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第6話~鏡のラビリンス①~

カナリアの会の起こしたデモ事件をなんとか解決した輝木光たち


そんな彼女たちの元へ、次の敵の情報が舞い込んでくる


情報を得るため、彼女たちが向かった先は……?

「2つ、お知らせがある」


やってきた国井が口を開く。


「1つ。

『超能力特殊部隊の男子A級が全滅した』という情報が、昨日届いた。

どうやら彼らの調査はカナリアの会の根幹へかなり近づいたようだ.......。

しかし、その結果として.......、突然やられてしまったらしい」


(なっ。A級は私たちだけじゃなかったのか)


いや、全滅したってことは、今は私たちだけになったのか?


「男子A級は超能力部隊の中で最強の集団だった……。しかし、彼らが全滅するとは……」


(むっ。私たちより強かったって言うのか。なんか屈辱!)


「こ、この部隊って男女別だったんですね……」


内木さんがそう言う。

私もこの瞬間までそんな事実は知らなかった。


「あ? ああ。そうだ。

男女一緒だとほら……分かるだろ?

色々面倒なことになりかねない」


「彼らが全滅した理由とかって……分からないんですか?」


「現在調査中だが……。

今更遺体を発見してるくらいだからな。

分かりそうもないな。

恐らくカナリアの会の超能力者……それも、かなり上位の実力者によるものなのだろうが……」


遺体。

そうか……この部隊にいたら死ぬ可能性も……。


改めて恐怖を覚える……。


(私なんでこんなことしてるんだろ……。借金さえなければ、絶対こんなところいないのに)


「彼らの冥福をお祈りしますわ……」


「とにかく、君たちも気をつけてくれ。

もちろん、こちらもできる限り保護するが、いつどこでヤツらが狙ってくるか分からないからな」


その通りだ。

私なんて不名誉なことにカナリアの会では有名人らしいからな……。


これからも事あるごとに襲ってきそうだ……。



「まあまあ、気を取り直して次のお知らせだ。

こちらは少しいい知らせだぞ。

カナリアの会の詳細情報を一部入手した。

虎井と不破から聞き出すのに成功したんだ」


そう言えばそんなこともしていたな。

昨日が激動の1日過ぎてすっかり忘れてた。


--------(side:尋問にて) ---------


「ハァイ。尋問担当だよ。

尋問を始めるから、よろしくね? 不破明ちゃん。

それじゃあ、早速。

キミたちのボスは誰?

おおっと、キミは喋らなくていいよ。

ただ考えるだけでいいんだ。

あ、ちなみに隠せないからね」


『私たち、ボスの名前は知らないよ。

噂によればすごい慎重な人らしくてね。

特に計画が相当危険な状態になった今、尻尾を出すなんてことはしないんじゃないかな』


「計画が危険な状態?」


『うん。組織に阿井創市って言う超能力者がいたんだけどね?

ウチの中では、かなり大規模な能力を持つ1人だった。

だけど、皆さん知っての通り、彼のテロは失敗で終わってしまった。

しかも拘留からの死亡。

彼がいなくなった時点で、こっちはかなりしんどいんだよ』


「ふーん。意外とキミらも苦労してるんだね。

同情はしないけど。あ、せっかくだからさ、そっちについてもっと聞かせてよ」


『私たちの組織構造はね、4つに分かれてるんだ。

まずは、大多数を占める超能力を持たない会員たち。通称、『未覚者』。

それに加え、私たちと同じく超能力を持つ会員で構成される、50人ほどの『天上界』。

そして、『天上界』は『暗殺班』と『テロ班』に分かれてる。

阿井さんはテロ班の中でもかなりの有望株だったんだ』


「ん? 『未覚者』と『天上界テロ班』、『天上界暗殺班』。

これじゃあ3つじゃないか。

4つに分かれてるんじゃないのかい」


『残りの1つは、ボスや、古株の会員たちで構成される、『幹部会』。

この辺りは、私たちも噂程度しか知らないけどね。

なんでも圧倒的な超能力者揃いらしいよ』


「『幹部会』……ねぇ。

君たちのボス、正直に言ってネーミングセンスはないね。

捻りがなくて全然強そうじゃないよ?

ま、どうでもいいや。だってそれ以上知らないんでしょ?

