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第4話~刺客現る①~

仲間たちとチームを組むが、

早速見事に人間関係でやらかしてる輝木光。


そして訓練の日々が始まった。


そこに迫る不気味な影……。


今回、仲間たちとの絆が試される!

「あー美味しかったー! またみんなで来ようねー!」


メグが能天気に言う。


「そうだね。メグと内木さんとならまた来たいですね」


私が言う。


「私も輝木以外とならまた行きたいですわ」


赤井も言う。


(本当に気に入らないヤツだこいつ……。ですわーなんて気取っちゃってさ。お嬢様ってツラじゃないクセに全く)


一応喧嘩両成敗ということで表向きは決着していので、私はその悪態を内心で留めた。


「もう2人ともー! 同い年なんだし仲良くしなよぉ。ゲームの中ではあんなに息ぴったりだったんだからさ! 仲良くなれるよ!」


(ゲームはあくまでゲームだったんだメグ……)


きっと私は冷めた目をしていた。


「もー! またそう言う顔するー! ……あ、じゃあ私の家こっちだから! じゃあねー!」


そう言ってメグが別の道に行った途端、私たちからは会話が消えた。



――その時、二つの影が後をつけていたことに、誰も気がつかなかったのだった。


「へー……。アレが津場井さんを殺ったっていう輝木光なんだ。なんかしょぼそうなヤツだね」


「そうだねー。って、津場井さんは死んでないけど……。まあ……あいつがどんな超能力者にせよ……」


「私たちの敵じゃないよ! ねー!」


「ねー!」



--------



私たちがチームを組み、訓練を開始してから、ちょうど1ヶ月経った。


私は毎日毎日がイヤになっていた。


腹筋100回、腕立て100回、スクワット100回、ダッシュ30本、マラソン5kmにボクササイズ。

プラス、様々な護身術。


これを数セットが訓練のメニューだ。


私にとってあまりにもキツすぎる内容だった。


「い……いつまで続くんだよこの生活ぅー……」


今日も今日とて走り続けている私の口から不満が漏れる。


「ふ……2日目に国井さんがおっしゃってたでしょ……。

50メートル走7秒、走り幅跳び5m50cm、1500m走4分30秒、握力40kg、背筋120kg……これらをクリアするまでですわ……」


「お……お前には聞いてない……」


「では静かに走りなさいまし……」


横を走っていた赤井と話す。


ちなみにこの5項目のうち私がクリアしたのは50メートル走だけ。

足の速さには昔から自信があった。


しかし、腹立たしいことに赤井はすでに3つの項目をクリアしているようだ。


負けていられない。


「輝木、遅い! 赤井の周回遅れだぞ!」


国井が言う。

今日は仕事が休みだから訓練を見に来たらしい。


(勘弁してください。5キロとかマジ無理です。私はスタミナない系の人なんです……)


