表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/100

第5話~動き出すカナリアの会①~

超能力の穴をつく作戦で、カナリアの会が差し向けた刺客を返り討ちにした輝木光たち。


しかし、カナリアの会もゲームテロに引き続き、次の大規模作戦を発動させる。


そして、その作戦の魔の手は『ある人物』にも降りかかり……。

「エーキュウ能力者ってなんですか?」


あの2人組に襲撃された、翌日の朝。

私たちはいつも通り訓練所へと集まっていた。


あの時は忙しくて聞きそびれてしまった疑問を、

訓練所に来ていた国井にぶつけた。


「君たち以外にも、政府側の超能力者は数多くいるんだ。

そこで、能力の強力さに応じてA〜Cにまでランク分けすることにした。

君たちはそのA級に該当するというワケだ」


国井は隠すこともなく答えた。


(まあ、日本には100くらいの超能力者がいるって聞いてたし、そこまで驚く話ではないのか。それよりも私が気になるのは……)


「もちろん、それはAの方がCより優れてるってことですよね!?」


私が食い気味に投げたその質問に対し、周囲は呆れた表情をする。


「ん、まあ……そういう言い方はしたくないが……そうなるな」


国井もバツが悪そうに回答する。


「なんて浅ましい方……とにかく、そんなことより」


赤井が話を遮る。


「あの2人組は結局どうなりましたの? 今は拘置所にいるんですのよね?」


そして私とは対象的な真面目な質問をする。


「虎井と不破か。

今はカナリアの会の情報を聞き出しているところだ。

阿井や津場井の時と違い、意識がはっきりしているから今回こそは収穫を得られるだろう」


あの読心女がいればどんな情報でも抜き出せる。

その有用性は認めざるを得ない。


「結果が出たらもちろん君たちにも……」


国井が話を続けようとしたその時だった。

2人の男が、訓練所正面のドアを開き現れた。


「やあ、調子はどうかな? 国井」


現れたのは、中年の男性と、30歳ほどの若い男性の2人組だ。

どちらも黒いスーツを身につけ、髪型も含めフォーマルな出で立ちだ。


(この人見たことあるぞ……。

見たと言ってもテレビでだが……。

NHD(日本放送団体)でだいたい見られる人だ。

それでもって、もう1人の人は秘書とかだきっと)


「はい。ちょうど昨日、また1人カナリアの会の会員を捕えた次第でございます……総理」


そう。

現れたうちの中年男性の方は総理大臣。


日本国のトップである伊武有人だ。


「おぉ。さすがはA級能力者たちだ。

……あ、そうだな。自己紹介しておこう。

私は伊武有人。内閣総理大臣だ」


「私は志村と申します。伊武の秘書を務めております」


2人組の男たちは立て続けに名乗った。


もう1人の30歳ほどの若い男性は、やはり秘書だったようだ。


それにしても、総理大臣様がわざわざ会いにくるとは……。

私たちの活動が国家においてどれだけ重大か改めて実感した。


「私は赤井萌と申します。お会いできて大変光栄ですわ」


赤井が真っ先に挨拶を返す。


「輝木光です。よろしくお願いいたします」


私も負けじと挨拶する。


「う、内木遊です……。よろしくお願いします……」


内木さんも私たちに続いて挨拶をする。


そこで私たちは皆、ある違和感に気づいた。


「……ん? そういえば水野がいないな」


そう、始業時間を過ぎてもメグがいないのだ。



「寝坊して遅刻とかじゃないですか?」


最も高い可能性を私が提示する。


「輝木じゃあるまいし、メグは遅刻なんかしませんわ」


赤井に反論される。

随分と失礼な反論だ。


「はぁ? 失礼なこと言うなよ。

1ヶ月で10回くらいしかしてないし、それにたった30分くらいじゃないか」


(30分以内なんて遅刻に入らないだろ。イチイチ細かい奴だな)


「ヒカリちゃん、それは――」


内木さんが私に何か言いかけると同時に、バタンと音を立てて正面のドアが開いた。


メグがやってきたのだ。


やはり遅刻だったようだ。


「どうした水野。君が遅刻なんて珍しいじゃないか」


「……」


国井に尋ねられるも、メグは返事をしない。


(ははぁん、これはきっと遅刻して逆ギレしてるパターンだな。分かる分かるよその気持ち。私もよくあるからねぇ)


私だって遅刻をしたくてしてるワケじゃない。

この世界が私を妨害するせいだ。


「……悪辣たる現の世に、価値はない」


(そうそう、私を遅刻させる世界なんて……。って、え? 何今の? メグの声?)