じゃあ、話は戻るけど……阿井創市は何がそんなに良かったんだい?」


『私たちは暗殺班で、阿井さんはテロ班だから、事後報くらいしか知らされてないけど……猶予を与えられるって言うのが素晴らしいってさ』


「猶予?」


『私たちの目的は、何も殺戮することじゃない。

この腐った国を解放することなのさ。

そのためには、人民を捕らえた後に選択させてやることが肝要。

私たちの作る国家と、邪悪に満ちた今の国家、どちらを選ぶかをね』


「つまり脅しかい」


『テロ班にはさ、天変地異級の災害を起こせる超能力者だっているらしいけど、そんなの使ったら一瞬でみんな死んじゃうからね。

選択する権利を与えられない』


「へぇー。その人、そんなに強いのに幹部じゃないんだね」


『いや、違うよ。

『天上界テロ班』のトップと、『幹部会』を兼ねてるはず。

班である程度の実績を残すと、働きをボスに評価され、幹部として班の運営や連携に意見する権利を与えられる。

その際には元の班としての活動と、幹部としての仕事を兼任することになるんだよ』


「そこまで知ってるなら、その天変地異級の超能力者についてもっと教えておくれよ。

名前とか分かったりしないの?」


『知らないよ。

基本的に私たちは横の繋がりがないんだ。

直属の上司から命令を受けるだけで、その上司の名前くらいしか知らないんだよ。

あ、でも死亡者が出たら分かるね。

阿井さんや津場井さんはそれで知ってる。

津場井さんはまだ死んでないけど』


「ふーん。

中途半端に情報があったりなかったり、なんだかなぁ……。

漏えいを防ごうとしてる努力は見えるけど。

じゃあ、君たちの直属の上司の名前は?」


『ティーベ・M・ウィン』


「日本人じゃないのかい」


『いや、確か在日二世だったはずだよ。

まだウチの組織、海外展開はできてないからね。

それ以上は、私も知らない』


「なるほどねぇ……。

一応、捜査はさせてみようか。

多分引っかからないんだろうけどね。

ま、キミの話が正しければ、こんな感じに順繰りに上へ辿っていくと、いずれは幹部……そして最後はボスのところまでたどり着くってことだよね?」


『そう単純だといいけどね。

ボスやティーベさんのことだから、きっと何か罠を張ってるんじゃないかな?

私が捕まった時点で、次は自分のところへ来るのは分かりきってるだろうし』


「そちらこそ、そう単純に防げるといいけどね。

政府の超能力者部隊を侮ってはいけないよ。

じゃあ、次はそのティーベ・M・ウィンの居場所を教えてもらおうかな?」


『隠せないらしいから仕方ないか。ティーべさんの潜伏場所、それは――』


--------(side:輝木光) ---------


「八蔵島⁉︎」


私は耳を疑った。


(八蔵島ってアレだろ? 確かめっちゃ南の方にある人口1000人くらいの島……)


なんでそんなところに?


「へー! あんな悪い連中も観光とかしたくなるんだね!」


メグが能天気に言う。


「いやいや……。

危険な状態だって言ってるのに、そんな呑気なことしてないでしょ……」


そこへ陣取ることに、何か意味があるハズだ……。


「ということで、君たちには明日からティーベ探しのため、八蔵島に行ってもらう。

もう船の予約はしてある」


「え? えぇーー⁉︎」


なんだと!

えらい急だな。


「まあ。急ですのね」


「虎井と不破を捕らえたという情報は、当然カナリアの会だって入手している。

すぐに向かわなければ、ティーベに準備する時間を与えてしまう。

最悪逃げられる可能性だってある。

大丈夫だ。君たちには調査を手伝ってもらうだけだ。

今回の任務こそは安全だ。……多分。

うん、……きっと……」


国井がそう言って本当に安全だった試しが、今までまるでない。

本人の弁も、段々自信がなくなっていってる。


「そ、それなら、ちょっとか、観光みたいな感じで行けるかも……。嬉しい……」


「確かイルカだかジュゴンだかがいるんだよね!

会ってみたい! あ、でも今冬じゃん!」


「私は国井さんの言葉に従いますわ」


(えー……。3人ともノリノリだよ……)


「おいおい、みんな!

この人が安全だって言って本当に安全だったことがあったか?

それに、私はそんな謎の田舎になんか行きたくない!

私の体は東京を出るとアレルギーを起こすんだ!

海だの森だの大自然だの、拒絶反応出まくるっての!」


「普通逆ですわよ……」


「ひ、ヒカリちゃん、八蔵島も東京都よ……」


「いえ! そういう問題じゃないんです内木さん!

あんな場所は東京都じゃないんです!