疲れきった私は、その嘆きを口に出す体力もなかった。


--------


「本日はここまで。各自、気をつけて帰るように」


まるで軍隊のような生活だ。

いや、軍隊がどんな生活を送ってるのかは知らないが。


「今日で1ヶ月だねー。私達が出会ってから。結局、握力しかクリアしてないよー」


メグが話しかけてくる。


「私も短距離しかクリアしてないからなぁ。

幅跳びは少し練習すれば行けそうだけど、他のはなぁ……。

特に1500mは絶対無理だ……。

はぁ……。この生活はあと何ヶ月続くのやら……」


私はため息混じりに返す。


「でもこの生活、私嫌いじゃないんだー! 学校の授業が全部体育になったみたいでさ!」


メグは本当に明るくポジティブな人間だ。


「マジ? 私は授業の方が全然マシだよ。まあ、メグはまだ高校生だもんなー。大学の楽さを知らないから、そんなことを言えるんだろうなー」


だが、ポジティブでない私の感想はこれだった。


「そうなの? でも理由は他にもあるんだよ。それはね、隊の……チームのみんながいい人だから!」


「そ、そっか。なんか照れるなそれ」


「……あ、そういえば、ヒカリちゃんはまだモエちゃんとまだ喧嘩してるんだっけ? ヒカリちゃんもモエちゃんもどっちもいい人なのになぁ。なんでなんだろ……不思議!」


どうしても合わない人間というのはいるものだと思う。

私にとってそれが赤井だ。


あれから何度か会話をしたが、最後には必ず罵詈雑言の応酬になっていた。


メグはよくあんなヤツと仲良くできるなと思う。

聖人君子なのだろうか。


「何かのきっかけで仲良くなれると思うんだけどなぁ……。あ、じゃあ私こっちだから! また明日ー!」


聖人君子というのは、あながち間違ってもいない。


底抜けに元気で素直でお人好しでいいヤツ。

それが水野恵という人間だ。


チームのメンバーにとって、癒しのような存在になっている。


「……あ、あの、私は今でも息のあった2人を忘れられないの……。ゲームで出会った頃を……」


私とメグの後ろを歩いていた内木さんが話しかけてくる。

今日は3人で帰っていたのだ。


赤井だけが今日は用事があると言って別方向だった。


「私もモエちゃんとヒカリちゃんは仲良くなれると思うなー……なんて」


内木さんが続ける。

無茶を2人して言ってくる。


1ヶ月経っても犬猿の仲ならもう無理だろう。

それこそ1500mをクリアするより――


と考えてたところで、視界に入った『あるもの』で私の思考は中断させられた。


(……‼︎‼︎ アレは!?)



銃口!?



「危ないっ! 伏せて!」


「うわっ」


私は内木さんに抑えられて、地面に這いつくばった。

なんという力だ。


(さすが、課題を2つクリアしているだけありますね。……って今はそんなことより!)


「あちゃー。外しちゃったかぁ……」


「ドンマイ、ドンマイ! 次は当てられるよ!」


「ありがとう! よし、次こそは命中させるよ! よーく狙って……」


撃たれた方向を確認すると、私と同年代らしき、2人組の女性がこちらを見ている。

さらに、私たちを狙うと大声で話していた。


(何堂々と私たちのこと狙ってるんだ。バカなのか?)


私は磁力で銃をさっさと奪い取る。


「あーひどい! なんてことするの⁈」


「大丈夫! まだ替えの銃はあるから!」


私たちを狙う2人はまだ呑気に話してる……。

こいつら……本当にただのバカなのか?


(いや、待てよ……。あいつらがただのバカじゃないとしたら……!)


「逃げましょう! 内木さん!」


奪わせたのはワザとだ!

でなければあんな派手に出てくる必要はない。


恐らく次の銃は鉄製じゃない!

撃たれたらそこでゲームオーバーだ。


私は内木さんの手を引き全力で逃走した。


「すごーい! よく気がついたね!」


「でもそのくらいじゃ、私たちからは逃げられないもんねー!」


「ねー!」


(うるせえな)


逃げた先の雑居ビルの隙間から件の2人組の様子を伺う。


……あいつら、恐らく……というよりほぼ確実に、カナリアの会の超能力者だ。


(なんでこうも寄ってくるんだ。月イチで必ず会わなきゃならないのか?)


国井の『危険に晒すのは回避する』とは一体なんだったのか。


「……ッ……ハァ……ハァ……」


内木さんの呼吸が荒い。


「内木さん……その左腕……」


彼女は左腕に先ほどの弾丸が掠り、出血していた。


「大丈夫。かすっただけよ……。今会話するのは危険。奴らに場所を悟られないようにしないと……」


「そうですね……。あいつらがどんな超能力者かすら分からないですもんね……」


とりあえず内木さんの左腕をハンカチで縛って止血しながら、あの2人組の動向を探る。


(あいつらは……よし、こっちまで追ってはきてないな)


ひとまず安心する。


にしても、さっきからなんだか暑い。

今は冬のはずなのに……。


「全く……こんな街中で暗殺だなんて、どうかしてますわね」


私の背後から聞こえた、この声にこの気取った口調。

これで暑さの原因が判明した。


「何しにきたんだ……赤井……」


「銃声が聞こえたから引き返してみれば、アナタがいるなんて……とことんツいてないですわ。せっかく今日は別々に帰っていたのに」


「そりゃどうも。ここは危ないからさっさとどっか行きなよ。あと能力解除しろ。暑いんだよ人間暖房機」


「残念ながら、そういうわけにもいかないようですわよ?」


赤井が指す方向にはさっき襲ってきたテロリスト2人……。


そしてその2人は、さっきとうって変わって、とんでもないことをしていた。


それは……。


(――あいつら、銃を一般の人に向けて次々と撃ってる!)


