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第1話~最悪の始まり③~

超能力を応用し、テロリストの場所を特定した輝木光。


この事件を解決するため、彼女たちはテロリストの居場所へと進む。


そんな彼女らをある人物が引き止める。


それはなんと、このゲームのトッププレイヤーだった……。

(えぇ……。マジか.......)


テロリストは信じられない場所にいた。


だがそれはこの際どうでもいい。


この端末に電撃の罠を仕掛けてさっさと退散する。


先ほども少し登場していたが『罠』というのは全職共通で仕掛けられる属性攻撃である。


自分の意思で起爆させるか、さっきメグメグさんが引っかかったみたいに誰かが触れればオートで即起爆する仕様だ。


--------


「はっ」


意識が自分の体(今回はゲーム内なので自分のアバター)に戻った。


私の視界では、メグメグさんが不安そうにこっちを覗き込んでる。


レッドさんは、向こうを向いている。

辺りを警戒してくれているのだろう。


「成功です! テロリストの居場所が分かりました。場所は……」


成功を2人に告げる。


「場所は?」


「……森林ステージです」


そうなのだ。


テロリストはなんとメールの記載通り森林ステージにいたのだ。


「……え? マジですの?」


これにはレッドさんも流石に驚いている様子だった。


「ほらー! やっぱり森林ステージなんだって! 影から一刀両断! するつもりなんだよ!」


メグメグさんはなんだか少し嬉しそうに言う。


「でもそれなら話は早いですわね。私たち、森林ステージのすぐ近くまで来ていましたから。もう着きますわよ」


レッドさんが指差す先には確かに森林のステージが広がっていた。


しかし、その時私が見たものは、全く異様な光景だったのだ。


「なんだこれ……」


思わずそう呟いてしまった。


それも仕方ないだろうと思う。


なぜなら、おびただしい数のプレイヤーの遺体。

そして、殺し合う生きているプレイヤー達。


それらが眼前にあったのだから。



「ひゃーーっ! 何これ! ひどい!」


「……まあ、そんな気はしてましたわ。

ここには他のプレイヤーを殺すのに躊躇のなかった輩が集まるんですもの。

殺し合いになるのは必至といったところですわ。

それに、すでに3つの首を持ったプレイヤーから一気に奪い取ろうと考えるヤツも、当然いますわよね」


2人の反応が正反対なのは少し面白いが、

目の前の光景は全く面白くない。


だがそれより、今はテロリストの発見が先決だ。


「私たちは周りのプレイヤーにバレないよう、ひたすら隠れながら、人の少ない部分を探して進みましょう」


2人にそう言いながら、テロリストの現在地詳細を確認する。


「ここから少し東です。急ぎましょう」


と声をかけた、その時だった。


「ちょっと止まってもらってもいいかしら?」


唐突に知らない人から、私たちは声をかけられた。


(この人……何の用だ……?)


職業は水属性の戦士だった。

黒いロングヘアの女性アバターだ。


この人が襲ってくるならば、また迎え撃たなくてはならない。

だけど……この人と戦うのは絶対に危険だ。


なぜなら、この人は……現環境での最強装備を身につけていたからだ。

総額100万以上は課金してそうな勢いだった。


プレイヤーのレベルも、私たち3人の合計をも上回っている。


さっき電撃で撃退した5人とは文字通り『レベルが違う』。


「何ですか? 私たちは今とても急いでいるのですが」


戦いは避ける。

そのため今は、この人の目的を聞き出したい。


「急いで? まさか急いで誰かを殺しに行くつもり? そんなのこの私が許さないわ!」


この人、少なくともログアウト目的のプレイヤーではなさそうな口ぶりだ。

……それに、私たちのことをログアウト目的だと勘違いしてる?


なら、なんとか誤解を解ければ戦闘は回避できる可能性が高い。


「私たちはテロリストの言葉に従うつもりは毛頭ありません。

これからテロリストと交渉しに行くんです。

ヤツは私たちを殺すため、このゲーム内にユーザーとしてログインしているはずなんです!」


時間も惜しい。

これまでの経緯をかいつまんで話す。


しかし……


「???」


ダメだ!

この人には全く伝わってない!