「……邪悪なる為政者供を引き摺り下ろせ。愚かで無能な国家を変革せよ」


「め、メグ? どうしましたの?」


「貴様らに問おう。日の本の行く末を。迫り来る破滅を防ぐには何をすべきか? その答えは……」


メグの様子が明らかにおかしい。

意味不明な言葉を繰り返している。


「これだっ‼︎」


「ぐっ、何をする⁉︎ 放してくれっ! ……うっ、……!」


「諸悪たる元首へ! 正義の鉄槌を!」


なんと、メグは伊武総理の首を掴み締め上げ始めた!


「ちょ、ちょっと! 何してるんですのメグ! 伊武総理から離れなさい!」


赤井がメグに掴みかかる。


(そうだ止めなきゃ! でも私の超能力じゃ感電させちゃう……!)


私も掴みかかるが、対処が分からない。


そうして……しばらくすると、急にメグの抵抗がなくなり動きはとまった。


「……メグちゃん。悪いけど、拘束させて貰うわね」


内木さんが自身の超能力で、メグの動きを封じたのだ。


「ゲホッ ゴホッ ……何だい、彼女は……」


「伊武総理、大丈夫ですか?」


咳き込んだ伊武総理に、すかさず声をかける国井。

丁寧語を使っているのが少し新鮮。


「内木さん……ナイス判断です。それにしてもこれは一体……」


内木さんがメグを抑えてくれて本当に助かった。

私や赤井の超能力じゃ、メグに大怪我をさせてしまう。


「……メグがこんな暴挙に出るハズがありませんわ。あの子は優しい子ですもの」


「それには概ね同意だけどさ……。ともすれば誰かに操られてるとか? ……昨日、不破と虎井を拘束した時は普通だったけど……。何かあったとしたらその後か?」


赤井の言葉に応えるように、私は頭を捻って考える。


「そればかりは私にも分かりませんわ……。昨日のメグの行動を辿ってみる必要が……」


その時、イヤな音が聞こえた。

電話の音だ。


私は電話の音……もといスマホの着信音がどうも苦手だ。

なんというか不安になるというかドキッとするというか……。

とにかく苦手だ。



「はい、志村です。……はい? そ、それは本当ですか⁉︎  はい。……はい、承知いたしました。また連絡いたします。では」


電話越しに何かの報告を受けている志村秘書。

何やらとても焦った様子だ。


「どうした、志村」


「あの、大変です……。 首相官邸にて大規模デモが発生とのことで……。詳しいことはただいま調査中らしいですが……その規模はざっと1万人以上だそうです!」


志村の答えに全員が驚きの声をあげる。


(で、デモ⁈ デモってあれか、あの、人がいっぱい集まってプラカード持ってワーキャーやったりするあれか!)


「なんだって⁉︎ ……い、今すぐ議事堂に戻って対策会議を……」


総理がそう狼狽える横で、私はスマホで検索し、ニュース記事を確認する。



---------

2月27日 (木)


首相官邸にて大規模デモが発生。

現在、デモ隊は官邸を離れ、北に向かって行進中。

参加人数は調査によると約6万人で、参加者は口々に「邪悪な国家への制裁」などと話しており要求は全くもって不明とのことです。

---------


「なんか、今はもう官邸にはいないみたいですよ……? 北に向かって行進中だそうですが……しかもかなり増えてます」


「何? 輝木、すまないが少しそのニュース記事を見せてくれないか?」


国井に頼まれスマホを手渡す。


「『邪悪な国家』……。

先程の水野も同じようなことを言っていたな。

もしやこの者たち、水野と同じ症状なのでは……?

伊武総理を狙うように操られているのかも知れん」


「それで官邸に……。

まあ、普通の人なら総理大臣はそこにいるって考えますもんね。

……でも、それって……伊武総理が見つかれば襲いかかってくるってことじゃ……?」


私は思ったことをそのまま言う。


「その通りだ……! 伊武総理、危険ですよ!

