第7話~必敗祈願⑤~
ホテル従業員の勝呂七海を追い詰めた輝木光。
しかし、勝呂七海は逆上して襲いかかってきた!
これを無事に退け、カナリアの会の情報を引き出すことはできるのか?
(くっ。結局力強くか! まあいい、降りかかる火の粉は払いのけるまでだ!)
「偽名が大好きなオマエラに、ワタシの本当の名前を教えてやル!
アイム、『ティーベ・M・ウィン』!
勝呂七海なんテ、嘘っぱちネ!」
(何だって⁉︎ じゃあ、コイツこそがカナリアの会の……!)
「バレたなら仕方ナイ!
ブチ殺してやるヨ! 輝木ィーーッ!」
勝呂七海改めティーベが、こちらへ突っ込んでくる!
ティーベであるコイツは、間違いなく超能力者!
それも、不破たちを上回る強力な能力だ!
一体どんな能力だ?
何をしてくる?
いつ発動する⁉︎
「死ネェーーッ!」
ティーベが殴りかかってくる!
「ウオラッ!」
すかさずカウンターの右ストレートを叩き込む!
「オーマイゴッド! 痛い……痛いデス! デモ、ワタシ負けないヨ!」
ティーベがそう言って立ち上がってくる。
間髪入れず、ヤツに回し蹴りをぶちこむ!
「ノォー! 強すぎるヨ! ソルジャーみたいなヤツネ!」
(……。さっきからなんだコイツ。てんで弱いじゃないか)
「よく分からないが……そのまま拘束してやる!」
弱いに越したことはない。
さっさとコイツを捕まえて、情報を聞き出す!
私はティーベに歩み寄る。
『ピィーーーーっ!』
(コイツ……なんのつもりだ? 指笛?)
私が疑問を抱くと同時に、理解の追いつかない激痛が体を駆け巡る!
「ぐおぁぁぁぁっ⁉︎」
(っ⁉︎ なっ、私の右肘から先が――
――なくなってる⁉︎)
「サンキューバスター! 助かったネ!」
「うがあぁぁぁぁぁっ‼︎」
「いい声......いい声ネ、輝木」
あの犬か!
あの犬が現れ、私の右腕を食いちぎった!
(いや、違う! それにしては断面が綺麗すぎる!)
食いちぎったら、こうはならない!
まさかコレは……!
「ワタシの愛犬バスターは超能力者ならヌ、超能力犬なのヨ。
オマエの右腕が消し飛んだのは、他ならぬバスターの能力!」
『バウッ! ワウッ!』
噛み付いた物体を跡形もなく消し去る能力……!
(クソ、いつもこんなだ! 私の体は、いつだってボロボロだ!)
「バスターはワタシの意のままに動ク。 さっきは指笛で指示したケド、今からはコレで指示をするネ。
これデ、オマエには聞こえナイ」
そう言ってティーべが取り出すのは犬笛……。
人間の聴き取れる周波数以上の音を出すことのできる道具……!
『ガウアッ!』
「っ⁉︎ コイツ……!」
死角から急に現れたバスターの攻撃を、間一髪で回避!
なんとか襟足が消えるだけで済んだ。
(だが、今このワン公、『地面から飛び出してきた』⁉︎)
「なかなかの反射神経ネ。頭を消し去ってやろうと思ったのニ」
ワン公に噛まれると、原理は分からないが消し飛んでしまう。
ここまでは確実!
だが、地面から飛び出したのはどういうことだ?
地面を消しながら移動してるのかと思ったが、地面は消え去らずに残っているのでそれはどうも違う。
『ガァッ!』
次は、右の電信柱からだっ!
「だが、お前のおかげだ、ティーベ!
お前が、私にそのワン公を潰すチャンスを与えた!」
「ホワット? 何を」
お前は『頭を消し去ってやる』と発言した。
(だから、私はしゃがむだけだ。しゃがむだけでいい!)
『バウワウッ!』
「やはり、頭を狙ってきたな! バレバレなんだよ!」
しゃがんだまま、ワン公の腹を蹴り飛ばす!
「動物虐待とか、知ったことじゃないね!」
『ブォン!』
(……ッ! か、空振り……⁉︎)
何故だ!
確実にヒットしたはず!
「キックを外して体制が崩れてる今がチャンスネ! バスター! 噛みちぎレ!」
ワン公がまた突っ込んで来る!
今度は地面のアスファルトから!
「うおおォォらァっ!」
蹴りをそのまま加速させ、転げ回って回避する!
「チッ、しぶといネ……」
そして、逃がさない!