夜にネオンが灯ってなくて、人より動物の方が多い土地なんて、私は東京……いや、人の住む地だと認めません!」


「そんな差別的なこと言ってると、またツイッター炎上しますわよ」


(うぐっ……)


「輝木。これは仕事だ。

文句を言わずに行ってくれ。君には1億の借金が……」


「わー! わー!

ちょっとやめてくださいよその話は!

分かりました行きますよ!

行けばいいんでしょ!」


私は国井に逆らえない。


(クソ。こうなった以上は、思い切り楽しんでやる!

リゾート満喫だ!)


--------


「かんぱーい!」


流石はお国がご用意した船だった。

移動用の連絡船じゃなかった!


乗客に部屋が用意されていた。

つまり、客船だった。


部屋にはベッドやテレビはもちろんのこと、バルコニーまでついていて、いつでも海の眺めを堪能できる。

さらに、船内には大浴場やプールもあり、その上、夕食はレストランで食べ放題かつ飲み放題。


私が今まで体験したことないほど贅沢だった。


(まあなんかすぐに予約取れたのがこれしかなかっただけらしいけど。ラッキー)


「はい。メグちゃんはオレンジジュースね」


「いいなー。みんなお酒飲めて。

私も早く二十歳になりたい!」


「二十歳になってもいいことなんて何一つないわよ。むしろ私はメグちゃんの歳に戻りたいわ」


「えぇー? ウチさん、夢がないこと言わないでよー」


「だって本当にそう思うもの。

社会人って本当にやってらんないわよ。

朝早く起きて寮の微妙な食事を食べさせられて……。

すぐに剣道の訓練よ?

私は超能力者なんだから、そんなのしなくたって余裕で犯人捕まえられるのに!」


「う、ウチさん……」


「それで、その後はお待ちかねの交番勤務よ!

なんか結構な頻度で変なやつ来るし、最近は公務員に対する風当たりが強いから何やってもすぐああだこうだ言われるのよ!

し! か! も! 最悪なのが巡査部長がちょくちょくセクハラ発言してくるの!

あの薄らハゲ、いつか超能力で操作して痴漢でもさせて、懲戒免職にしてやろうかしら!」


(う、うわー。ストレス溜まってんのか……?)


「それに引き換え、今の生活はいいわねー。

確かに訓練はキツイけど、警察学校のとそんなに変わらないし、1日8時間も拘束されないし」


「うへぇ……。私これから社会人になるっていうのに勘弁してくださいよ内木さん……。

今の生活の方がいいって……」


「ごめんなさい。

つい飲んでテンションが上がっちゃったわ。

ヒカリちゃんはどこに就職するの?」


「えーっと、信用金庫です」


「ぷっ。金貸しが1億の借金背負ってるなんてお笑いですわね。信用金庫なのに信用できませんわー」


「失礼なー。

この部隊での仕事が終わったら国が1億くれて、借金はチャラになるんだぞ。

だから入社時には借金ゼロ!」



「…………え? 何よその話……?」



内木さんが驚いた表情を浮かべる。


(え、何かおかしいこと言ったか?)


「この部隊に入ったら1億円貰えるなんて私、聞いてないわよ……?」


(え……。え?)


「でも、国井さんはそう言って……」


「私『国家の命令だから』って招集されただけで……。

特に報酬は聞いてないわ……。

め、メグちゃんは……?」


「えーっと、『どこでも好きな大学行かせてあげるから入隊してくれ』って言われたよぉ。

あとお金! 生活費と学費!」


「モエちゃんは?」


「無報酬ですわ。私は志願して入隊したんですもの」


それを聞くと、内木さんの顔が一気に赤くなった。すでに酔いでかなり赤かったが。


「…………。く、国井の野郎……! やりやがったわね……!

明日起きたら問い詰めてやるわ!

一緒に行きましょう、モエちゃん!」


「べ、別に私は1億円が欲しいわけでは……」


「ダメよ!

労働に対しては必ず、対価がなくてはならないの!

対価が伴わない仕事に、責任は存在しないのよ!

さあ、私と一緒に正義の執行を!」


「そ、そうですわね……はい……」


赤井がタジタジだった。

お酒の入った内木さんは強い。



いつも酷い目に遭う彼女たちへのご褒美なのか……

彼女たちは客船で優雅なひと時を過ごすこととなる


これでしばらくは平穏な時間が続く……はずだった


--------


※八蔵島というのは架空の島です。東京のすごく南にある、観光地の離島だと思っていただければと思います。



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