向こうに戻ってはいけません!」


国井は伊武総理にそう声をかけた。


「そ、そうか……。分かったよ。

しかし、どうしたものか……」


了承しながらも悩む伊武総理。


(……。かくなる上は、1つしかない)


この場で、私の考えついた解決策。

それは……。



「この状況を解決するには、この人たちを操ってるだろう何者かをぶちのめすことです!

それがこの暴動を抑える、唯一の方法です」



「物騒ですわね」


「何だよ、赤井。

じゃあ他に何か思い当たる節があるのか?

それに何かしないと永遠にメグはこのままかもしれない。

メグを助けないつもりかよ、この薄情者が。

ここでいつまでもふん縛っておくわけにはいかないだろ?」


「そうは言ってませんわ。……まあ、仕方ありませんわね」


赤井がため息を吐く。


「では、輝木は私と一緒に来てくださいまし。

内木さんはこちらに残って伊武総理の警護をお願いしますわ」


「う、うん……。分かったわ」


「おいコラ。何勝手に仕切ってるんだよ。

それに私がやるなんて一言も……」


「何かを調査するのには輝木、アナタの能力がもってこいですわ。

ですが、アナタ1人では心配でたまりません。

だから、私もついていきますの」


赤井に言われるがままになってしまう私。


「そ・れ・に!

この部隊のリーダーは私でしてよ?

指示には従ってもらいますわ」


(くぅ……、やっぱりこいつムカつく!)


--------


「それで?」


「何ですの?」


「調査って言ったって具体的にどうするんだ?

操られてるって言うのも、私たちの憶測でしかないかもしれないんだぞ?」


「それは……もう信じるしかありませんわ。

とにかく今は手がかりを集めないと……。

ほら、着きましたわ」


私と赤井が向かっていたのは、昨日虎井と不破を捕らえた鐵工所だった。


「ここで昨日私たちと別れてから、今日の朝までのメグの足跡を辿りますわ。

少しでも怪しいところを発見したら情報を共有しましょう」


「はいはい」


「はいは一回ですわ」


「うるせえ」



30分くらい調べた。


この工場内、特におかしなところはなさそうに見える。


「何もなさそうだな。

メグの家に行こう。

帰り道か家の中で何かあったのかも知れない」


「そうですわね。

一旦ここは切り上げましょうか」


工場を出発し、メグの家路を辿る。


「……おっ。なあ赤井。

デモについて新情報が発覚したらしいよ。

何でもデモに参加してる人のほとんどが10代から20代なんだってさ」


その過程でスマホを見て得た新情報。


「若者中心ってことですわね。

と言うことは、今時の若者の生活に何かヒントがあるかもしれませんわ」


「今時の若者って……その言い方なんか老けてるな」


「なっ……何を言いますの!

私はただ客観的な考察を……」


「分かった分かった。

……今の若者の生活って言ったら、ゲーム、インターネットとかかなぁ。

流行の移り変わりが早いよね」


「ゲーム、ネットって……それはアナタの生活じゃないんですの……」


「失礼な! 私は流行には疎いほうだよ」


「そっちですの。

でも奇遇ですわね。私もですわ。

特にアイドルとかお笑いとか全然分からなくて……」


私と同じだ。

……初めて、赤井に親近感を覚えた気がした。


「あ、メグの家に着きましたわ」


「ここまでも特に何か変わったことはなかったな……。

まあいいや。よし、じゃあ鍵を開けるか」


「え? いやいやいや。

そんなことをしたらメグのプライバシーが……」


「しょうがないだろ緊急事態なんだからさ。

ほら、開けたぞ」


「し、仕方ありませんわね……では、管理会社さんに鍵を借りて…….ってあら? 鍵開いてましたの?」


「いや、私が開けた。超能力で」


「……アナタ、いつか捕まりますわよ」


生憎だが、もう捕まった。

捕まったからこの部隊に入る羽目になったのだ。

カナリアの会によって洗脳されてしまった仲間の水野恵。


彼女を救うため、輝木光と赤井萌の2人は原因を突き止めるべく調査へ向かった……。


果たして、異変の原因は何なのか。


彼女たちが水野恵の部屋で見つけるものとは……?


次回、犯人登場!



ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