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第7話~必敗祈願③~

国井主導の元、本格的な調査をする輝木光。

果たしてティーべは見つかるのか?


今回はそんな彼女たちの日常が展開されます……

国井から頼まれた仕事が終わり、部屋に戻った。


『ほっ! たぁ! てゃあ!』

『うわあぁぁぁ……』


「おい……」


「あ、戻ってきた。おかえりー、ヒカリちゃん」


(こいつら……。私が必死こいて働いてた時に……呑気にテレビゲームしてるだと……)


「ヒカリちゃんもやる?」


「やる」


「ほい、コントローラ」


メグからコントローラを受け取り、ゲーム機本体へと接続する私。


「ふっ、私の華麗なスマシス技術を見せてあげるよ」


スマシスってのはこのゲームの名前だ。

スマートシスターズの略語。


迅天堂というゲーム会社のキャラクター同士を戦わせる、格闘ゲームだ。


私の家にもこのゲームがある。

そのオンラインプレイで培った技術を、4人対戦で隊員たちにお見せしよう。



『プレイヤー4! ディフィーテッド!』


(はぁ⁉︎ なんだこれ。死んだぞ。これで4連敗だ)


「ここまで差がついてしまうと、何かハンデが必要ですわね」


「くぅ……」


しばらくやって分かったことが……。


内木さんが強すぎる。

おかしいこの人。

何かイカサマしてるんじゃないか。


「ウチさん次から50%からスタートで!」


「ですわね」


「え、えぇ……。いいわよ……」


(よし。50%のハンデってかなりデカい。これなら勝てる!)


このゲームは、だいたい100%のダメージを受けたら場外まで吹っ飛ばされて敗北するようにできている。

50%はその半分。

1人だけHPが半減してスタートするようなものだ。


『あまいっ!』


『プレイヤー1! ディフィーテッド!』


「あー! 死んじゃったー!」


メグが真っ先にリタイア。


『はぁぁっ!』


『ぐおわぁっ!』


『プレイヤー2! ディフィーテッド!』


「うっ……お見事ですわ……」


赤井もリタイア。

「任せてくれ! 2人の仇は私が取る!」


「行けっ! ヒカリちゃん!」


「頼みましたわ!」


『プレイヤー4! ディフィーテッド!』


……死んだ。


「や、やった……!」


ダメだこりゃ。

勝負にならない。

内木さんは強すぎる。


「もうスマシスはやめよう! パケモンやろうパケモン!」


メグがそう言って携帯ゲーム機を取り出す。


「みんな、持ってきてるでしょ! ほらほら、出して出して」


私も持ってきてはいる。


実は、ここに来る前日にメグからグループチャットで、


『各自、遊び道具を持ってきてくださいね!

特にパケモンは絶対!』


との連絡があったのだ。


にしても、さすがはパケモンだ。

示し合わせたわけでもなく、隊員全員が最新のソフトを遊んでいたなんて、すごくないだろうか。

その人気ぶりが伺える。


「ウチさん、私とパケモンバトルだよ!」


「あ、うん……。いいよ、準備するからちょっと待ってね」


さあ、私も準備しつつ、お二人のお手並み拝見といこう。



そんなこんなで内木さんとメグのパケモン勝負開始。


「パケモンに……素早さはいらないんだよ……!」


(メグは何言ってるんだ。パケモンは相手より先に動くことが肝要……つまり、素早さが何よりも大切なゲームなのに)


パケモンバトルは、各々6体のパーティを編成し、バトル開始前に相手のパーティを確認する。


その後、バトルで使用する3体を選出して、バトル開始。

パケモン同士の相性、技、適切な交代などを駆使し、相手にのパケモンにダメージを与えHPを削る。

そして、先に相手の3体のパケモン全てのHPをゼロにした方の勝利というルールだ。


「素早さより、火力と耐久!

交代戦を制することこそが、パケモンの真髄なのさ!」


(……。メグは縛りプレイでもしてんのか?)