「ほらほらぁ! 輝木! お前から出てこないとこの人たちみーんな殺しちゃうぞー! ねー!」


「ねー!」


なんてことを!


私を殺そうとするならまだしも、いやそれも許せないけども……とにかく、関係ない人も犠牲にするなんて……!


(こいつら……腐ってる!)


私は珍しく義憤に駆られた。



「輝木ならいませんわ。この惨状が見えない位置にまで逃げてしまいましたもの」


気がつけば赤井が路地に飛びだして、2人の前に立ちはだかっている。


(はぁ!? あのバカ! 何出て行ってるんだ! しかも、勝手に私が逃げたことにするんじゃない!)


「へぇー。ご親切にどうも!」


「君は輝木のお友達かな? 友達を置いて逃げるなんて、輝木は薄情なんだねー」


2人組は赤井に言う。

薄情者なのは認めるが、赤井は友達ではない。


「私たちは絶対そんなことしないもんねー!」


「ねー!……ねぇコイツどうする? 殺す?」


「ふーちゃんに任せるよ!」


「じゃあ、念のため殺しとこっか」


「オッケー! 死んじゃえー!」


2人組は赤井に向けて銃を構える。


拳銃は物理攻撃。


思い出すと未だにイヤな気持ちになるが、訓練の模擬戦で知っている。

赤井に物理攻撃は効かない。


(だから大丈夫だよな……? 赤井のヤツ)


間髪入れずに、銃声が聞こえた。


「……! な、何こいつぅー!? 弾当たらないよ!? ていうか消えた!?」


2人組のうち、髪が長くベージュのトレンチコートを着た、トラちゃんと呼ばれた女が驚愕の声をあげていた。

その言葉はつまり、赤井が案の定、弾丸を回避したことを指し示していた!


「さてと……。覚悟はいいですわね? 罪のない人たちを傷つけ……命さえ奪った。この代償は高くつきますわよ」


「うわぁ! こないでよー!」


銃を乱発するトラちゃん。

当然だが赤井には当たらない。


「入院数ヶ月の火傷で許してあげますわ! 燃えなさい!」


「いやぁぁぁーー!!」


炎が2人組へと向かう。


(ふう……あいつらの超能力も分からないまま勝負アリみたいだな。……まあ、流石に強いよな、赤井は)



「なんちゃってー!」


しかし、焼却待ったなしだったテロリスト2人組は一転、ケロッとしてこう言った。


「どうだったかな? 私の名演!」


「やるね! さすがトラちゃん! よっ! 主演女優賞!」


どうして赤井の炎が効かないんだ?


そして、もう一度2人組の方をよく見ると、効く効かない以前の問題だということが分かった。


そもそも『赤井の炎は届く前に消えていた』ようだった。


(なんで炎を消したんだ赤井……!)


「遠距離から攻撃できないのならば……近づいてから攻撃するまでですわ!」


赤井は確かにそう言って、2人組に向かって走り出した。


(遠距離から攻撃できない……? もしや、それがあいつらの超能力なのか……?)


「ぷっ」


2人組のうち、髪が短く快活そうな印象の、ふーちゃんと呼ばれてた方が笑った。


あいつら、まだ何かを隠してるのか。


赤井が危ない!

何かあれば私が何とかするしか……。


「…………」


(………………赤井が止まった?)


奴らの5メートルくらい手前で赤井が立ち止まった。


あいつらの策略を見抜いたのか……?


「……………………」


いや、違う。


赤井はただ棒立ちしてるだけだ!


(何やってるんだよ! 殺されるぞ!? くそっ! もう私が行くしかない!)


「ばいばーい! 名前も知らない超能力者さん!」


銃をトラちゃんとやらが構える。

私も全速力で走り出す。


間に合えっ!