ワン公が再び地面へ隠れる前に、左手でその尻尾を掴む!
(……ッ⁉︎ なにぃ⁉︎)
「つ、掴めない! すり抜ける!
まるで、ホログラムのようだ! 感触すらありゃしない!」
これが、このワン公の能力!
地面や電信柱へ隠れられるのも、物体をすり抜けているからだったんだ!
「気付いちゃったようネ。バスターの超能力に」
なんてヤツだ。
触れることすらできない相手に、私はどうやって戦えばいい……!
「バスターの能力は最強ネ! 輝木!
オマエは跡形もなく消し去ってヤル!」
「はん! お前の能力でもないくせに、偉そうにしやがって」
「シャットアップ! ワタシとバスターは一心同体ヨ!」
「ほざいてろ。それなら一心同体らしく、まとめて潰してやるよ!」
と、強がってはみたものの、未だに打開策はない。
「ぐっ……うぁっ……」
右腕から血が吹き出し、隣の電信柱へ飛び散る。
「オォー。もう放っておいたって死ぬかもネ」
(腕には何とか動脈だかが流れていだはず。このままでは、私は失血死してしまう!)
「でも、勝手に死ぬまでワタシが待つ道理も義理もないネ! トドメを刺セ! バスター!」
(来る!)
さっきは頭だったが、次はどこを狙ってくるかわからない!
(チクショウ、調子に乗ってバレバレだの何だのとのたまわなければよかった!)
選択肢は『避ける』しかない!
この犬っころの前では、核シェルターだって紙粘土同然……!
こうなれば賭けるしかない!
私は、ワン公が『私の頭を狙う』可能性に賭ける!
『バウアウッ!』
「うおおおっ!」
建物の壁から飛び出してきた!
それと同時に私はしゃがみこむ!
「しまった………ッ‼︎ 」
最悪中の最悪!
ヤツの狙いは私の胴体だったっ!
(しゃがんでしまったから、私はちょうど頭を消し飛ばされるっ! し、死ぬっ)
『ガウアッ!!』
(っ‼︎ ………)
「ハァ……ハァ……!」
生きている……!
私は、死んでない……!
「ウップス! バスター! どこ狙ってるネ!」
事後状況を見るに、ワン公はなぜか私をすり抜け、電信柱と建物の外壁の一部を消しとばしたようだ。
「……助かっ……っ! そうか!」
(……血か! 壁の中からだと目が利かない。
だから、血の匂いで私の居場所を判断しているんだ!
私の血が跳ねた電信柱を、ワン公は私だと勘違いして消し飛ばした!)
「追撃ヨ! さっさと殺すネ!」
ワン公が外壁を蹴って、こちらにターンしてくる。
「ハッハッハー! 今度こそ終わりネ! 輝木光!」
(はっ。
蹴ることができるってことは、少なくともワン公の後ろ足は実体化しているということだ……。
つまり、このワン公は、自在にすり抜ける箇所とそうでない箇所をコントロールできる)
「なぜ避けないのヨ⁉︎ 諦めたのカ⁉︎」
しかし、それは私が生きているという事実と組み合わせた時、『1つの致命的な弱点』を露呈する!
「攻撃の瞬間、コイツの顔面は実体化してるってことだ!
なぜなら、すり抜けながら、何かを消し飛ばすことはできないからだ!
もしできるならさっき、すり抜けながら消し去って、私を殺せばよかったんだからな!」
「ッ! バスター! ストップストーップ!
コイツ、何か策があるネ!」
「もう遅い! 食らいやがれ、ワン公っ‼︎」
右腕から吹き出す血を、ワン公の顔面に塗りたくる!
『ギャウゥン! ガァ!』
(よし! 読み通り、すり抜けずにヒット!)
目に私の血が入り、ワン公は痛みでまともに目を開けられない!
「吹き飛べっ! この畜生がーっ‼︎‼︎」
思い切り犬っころを蹴り上げる!
(もう空振りなんてしない!)
『ガアッ! アウッ!』
吹き飛ぶワン公。
さらに、今の一撃は蹴っただけではない。
「右足から大量の電気を流し込んだ。あの小さな体で食らえば、しばらくお庭を元気に駆け回ることも、できやしないだろうよ」
「バ、バスター……!」
これにて決着だ。
探すのに苦労した分、勝敗はあっさりとしたものだった。
右腕を失ったものの、短時間で勝負を決めた輝木光。
腕は後で治してもらえばいい。今はティーべを拘束するのが最優先。
そう考え、ティーべに詰め寄るが……
次回、状況は一変!




