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第8話~忍び寄る影③~

妹である輝木影華に仕事や借金のことがバレてしまった輝木光

最終的に喧嘩になり、影華は部屋を飛び出しどこかへ行ってしまう

そして、輝木影華はなにやらトラブルに巻き込まれそうで……

---------(side:輝木光) ---------


「影華を……探しにいかなきゃな……」


(アイツ……どこ行ったんだろう……。もしかして、実家に帰ったのかな……)


……携帯電話を手に取り、自宅に電話する。


『はい、輝木です』


「……。もしもし、母さん? 家に影華いない?」


『ヒカリちゃん⁉︎ アナタ何やってるの!

家族に黙ったまま引っ越しなんてして!』


「ごめん、母さん。その話なら後で聞く。

影華がどこにいるか知らない?」


『影華なら今朝アナタのアパートに行くって出かけたわよ。そしたら、アパートはすでにもぬけの殻だったって……』


「そっか……。ありがとう」


『何があったのか知らないけど、たまには家に帰りなさいよ。

影華が『お姉ちゃん成分が足りないー』とか毎日うるさくて敵わないのよ』


「分かったよ……」


『影華を探してるんでしょ? もし、影華が戻ってきたら連絡するわ。

それじゃあ』


「うん、またね」


『……プッ。ツー。ツー』


電話が切れた。

影華は実家にいなかったようだ。


「実家にはいなかった。ってことは、まだこの辺をほっつき歩いてるんだな……」


「探すなら手伝いますわよ、ヒカリ」


「ああ……。

家族のことで迷惑かけてごめんな、赤井」


「……。いいですわよ。気にしませんわ」


(……? なんだ? 気にしないって割には、ちょっと気落ちしたように見えたけど)




「私は、商店街の方を探してくるよ。

赤井は裏のオフィス街をお願い!」


「承知ですわ。見つけたら電話しますわ」


そう言って赤井はオフィス街へ走っていった。


「今頃、どっかで泣きべそかいてるんだろうな。

早く探してやらなきゃな」


私も足早に商店街に向かう。



(クソ。昼時の商店街は人が多い。

人混みに紛れてしまったら見つけにくいぞ)


「あー、もう..............」


……。

ダメだ。


見つからないどころか、ロクに辺りを見渡せない。

これではラチがあかない。


(めちゃ恥ずかしいけど、商店の人に聞いてみるか……)


「すみません、この辺りで泣いてる女の子を見かけませんでしたか?」


影華はなぜか昔から駄菓子が好きだ。

なので、駄菓子屋の店主に影華のことを聞いてみる。


「うーん。そうだなぁ、何か買ってくれたら教えてあげるよ」


(チッ。足元見やがって)


だが背に腹は変えられない。


「じゃあこの、『魔妖ケムリンデラックスくん』とかいうのを買います」


なんだこの意味不明な商品。

影華はよくこんな感じのものを買ってきていたが、何が面白いんだこれ。


指で触ると多くの煙が立ち上るだけの、変なおもちゃだ。


「ありがとうございますー」


「で、教えてくださいよ」


「いやぁ、見てないねぇ」


(……なんなんだよ。私の150円返せよな)



あれから5軒ほど回ったが収穫はナシ。

そもそも商店街に来てないのかも。


『プルルルルルルル……』


(電話? 赤井か母さんかな)


『はい』


『……。お姉ちゃん……』


(! 影華だ!)


『影華! 今どこにいるんだ!』


『……。お姉ちゃんの部屋に戻ったよ……。

ねぇ……話したいことがあるの……。

お姉ちゃん……聞いてくれる……?』


『あ、ああ……。構わないよ……。

私もちょっと言い過ぎたし、手を出すのは』


『じゃあ、後で。さよなら。……プッ。ツー。ツー』


『反省しなきゃなって……。あれ?』


切れてしまった。

仲直りできそうなのはいいけど、影華は何やら様子がおかしかった……。


元気がないからか……?


まあ、とにかく合流しよう。

一緒にお昼ご飯でも食べれば、いつもの影華に戻るだろう。


赤井に連絡して、私は自分の部屋へ急いで向かう。



(…………。

……アイツ、どうやって私の家に入ったんだ?

出かける時に鍵はかけたのに。

アイツ、合鍵なんて持ってないはずなのに)


--------


「た、ただいまー」


帰りの挨拶をしながら部屋に入る。

妹に向けて、『ただいま』なんて2年ぶりくらいだ。

懐かしい感じ。


(……これから、たまには家に帰るか)


「お姉ちゃん……」


「影華。話って何?」


(っ! イスやテーブル、そしてさっきまで遊んでたゲーム機がない! 影華が片付けたのか?)


