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第1話~最悪の始まり①~

第0話に引き続き、こちらまでご覧いただきありがとうございます。


本格的なバトルが始まっていくのはこの回からになります。


最初の戦いの舞台はなんと、VRゲーム世界。


突然のデスゲームと化したゲーム世界で、主人公たちはどう戦うのでしょうか!


何卒よろしくお願いいたします。

「輝木光。君には、超能力特殊部隊へ入隊し、正義の超能力者になってもらいたいのだ」


「君のその『特異な力』を、国家の治安を守るために生かしてみないか?」


「超能力特殊部隊……?」


これまで私が国井に聞かされた話をまとめると、


『全国の超能力者を集めて、国家を守る特殊部隊を組織する』


という話だった。



……なるほど。


確かに機能しそうだとは思う。


例えば、拳銃や刃物を持って立てこもる凶悪犯がいたとしよう。

私なら超能力を使い、近づくことなく凶器を取り上げることができる。


「そうだ。そしてこれは伊武内閣閣僚の一部しか知らない、極秘プロジェクトなのだ」


伊武。

現内閣総理大臣の伊武有人(いぶ ゆうと)か。


テレビのニュースすらろくに見ず、社会情勢に疎い私でも、さすがに総理大臣の名前ぐらい分かる。


「話を続けるぞ。

この超能力特殊部隊が相手していくのは、ある『巨大な犯罪組織』だ」


「!?」


犯罪組織!?


どうやらさっきの私の例えは、的外れだったらしい。


(……犯罪組織っていうと……ギャングやマフィアといった類か?)


映画の世界のような存在が、今の日本に存在するのか?


「そ、そんな巨大な犯罪組織が、本当に日本でも存在するんですか?」


私は素直に疑問をぶつけた。


「存在する。……君は『カナリアの会』という団体を知っているかね?」


『カナリアの会』?


国井の返事を元に、頭の中の情報を辿る。


結果、私が思い出したのは、『近年時折話題になる変な宗教団体』だった。


だが、それが犯罪組織……?


「知ってはいるようだな……。カナリアの会の表向きは、ただの新興宗教だ。しかし、その目的は……『国家の乗っ取り』にある」


「国家の乗っ取り⁉︎」


それが事実なら、新興宗教ではなく完全に犯罪組織……いや、それすらすっ飛ばして、もはやテロリストだ!


国井の話はまだ続く。


「この情報は一般のマスメディアでは公表されていないが、間違いのない情報だ。国の諜報員が、命を賭して手にしたものだ」


どうやら確たる真実らしい……。


私は報道されている『カナリアの会』を見て、面白集団くらいに思ってたが、実態はとんでもない組織だったのだ。



だが、カナリアの会の真実はそれだけではなかった。


「そして、重要なことがもう1つ。カナリアの会が『もし普通の犯罪組織だとしたら』我々もここまでのことはしない」


(犯罪組織の時点で普通じゃないと思うんですけど……)


私は心中で茶々を入れる。


それはさておき、国井曰く『普通じゃない』。


言い換えれば『特異』。


私はある『嫌な予想』をした。


緊張した面持ちの私に、国井は真剣に言う。


「問題は、カナリアの会に50人ほどの『超能力者』が属しているということなのだ。

だから、ヤツらを鎮圧するため、君たち『正義の超能力者』の力が必要なのだよ」


私の『嫌な予想』は的中した。


しかし、それでも『50という数字』は私の想像をはるかに上回った。


「50!? それなら、日本にいる超能力者の約半数は現在テロリストってことになってしまいますよ!」


数字に驚きを隠せないまま私は国井にそう言った。


「残念だが、まさしくその通りだ。

人智を超えた能力を手にした人間は、その力を良からぬ方向へ.......利己的な方向へ使ってしまうことがほとんどなのだ。

君が今朝、電車を止めるために使ったようにね」


それに対する国井の返答。


これは、全面的に認めざる得ない……。


「しかし、君はテロに走るほど堕ちてはいないと、私は思っている。

だからこそ、こうしてチャンスを与えているのだ。

どうだ? 我々のプロジェクトに力を貸してはくれないか?

君には是非、我々と共に正義のために戦ってほしいのだ!

そして、もし君が首を縦に振れば、1億の損害賠償は国家がお支払いしよう。

君に今日伝えたかったのはこの話なのだ」


「い、いや、そんな……」


私は悩む。


受けたらどうなる?


私はテロ組織の超能力者に狙われ、命すら落とすかもしれない。


死ねば全て終わりだ。


では断るとどうなる?


私が抱えた負債は返すことができるのか?