「おらぁぁぁぁ赤井いいィィ!!!!」


日頃の恨みを込め、思い切り赤井にタックルする。

その結果、トラちゃんの放った弾丸は目標を失い、雑居ビルの隙間へと消えていった。


なんとか間に合ったようだ。


「な、何するんですの輝木! 危うく頭を打ち付けるところでしたわ!」


「助けられて何言ってんだよ! てかなんであんな所で棒立ちしてるんだ!」


「あの2人は……あれ、誰でしたっけ?」


「は? さっきまでお前を殺そうとしてたヤツだろ!」


とにかく赤井の様子がおかしいので、連れて一旦逃げることにする。


「あ、輝木いるじゃん! ほらほら死ね死ねー!」


また撃ってきた!


「赤井! 弾丸を蒸発させろー!」


「え、あぁ。はい……って指図するんじゃないですわ! とっくのとうにやってますの!」


赤井の言う通り、弾丸は空中で消えていく。


「うわ、あつっ!」


こっちにちょっと熱を飛ばしてきやがった、赤井め……。


「……思い出してきましたわ。あの2人組、カナリアの会のテロリストですわね」


「今更何言ってるんだよ。そんなのもう分かり切ってるだろ」


「……違いますわ。私の話を聞いてくださいまし。あいつらの超能力……体験しましたが、それはそれは厄介なものですわ」


「あいつらの超能力が分かったのか? それはでかした! でも今は……逃げの一手だ!」


「それには同意ですわ!」


珍しく赤井と息が合う。


銃弾を回避しながらさっきとは『違う』ビルに逃げ込む。


さっきの雑居ビルには手傷を負った内木さんがいる。

むやみに敵を引きつけて、危険に晒すわけにはいかない。


--------


「あいつらの超能力についてお話ししますわ……」


逃げた先である、小さめの店舗ビルの2階で、赤井とこそこそと話す。


テロリスト2人組は……私たちを見失い、まだ外で私たちを探してるようだ。


「端的に言うと片方……トラちゃんと呼ばれた方ですわね、は『遠距離から攻撃の対象にできない』超能力。

もう片方のふーちゃんと呼ばれた方は『近くの人間が敵対できなくなる』超能力ですわ。

これが、実際に私が先ほど体験した内容ですの」


「って言うとつまり……」


「ふーちゃんに近づけば基本的にジ・エンドですわ。だから遠距離から狙う必要がありますの」


「でも、トラちゃんの超能力で遠距離からの攻撃はできない……」


「1人1人の能力は大したことなくても、お互いで補ってるわけですわね」


「……それにしても、対象にできないって……。遠距離からあいつらを狙うとどうなるんだ?」


「実際にやってみればよろしいですわ。

最初に奪った銃があるでしょう。

それで外のあいつらに銃口を向ければよいですわ」


「ほー……」


私は言われるがまま、実際にやってみる。


(‼︎ あ、あぁぁぁ‼︎‼︎‼︎ ヤバイこれは! 給食のお盆を引っ掻いた音の不快感を100倍に濃縮してぶちまけたような感覚っ!)


嫌な汗が頬を伝う。

こんなんじゃあいつらに攻撃なんてとても無理だ‼︎


思わず私は銃を下ろす。


(……ふう、収まった……)


「ハァ……ハァ……。最悪の気分だ……」


「……体験できたようですわね。遠距離攻撃は不可能と見ていいでしょう」


「近距離も遠距離も無理となると……あいつらを倒す方法なんてあるのか?」


「だから、言ったでしょう。『厄介なものですわ』と。あいつらは差し詰め……」


『最強の2人』


「やべぇな。そりゃあ………」


遠距離から対象にできない

近距離だと敵対できない


お互いの能力が完璧に噛み合った

強敵コンビが輝木光たちに襲いかかる!


対するは輝木光と赤井萌の険悪コンビ……。


果たしてこの2人で、最強の2人を退けることはできるのか!



ここまでありがとうございます。

今度は仲間たちを交えたバトルが始まります。


何卒よろしくお願いいたします。

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