それにしては妙だ。

私の部屋にこれらを収納できる場所なんてないはず。


寝室か浴室に押し込むぐらいしか、ダイニングからこれらを消す方法はない。


「お姉ちゃん……。私って、可愛いでしょ?」


「え? あ、あぁ」


影華は何を言ってるんだ突然。

電話でも感じた通り、様子がどうもおかしい。


「私、これでも結構モテるんだ。

それに、クラスで一番足が速いの。ソフトボール部でもエースで4番だし。

しかも、テストだっていつも学年で10位以内」


(なんだ? 本当にどうしたんだこいつ……)


「……。それに引き換え……お姉ちゃんは……。

ガサツで口が悪くて、家事ができなくて、ファッションセンスもない……」


「は、はぁ? え、影華……もしかしてまだ怒ってる……?」


怒ってるにしても異常だ。


姉妹喧嘩は今までにもあったが、影華が『私を貶す言葉』を口にすることは決してなかった。

バカーとかそういうのは除いて。


「足が速いだけで不器用だから球技は下手だし、勉強だって私の方がずっとできる……。

お姉ちゃん、男の子に告白されたことある?

私は軽く2桁はあるよ。全部断るけどね」


「な、なんだよ。何が言いたんだよ」



「……。ダメでグズなお姉ちゃんのくせに、完璧な私の言うこと……どうして聞かないの……⁉︎

私より劣る姉の分際で、なぜ刃向かうの⁉︎」


「え、影華っ⁉︎」


(やっぱり何か変だコイツ!)



「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!

お姉ちゃんなんて死んじゃえ!

私の思い通りにならないお姉ちゃんなんて要らない!」


影華の異常に気を取られたが、気づけば私の上から何かが迫ってきていた!)


(上から何か降ってくる⁉︎ ……テーブルだ!)


「どういうことだ一体!」


とにかくこのまま潰されるわけにはいかない。


(……よし、しめた! 金属製の本棚! これを伝って逃げる!)


.......つもりだった。

だが、しかし。


「電気が通らないっ……⁉︎」


絶縁コーティング!

部屋のあらゆる金属製品が、電気を通さないよう、コーティングされている!


私の超能力を知っている影華が、事前に仕組んでいたに違いない!


「なら、部屋になかったものを使うだけだ!」


ポケットの鍵を思い切り放り投げる!

そのリリースと同時に、電気へ変化して鍵へと潜り込む!


鍵の全長は数センチほどしかないので、端から端へと移動する時間は0.1秒にも満たない。


が、私を押し潰さんと迫り来るテーブルから逃れるには、この時間で十分!


『グシャアッ! バキッ、ミシッ......』


「い、家の床が......!」


……とにかく、間一髪潰されずに済んだ!


だが、なぜ天井から突然テーブルが?


(影華がやったのか? 私と違って、影華に超能力はないはずなのに)


「影華! お前に何があったか知らないけどな。

引っ叩いてでもお姉ちゃんが正気に戻してやる!」


「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい‼︎

無能なお姉ちゃんのくせに、ちょこまかと生意気なのよ! でも、もう遅いよ!」


「ぐおっ!? なっ、なんだ⁉︎ これは!」


突然、ありえない強さの力で、後ろに引っ張られる!


いや、引っ張られるというよりは、引きずりこまれる!


「もう抵抗しても無駄だよ! お姉ちゃんは、すでに私の『射程』に重なっているのだから!」


「うおぉあぁぁぁっ!」


無理だ!

人知を超えた力で、テーブルの下へと引きずりこまれるっ!


なぜテーブルに!

もしや、テーブルに何か細工があるのか⁉︎


(あぁ、ちくしょう! どこへ私を連れて行く気なんだ⁉︎)


「さようなら、お姉ちゃん。

私の世界で会いましょう」


--------


気がついたら、私は真っ黒な空間へ立っていた。


「また会えたね……お姉ちゃん」


「なっ、えっ……影華……なのか?」


声は確かに影華のものだ。

しかし、目の前にいるのは、全身が黒く塗りつぶされ、目と口が不気味に光る異形の存在。


「やっぱり私、お姉ちゃんの妹なんだね。超能力が使えるようになって、より一層繋がりを感じるよ」


(ち、超能力⁉︎ そんな......影華に超能力だって⁉︎)


「数分前に……ついに私も使えるようになったんだ。

お姉ちゃんと違って、生まれつきじゃないけど、私は手に入れたの。

電気なんかよりもっと強くて、素晴らしい超能力を!」


(この空間……暗くてロクに辺りを見られないけど、目を凝らしてよく見たら、私の部屋にあったタンスやゲーム機がある……)


「影と重なったあらゆるものを影の中……この影の世界へと引きずり込む!