『頑張って理解しようとしてるけどやっぱり分かりません』みたいな顔をしている。


これが私のコミュニケーション能力の限界だった。


「と、とにかく! 私たちは他のユーザーを殺すつもりはないんです! これだけはどうかご理解いただければ……」


私は必死に伝える。


「よ、よく分からないけど! それを信じて見逃せっていうの⁉︎ そんなの無理よ!」


相手も混乱してしまい、聞く耳を持たない。


(あぁなんかもうめちゃくちゃだ。私も向こうも混乱しすぎだ。一旦落ち着いて……)


私が考えているその時だった。



唐突に『レッドさんが自らの装備を外し始め』のだ。


「レ、レッドさん⁉︎ 何やってるんですか!」


いつ目の前の相手が襲ってくるか分からないのに、装備を外すなんて自殺行為だ!



私だけじゃなく、ついにこの人も混乱してしまったらしい。


「私だけじゃダメですわ。アナタもメグメグも装備を外してくださいまし」


「ち、ちょっと! 何言ってんのさレッド!」


「そうですよ! ただでさえピンチなのに、今装備を外すなんて自殺行為ですよ!」


メグメグさんと2人で必死にレッドさんを止める。

頼れるこの人まで混乱してしまうなんて、絶望的だ。


「いいから外しなさい」


「イヤですよ!」


この局面で人の装備を剥ぎ取ろうとするなんて、

本当にどうしてしまったんだこの人……!


「……もう、分からない人たちですわね。

この状況で他のユーザーを信じることにどれだけリスクがあるか分からないんですの?

相手にリスクを強要する以上、こちらも相応のリスクを負わなければ、言い分を聞いてもらえるワケないんですの。

……はい! 分かったら脱ぐんですわ!」


レッドさんに説明され、少しその意味を考えこむ。


(? ……うわぁぁ‼︎ ちょっとやめてください本当に! 破けちゃいますって! デジタルの服だから破けないんだろうけどさ!)


しかし、考え終わるより前に、レッドさんに力づくで装備を剥ぎ取られてしまった……。



「私たちに敵意がないと、分かっていただけました?」


結局全ての装備を外され、半袖短パンの初期アバターの姿で土下座をしている。


「え、えぇ……。分かったわ……」


先ほどまで混乱していたあの人も、引いてる……。

死屍累々の場所で私たちは何をやっているのだろう……。


「見たところ、アナタもログアウト目的のプレイヤーではないようですわね。せっかくなのでテロからの解放のため、私たちに協力してくださるととても嬉しいですわ」


「当たり前よ! この年間ランキングトップをひた走るウッチーさんがテロリストなんて悪に屈するワケないでしょう? 私がいるからには百人力よー!」


(……そういうことか!)


私は今ようやく、レッドさんの行動の意味を理解した……!

全てはこの人……ウッチーさんを説得するためだったんだ。


そして今、ウッチーさんは私たちの仲間となった!


年間ランキングトップの人が仲間になってくれれば、私たちは敵なしだ。

テロリストにだって、ゲーム内でなら一方的に勝てるはず……!


「あの、みんな装備着けていいわよ……。このままだと周りには私が剥ぎ取ったみたいに見られて、垢をネットに晒されそうだもの」


ウッチーさんも落ち着いてそう言う。


何とか丸く収まりそうだ……。


レッドさんはすごい。

とっさにこんな判断ができるなんて、一体今までどんな修羅場を潜り抜けてきたきたんだろう。


(……それとも私が無能すぎるだけ?)


私は少し自信を失った。



「テロリストの居場所は既にこのひかりんが把握してますの。

後は見つけ出してタコ殴りにして、人質を解放していただくだけですわ」


「そうなの? すごいわねー! まるで超能力者みたいね!」


「……そうね。超能力者みたいですわ」


「うんうん!」


(えっ!?)


仲間たちにまさかの真実を突かれる。


「い、いやそんなまさか、ち、超能力だなんてそんな、この世にそんなのあ、あるワケないじゃないですかぁ!」


かなり分かりやすく私は動揺する。


「…………」


まずい。バレてしまったのか……?


「……そんなに照れることないですわよ」


(……セーーフ‼︎)


危なかった。


国井に超能力特殊部隊のことは他言無用とされている。

それなのに、早速バレましたなんて、笑いごとじゃない。


--------


ウッチーさんとの話が一旦落ち着いた、そんな時だった。


1人の女性型プレイヤーが凄まじい形相でこちらへ駆けてきた。


「すみません! ランキング1位のウッチーさんですよね⁈ 少しの間でいいんです! 匿ってください! 殺されてしまいそうなんです!」


よく見ると全身ボロボロだ。

手痛いダメージを負っているようだった。


しかし、この人は――。


「ケガしてる! 治してあげないと!」


メグメグさんが近づく。


ダメだ!