これから先、私に1億という額を手にすることなどがあるようには到底思えない。


結局行き着く先は破滅しかない。


「ちょ、ちょっと考えさせてください……」


私は国井にそう懇願した。


--------


5分程たっただろうか。


「…………はい。分かりました」


私は承諾した。


1億円の負債は確定している。


しかし、入隊したら死亡するとは確定してない。


私はそう理屈をこじつけ承諾した。


本当はもっとよく考えたかったけど……。

そんな時間もなさそうだった。


「よく決断してくれた! 勇気ある行動に感謝する! 約束は必ず果たそう!」


国井は私に向かって嬉しそうに言う。


(うぅ。やだなぁ……。犯罪組織の超能力者を相手にするなんて……。たった今、私はすごい危険なことにクビを突っ込んだだろうなぁ……。な、なんだかんだ死なない……よね? 何とかなる……ハズ。多分……)


自分を必死になだめた。


正直、ただの凶悪犯などならどうとでもできる自信があった。


しかし、相手も超能力を使うとなると話は一気に変わる。


犯罪組織に所属する50人もの超能力者。

その中にはきっと私の電気なんかより、はるかに強力な超能力を扱う者がいる違いない……。


時間停止、コピー、洗脳など……。


私は思いつく限りの強力な能力を思い浮かべ、不安に駆られる。


(もうヤだ……。1億で自分を売ってしまった……)


私の心中は、承諾したのにもかかわらず、未だ否定的だった。



「後日私から改めて、この部屋の固定電話か、この部屋のパソコンへのメールにて、君へと連絡をする。

それまで君はこの部屋で待機していてくれたまえ。

部屋のものは自由に使って良いし、待機と言っても外出は構わない。

もし、私の電話の時に君が不在だったら留守録を入れておく。

1日一回程度の確認で大丈夫だ。

それでは」


そう言って私に部屋と金庫の鍵を渡し、国井は去って行った。



改めて部屋を見ると、当たり前のようにパソコンがあってネット環境も整っているし、

冷蔵庫や電子レンジ、エアコンなどの家電製品も完備。


浴室や寝室として別の部屋で用意されてるし、ダイニングにはソファまで備え付けてある。


地下だから窓はないけど、やっぱり良い部屋だなぁ。


(このまま国井からずっと連絡がなければいいのになぁ……)


とか思いながら、私はジャケットを脱ぎ、寝室のベッドに横になった。


疲れからかとても眠くなったので、そのまま眠った。


--------


目を覚ましたら、翌日の朝だった。


昨日は激動の1日だった。


夢だったと思いたいが、妙に豪華なこの部屋を見ると現実であったことを思い知らされる。


これから、犯罪組織と戦わなくてはいけないという非情の現実を。


「はぁ……」


ため息混じりにダイニングへ移動し、詳しく調べていると、隅に金庫を発見した。


中にはクレジットカードと一枚の紙が入っていた。


『日用品や食事はこのクレジットカードをご利用ください。

娯楽に使っていただいても結構です。

利用料金は国家がお支払いします。

パスワードは1221です』


「え。やば! お金使いたい放題!?」


なんという優待だ。


お金は使いたい放題って……なぜ国井さんは昨日教えてくれなかったんだ。


借金を背負ったという事情があった昨日はあまり目立たなかったが、私は基本的にお金の誘惑にめっぽう弱い。

もしも、こんなに素晴らしい特典を教えていただいていたら、即決で入隊を決めていたことだろう。


--------


昨日は浴びられなかったシャワーを、今朝になって終えた。


手持ち無沙汰だった私は、部屋に備え付けのやたら高スペックなPCを開きながら、お金を何に使おうか考える。


お金はいくらでも欲しいと思っていたけど、いざ無限にあるとなったら、何に使っていいか分からなくなる。


ふと私は、開いていたPCを改めて見直す。


私の趣味でもあった、流行のVR型オンラインゲームがそこにはインストール済であった。


(娯楽に使っても良いんだよな……?)


私はこのオンラインゲームで『欲しかったけど手に入らなかった武器』があったことを思い出した。

しかし、今ならお金は無限にある。


そして、このゲームはお金をかけることで、いわゆる『ガチャ』を回し、手に入れることができる。


(いや、税金で『それ』はまずいか……? いやでもこれから国家のために戦うんだぞ? 少しくらいなら……)


PCのキーボード上で私の手が右往左往する。


--------


欲しかった武器を見事入手した。


(結局やってしまった……)


誘惑には基本的に抗えない性格である私。


「まあ、やってしまったものは仕方ない……」


幸い、この武器……『エクスカリバー』を手に入れるのに、かかった金額は2000円。

もしも怒られたら、これを自腹負担してめっちゃ謝ろう。


「今はせっかくだしこの武器を使ってみよう」


私はこれまた備え付けてあったVRゴーグルをセットした。


--------


VRオンラインゲーム……『モンスター&ドラゴンズ』にログインした。


このゲームの概要は、簡単に言えば敵を倒し、アイテムを集め、武器や防具を強化する。

その強化された武器や防具で、もっと強い敵を倒し、武器や防具をさらに強化する。


それの繰り返しだ。


至ってシンプルだが、それでこのゲームはおもしろいのだ。


最新のVR技術が駆使されていて、まさしく自分がゲームの世界に入っているかのような没入感を覚える。

若い人間を中心に、男女問わず全国で何百万人もの人間が遊んでいる。


そして、先ほど私がエクスカリバーを入手したように、有料のコンテンツもある。

恐らくそれが運営会社の収入源なのだろう。


というわけで、私は有料のエクスカリバーを装備し、

今まででは敵を倒すことが出来なかった『海岸エリア』へと向かった。


--------


(めちゃくちゃ強え!)