それが私の超能力! お姉ちゃんより優れてる私なら、超能力だってお姉ちゃんより優れてて当たり前!」


「影の中……?」


(この暗い世界は、影の中の世界だというのか……?)


「!」


後ろを見ると、私の足元には『白い影』がある!


……暗闇に目が慣れて周りが見えるようになってきた。

この世界、どうやら光と影があべこべのようだ。


「影の世界は私だけのもの。

全てが私の思うがまま。

この世界では影を実態化させて操って攻撃したり、自由にモノを出入りさせたりね。

例えばこんなふうに。……電気が通る物体は、お姉ちゃん以外すべてこの世界から出て行って!」


(思うがまま……。ってことはつまり)


「一瞬で消えた……。

ゲーム機も、その辺にあった空き缶も……。

端に包まっていた電気毛布もなくなっている……」


電気を通し得るもの全てが、影の世界から追い出された!


「こうしてしまえば、お姉ちゃんはただの人。私の好きにできるよね!」


「くっ……。自分が何やってるか、わかってるのか影華……」


「あぁ、お姉ちゃん……どうやって殺そうかな?

頭を殴って撲殺? やっぱり影で串刺し? それともバラバラに引き裂く?

うーん、悩んじゃうねぇ」


……間違いなく今の影華は、あの時のメグと同じだ。


カナリアの会の何者かに操られている。

しかもあの時と違って、ここに内木さんはいない。


私しか、影華を救える人間はいない!


「……私は、カナリアの会なんて正直どうでも良かった。

国のために戦う義理もないし、金さえあればいつでも部隊を抜けるつもりだった。

私は、正義だとか人道だとか……そんな抽象的なことに人生を賭けられる人間じゃない」


「決めた! 串刺しにする!

それじゃあ、ちゃんと死んでね、お姉ちゃん!」



「……だが、今! 私の中に確かな決意が生まれた!

愛する家族を嘲笑う外道を、妹を弄んだ輩を、決して許しはしない!」



影華がこちらへ向かってくる。


「さあ、貫け!」


矢のような鋭さで、無数の影が私を貫く!



「……よし、とりあえず、捕まえたな。影華」


だが、私の右腕は、確かに影華を捉えていた!


「っ! な、なんで⁉︎ 刺されながら、前に突っ込んでくるなんて! 頭おかしいよ!」


この世界にいては勝機はない。

この世界から出るには、きっと本体である影華を叩くのが手っ取り早いだろう。


「『決意』だ!

たとえこの身を裂かれようとも、影華を救い出す!

今の私に後退はない! 例え闇の世界だろうと、『決意』に宿る一条の光は、決して奪えやしない……!」


「ば、バカじゃないの⁉︎ 私は私の意思で……!」


「さ……。悪いことしたら……百叩きの刑だろ? 影華」


「は、離して……! 暴力反対!」


「先にお姉ちゃんのこと刺したのはそっちだろ! 悪い子にはお仕置きだ!」


影華に向けて、右手を振りかぶる。



直後、漆黒に浮かぶ影華の口元が不気味に微笑んだ。


「......なんてねぇ。全く……お姉ちゃんは、ホントーに、バカだなぁ……」


右手を振り下ろす。


『ブォン!』


私の右手は空を切った。



(……私、いつも空振りばっかだな。今ので何回目だよ?)


「『影』を掴んだり、殴ったりできるわけないでしょ? でしょ? ちょっと考えれば分かることじゃん!」


影華に打撃は通用しなかった……!

言われるまでもなく、当然可能性としては考えていたが……。


私は見事に刺され損だったようだ……。

なにやら様子のおかしい影華に襲われる輝木光

彼女は、使えなかったはずの超能力まで獲得していた


影と影が重なった物を問答無用で影の世界に引きずり込む超能力……

そんな強力な超能力を相手に、しかも妹を傷つけず正気に戻すことはできるのか?


輝木光史上、最大のピンチが訪れる!


--------


すみません、立て込んでいたため、本日はお昼にまとめさせていただきます


何卒よろしくお願いいたします

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