近づくな!


この人は! 


いや。コイツは――!


「ダメです! 近づいてはいけない! ソイツは――」


慌てて止めるが間に合わない!


(……いや、まだ方法はある! 今ここで、『少し前に仕掛けた罠』を起爆するんだ!)


「なっ⁉︎ メールボックスがっ!」


駆け込んできたプレイヤーのメールボックスが電撃を放ち拘束する!



そうだ。


罠を仕掛けたメールボックスを持っている。


ゆえに、コイツこそが諸悪の根源……!


「お前が……カナリアの会のテロリストだな……!」


駆け込んできたユーザーの正体……

それはこの事件の首謀者であるテロリストだった!



「え、ちょっと何言ってるんですか⁉︎ この電撃はあなたのせいですか! 早く解除してくださいよ!」


テロリストはすっとぼけようとしてるが、それは無駄だ。


そのメールボックスを持っている以上、間違いなくテロリストだ。


当然解除はしない。

このまま罠で拘束する!


「……本当に森林ステージにいるあたりお粗末なヤツだとは思ってましたが、まさか巣を張る前に飛び込んできてくださるとは……。

私の想像以上にオソマツでしたわね」


「バーカ!」


レッドさんはともかく、メグメグさんにすらバカ呼ばわりされるテロリスト。


「私が正義の刃で、邪悪なるテロリストを討ち取るわ! 覚悟なさい!」


変な名乗りを挙げつつ、ウッチーさんがテロリストに斬りかかった!


年間ランキング1位のユーザー、渾身の一撃。

耐えられるヤツはいない。


これは勝負ありか?




しかし、実際には耐える耐えられない以前の問題だったのだ。


……ウッチーさんの攻撃は――



――届かなかった。



「図に乗るな。忘れたのか? お前たちは既に、カゴの中の鳥だということを」


テロリストがそう言って……


「……っ!」


自身の体に起きた異変にすぐ気づいた。


『体が指1つ動かせない!』



(罠に嵌められたのか⁉︎ いや、違う。そんなありふれた状況じゃない!)


なぜなら、私だけじゃなく、この世界にいる全てが静止していたのだから!


「あと一歩、間に合いませんでしたわね……」


レッドさんがそう言った。


間に合わないって一体何が……?



「こ、この卑怯者……!」


ウッチーさんはテロリストに斬りかかる直前の格好のまま空中で静止している。


「再びこの世界が動き出した時……お前たちを皆殺しにする。この俺の存在を知っているものが、ゲーム内にいてはならないのだ。覚悟しておけ」


テロリストが静止したまま言う。


って。テロリスト……お前も動けなくなってるのかよ。


ならば、この状況はテロリストの引き起こしたものとは別なのか?


わけが分からくなり、思わず叫んでしまう。


「この状況は一体何なんですか! 何が起きているんですか!」



「そう言えばアナタは、私たちより後にログインしたんですわね。なら、知らないのも無理はありませんわ。上を見てごらんなさいまし」


レッドさんにそう言われ、目線(もといカメラ位置)だけを動かし、なんとか上を見る。


「……あ、ぁぁあ‼︎ これは……!」


遥か上空には文字が浮かび、確かにこう表示されていた。


『緊急メンテナンス』


と。



オンラインゲームでメンテナンスが行われる理由はいくつかある。


重篤なバグが見つかった時、システム点検の時、そして、アップデートや仕様変更の時。


ようやく私も事態が理解できた……。

しかし、同時に最悪の可能性に気がついてしまった。


……レッドさんの『次は私たちを容易く葬れる仕様変更をしてくる』という発言を思い出す。


……まさしく、『間に合わなかった』ということか……!


「そんな…………」


その後、上空に『緊急メンテナンス終了』の文字が現れるのに、そう時間はかからなかった。

ついにテロリストとの直接対決が始まりました!


しかし、打倒にあと一歩間に合わなかった輝木光たち。


テロリストの行った仕様変更とは一体……。


次回、VRゲーム編完結です!



いつもありがとうございます!

今後ともどうぞよろしくお願いいたします!

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