有料武器を使っての感想だ。


このゲームではストーリーとして、NPCから受注する『クエスト』なるものが存在する。


だいたいが、特定の敵を決まった数倒すといった内容だ。


本日、今まではクリアできなかった『クエスト』を受注した私だが、ほとんどダメージを受けず、クリアできた。

受けたダメージといえば右手の指先に敵の攻撃が少し掠ったくらいで、基本的には無敵だった。


さすがは実装してすぐゲーム内で最強武器の一角と、あらゆる攻略サイトで取り沙汰されただけある。


この『エクスカリバー』には固有の新スキルとして、「電撃」がある。

発動すれば、敵から敵へと自動的にダメージが伝い、周囲の敵にもダメージを与えるというものだ。


これが非常に強力なのだ。


私は『同じ電気使い』として、なんだか誇らしくなった。


--------


クエストを10個ほどクリアしたところでお腹がすいたし、今日はログアウトした。


今の時刻は午後6時だった。


(始めたのが昼すぎだし、5時間以上ゲームやってたのか私……)


我ながら、『よくこんな状況で呑気にゲームしてられるな』と感心した。


そういえば、結局国井からの連絡はなかった。


もう夜になるし、夕ご飯を食べてお風呂に入って寝よう。


(夕食は何にしようかな。イタリアンにしようかな)


などと、これまた呑気なことを考えながら、私は外へと出かけた。


--------


夕食から帰宅しても、国井から連絡はなかった。


もう今日はないだろうから、このまま予定通りお風呂に入って寝る。


「痛っ!」


お風呂中、指先に染みるような痛みが走った。

確認すると、右手の指先に切り傷があった。

金庫の中に入っていた紙で切ったのだろうか。


(こういう傷って地味に痛いからイヤだなぁ。お風呂から上がったら絆創膏を貼っておこう)


私は寝る前に僅かばかりの予定を差し込んだ。


--------


朝だ。


早速昨日のゲームをやろうとしたら、メンテナンス中だった。


残念だが、10時には終わるらしいからそれまで、ファストフード店で朝食を摂り、時間を潰した。


食べ終わって帰宅した頃には、10時40分。

私は昨日の続きを始めた。


--------


VRゴーグルをつけて……さあ、ログイン!


(今日はクエストじゃなくてアバターの防具を作るため、素材を集めようかな)


とか考えごとをしていたら、誰か他のプレイヤーが近づいてきた。


(なんだろう?)


「……」


『ひかりん(輝木光のユーザーネーム)は 53のダメージを受けた!』


「いたっ!?」


……⁉︎

何だコイツは⁉︎


無言でいきなり私の右肩に斬りかかってきた!?


そ、それに……『痛い』⁉︎


ゲームなのに痛いってどういうことだ!?


(チクショウ、とにかくこのままで済むものか! くらえ電撃っ!)


私は怒りに身を任せ反撃する。


「ああぁぁぁぁぁ‼︎」


見事命中し、私に斬りかかったプレイヤーは情けない声を出して倒れ込んだ。


よし、そのままずっとそこで痺れていろ。



「はぁー……」


大きく息を吐き、さっきのプレイヤーの正体を考える。

一体何だったんだアイツは……。


そもそもこのゲーム、PVP(プレイヤー・バーサス・プレイヤーの略。プレイヤー同士が戦闘できるという仕様)はなかったはずだ……。


(とにかく回復をしないと……)


回復すればこの痛みも消えるかもしれない。


(……あっ。回復薬がない……!)


しまった。

このゲーム、ユーザーごとに職業が設定されており、ゲーム内での私の職業は剣士。


剣士は属性攻撃に優れている代わりに、回復薬以外での回復手段がないのだ。


これはかなりまずい……!


ゲーム的にはHPさえ残ってればそれでいいかもしれないが、何が起きてるかも分からないし、この痛みを抱えたまま歩き回るのは危険だ!


と焦る私に……


「あ、あそこにケガした人がいる!」


「ちょっとアナタ......」


今度は女性プレイヤーの2人組が何かを話しながら近づいてくる!


(やばい!)


何を話してるかは聞こえないが、逃げなければ次こそ殺されるかもしれない!


ゲームなのに殺されるってのはおかしな話だが、とにかく今の状況、普通じゃない!


「く、来るなっ……」


私は逃げようとするが、ダメだ。

痛みで走れない! このままじゃ追いつかれるっ!


「待って! 私は君を攻撃しようなんて思ってないよ!」


2人組のうちの1人が何かを言いながら、手を振りかざしてきた。


避けられないっ!

最後までご覧いただきありがとうございます!



さあ、調子に乗って趣味のゲームをしていると、

突然大ケガを負った輝木光。


一体何が起きている?


混乱しきった輝木光に迫る2人組。


彼女たちの目的は一体……?


次回、VRゲーム編パート2です!


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