『ギガリカオンの アウトボクシング!』


『効果は テキメンだ!』


『ニニンドラは たおれた!』


「あ、あぁ……」


『ウッチーとの 勝負に 敗北した!』


「負けちゃったよ……」


(ほら。やっぱり素早さ捨てるのは辛いって)


「ニニンドラの前にやられたメタダースの技に、必ず先制できる『バレットハンマー』がの技あれば、リカオンに殴り勝ててたかもね」


「ダメなの! 先制技は低火力だから相手の交代先にダメージを与えられないの!」


「そもそも、内木さんのパーティは頻繁に交代するような構成じゃありませんでしたわね」


「前座で状況を整えて、リカオンで3タテだからねぇ」


「くぅ……。リカオン対策にパーティを作り直すよ! ちょっと待ってて!」


メグは戦線を離脱するようだ。


「では、輝木。私たちもやりましょうか」


(仕方ない。私のマジモードなパーティを見せてやるとするか)



『ピロカッサは 気合のバトンで耐え抜いた!』


『ピロカッサの キノコのたね!』


『ギガフレアドンは 眠ってしまった!』


「んもー! セコイですわセコイですわセコイですわ!」


「ふふん。相手を眠らせる技……催眠技だって立派な戦法。対策しないのが悪いのさ、赤井お嬢様!」


ピロカッサは耐久力が低い代わりに、高い攻撃力と相手を確実に眠らせる『キノコのたね』という技兼ね備えた強力なパケモンだ。


私はその低い耐久力を、『気合いのバトン』というアイテムを持たせることで補っている。

これは即死ダメージを受けても、体力満タンからならば残りHP1で持ちこたえる効果を持つアイテムなのだ。


「くっ……!」


『ピロカッサの どしゃくずれ!』


『効果は テキメンだ!』


『ギガフレアドンは 倒れた!』


「まあ良いですわ。

次に私が繰り出すのは、必ず先制できる技を持つ『パールシェル』。登場と同時にその害悪キノコを葬る。

これでアナタも私も残り一匹。

勝負は振り出しですわ」


『パールシェル』は貝をモチーフにしたキャラクター。

素早さと攻撃を上げる技を発動してからの連続攻撃を得意とする厄介なヤツだ。


そして、恐らく持ち物は私がさっきピロカッサに持たせてたのと同じ『気合のバトン』だろう。


それによって、相手の攻撃を耐え抜き、確実にステータスを上昇させるのだ。


「だったら行動させなきゃ良い。簡単な話さ」


『ひかりんは トゲバードを くりだした !』


「なっ! アナタ本当に人間ですの? よくそんなことが……」


「いつか言っただろ?

この世界は結果の積み重ねだと。つまるところ、過程なんて全くモンダイじゃないのさ。

『私が勝った』、この事実さえ残ればそれで良い!」


『トゲバードの エアスライス!』


私が繰り出したトゲバードには特殊能力がある。

それは、技の追加効果の発生確率が2倍になるというもの。


このパケモンに相手を3割の確率で行動不能にする『エアスライス』を組み合わせれば、実に6割の確率で一方的に殴ることが可能になるのだ。


『パールシェルは ビビって動けない!』


「……アナタ、漫画の悪役みたいになってますわよ」


「ふっ。なんとでも言うがいいさ。今のお前は、罵ることしかできないんだからな」


(主人公様に向かって悪役とは。脇役の妬みは見苦しいものだ)


「ヒカリちゃん……」


「勝った! 沈め二枚貝! エアスライス!」


『しかし トゲバードの 攻撃は外れた』


「……は?」



『レッドとの 勝負に 敗北した』


「おかしい。こんなことがあってはならない」


確かにエアスライスの命中率は95%。

僅かながら外れる可能性はある。

でもよりによって……。


「オホホ。やっぱり最後に勝つのは正義なのですわー」


「私が悪いことしたみたいに言うなよー。これはただの対面構築だぞ」


私が使っていた対面構築とは、1人一殺を狙う攻撃的なパーティ構成のことだ。

1対1に強いパケモンで、ひたすら主導権を握る。


相手に付け入る隙は与えない、それが私のやり方だ。


「では、内木さん。次は私と試合しましょう。

『勝者同士』で! うふふふふふ……」


赤井め。


(95%の確率で私の勝ちだったのに、いい気になりやがって。見てろよ。次こそは叩き潰してやるからな!)


「行きますわよ。内木さん!」


「えぇ、モエちゃん!」


『バトルスタート!』


そんな感じで、私たちの夜は更けて行くのだった……。

完全に遊んでいるだけの女子A級たち。

楽しそうでなによりだ。

たまにはこういう日も必要なのかもしれない……。


しかし次回、ついにカナリアの会の会員、ティーべがその姿を現す……!


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