう行こう!」
「..............。
あいつら.......私のランドセルを代わりに持っていくとか、そういう優しさはないのか.......。ほら、影華。背中乗りな」
「..............ぐすっ.......お姉ちゃん。
ごめんなさい。影華が鈍臭いせいで.......」
「しょうもないこと気にするなって。
私は、私がやりたいことをやってるだけなんだから」
「やりたいこと.......?」
「そう。まあ、お姉ちゃんとしてね。
影華が泣いてるところは見たくないわけなのよ」
「そうなんだ.......」
10年前のある日。
「お姉ちゃん.......うっ.......ぐすっ.......」
「影華、泣かないの。
ヒカリちゃんに毎日会えなくなるわけじゃないんだから。小学校を卒業するだけよ?」
「ママ……やだやだやだ!
お姉ちゃんと影華は、4歳離れてるから、中学も高校も大学も一緒に行けないの! ねぇママ、なんで1年早く影華を産んでくれなかったの!?」
「影華、わがまま言わないの!」
「やだー! やだよぉー!
お姉ちゃんが一緒じゃないなら、お姉ちゃんの超能力をテレビの人にバラしちゃうもん!」
「ありゃー。そんなことされたらお姉ちゃん困っちゃうなー。お姉ちゃん、怪しい黒服の人に連れていかれて、解剖とかされちゃうかも」
「うわぁーん! それもやだー! お姉ちゃーん!」
「ほら、抱っこしてあげるから来な影華」
「お姉ちゃーん……影華とずっと一緒にいてよぉ.......」
「よしよし、全くいつまでも子供なんだから。
影華は」
「.......影華は、学校の成績こそ良いものの.......。
いつまで経っても姉離れ出来そうになくて.......。
ねぇ、パパ?」
「まあ、いいじゃないか。姉妹の仲がいいに越したことはないんだからさ」
4年前のある日。
「ヒカリ! やったな! 率教大学に受かるなんて!」
「そうよ! 去年の夏の模試じゃあ、奇跡が起きて日辺大学って言われてたのに.......。
ヒカリちゃんの頑張りが報われて、お母さんも嬉しいわ!」
「お姉ちゃん.......、おめでとう」
「ありがとう、父さん、母さん、影華。
でも.......影華。本当にいいのか?
私、4月から一人暮らしになるけど.......」
「いいの。私のわがままで、お姉ちゃんの将来を縛りたくない。
お姉ちゃんが選んだ道なら、笑顔で送り出すって、私決めたんだ」
「影華.......! 成長したのね.......。
ヒカリちゃんがウチを出ていくなんて、どれだけ影華が泣き叫ぶか私は不安で不安で.......」
「それに、ママ。私も率教大学に行くから。
そうすれば、夢の姉妹二人きりの生活が待ってる!
お姉ちゃんの性格じゃあ、結婚なんてまだまだ先だろうしー!」
「ははは.......。それが本当の狙いか.......」
「お姉ちゃん! 大学ダブってもいいよ?
お姉ちゃん、うっかりしてるから最後の試験で寝坊とかしそうだしねぇー。
それなら、私はお姉ちゃんと同じ大学に1年間通えるもんねー!
小学生の頃みたいに、おぶってもらおうっと」
「やだよ。ガキの頃ならまだしも、お前今体重何キロだよ」
「あー、そういうこと聞いちゃうんだー。
全く、お姉ちゃんったらー」
「な、何だよ。家族なんだからいいだろそのくらい.......」
「じゃあお姉ちゃんが教えてよ」
「58キロ」
「へー」
「おい、影華も言えよ」
「え? 私がいつお姉ちゃんが教えたら答えるなんて言ったの? そんなこと言ってないよぉ?」
「う、うぜぇ.......」
「にしても58ねぇー。
痩せてるように見えて意外とあるんだねー」
「おい、やめろ」
「全く、お姉ちゃんはどうも抜けてるんだからぁー。大学で悪い人に騙されちゃダメだよー?」
「余計なお世話だよ.......」
--------(side:輝木光) ---------
「お姉ちゃん..............。私の..............」
(私にトドメを刺そうとしてた影華の動きが、止まった.......?)
「お姉ちゃんは..............、ずっと昔から、うっかりやで、ひねくれてて.......怠け者で.......ガサツで.......欲張りで……見栄っ張り..............」
「え、影華.......?」
「でも、分からない.......! 分からないよ!
今はお姉ちゃんが憎くて仕方がない! 殺さなきゃいけないんだって!
だけど.......、もっと深くにある.......胸の奥にあるこの気持ちは何..............!?」
影華の表情がぐちゃぐちゃになっている.......。
影の世界だから顔は見えないけど、私には分かる.......。
今、影華の心に、何かが起きている!
「私のたった一人のお姉ちゃんで..............。
私にとって誰よりも大切で.......」
(もしや.......影華にかけられた洗脳が、解けかけているのか?)
「私.......お姉ちゃんを殺したくない! 私には、そんなことできない!」
私に向けられていた影華の鋭い影達が、再び蠢く。
「..............。.......お姉ちゃん、今まで、一緒にいてくれてありがとう。
私、お姉ちゃんの妹で、本当に幸せだったよ」
「影華! 待て、何する気だ! やめ――」
「大好き」
影華は自分の体を、自分の影で貫いた。
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次の瞬間、私は外の世界に放り出された。
「ヒカリ! 大丈夫ですの!? こ、これは.......!?」
「メ、メグを! メグを呼んでくれ、早く! 影華が.......!」
影華は体を何ヶ所も貫かれ、出血が止まらない!
これじゃあ……!
「もうとっくの昔に連絡しましたわ! 今こちらに向かってます!
片腕が千切れたなんて、あの子にしか治しようがないもの!」
「あ、赤井! 私はどうすればいい!? どうすれば影華は助かるんだ!?」
「そんなこと言われましても! 私は医者じゃないですもの! とにかく出血を止めないと.......! で、ですが、この傷は.......!」
「影華が自分でやったんだ! 私を殺さないために!
クソっ! なんて情けない姉なんだ私は!
こんなに近くにいながら、何も出来やしなかった!」
「.......ヒカリ。
今から私がすることを恨まないでください。
万に1つ、助かる望みがあるならば.......!」
「お、おい、赤井何するつもりだ」
「血を止めますわ!
熱でタンパク質を凝固させて、止血します!
影華さんを死なせはしませんわ.......!
アナタの家族は、私の家族も同然!」
「あ、赤井......」
赤井が怯えながら、炎を手にする.......!
--------(side:???) ---------
「僕の超能力に逆らうため、自ら命を絶つとはねぇ。面白いものが見られた。
家族愛バーサス殺意! 結果は、引き分けって所かな?
輝木も赤井も必死で治してて本当ウケるわー。
どうせ助からないっての。あんなに大量の影に刺されたんだもん。
出血多量。内臓だってズタズタさ。5分ともたずにくたばるね!
あぁ、なんと不幸な運命だろうか。
かわいそう、かわいそうだねぇ。
ふっふふふ! あっはははは!」
輝木影華を相手に絶体絶命だった輝木光だが、少しずつ影華にかかった洗脳が解けていた。
僅かに自我を取り戻した輝木影華は、姉を手にかけないよう、自身の能力で自害を試みるのだった……。
次回、第8話完結です




