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最終話~新世界より③~

輝木光を助けるため世界を書き換えた御貫真。

その影響により、カナリアの会関係での死亡者は復活したが、この戦いの記憶が残っているのが輝木光と御貫真の2人だけになってしまった。


そして、寂しさを湛えたまま、輝木光の長かった春休みは終わりを告げ……。


--------


車で家路を辿る。


「お姉ちゃん! なんで行っちゃうの? あの人、他にまだ何か言いたそうだったじゃん」


「……っ」


「……ねぇ。どうしてそんな泣いてるの……? あの人……。あ、車……運転できる……?」


「……影華は、免許……ないじゃん……」


「た、確かにそうだけど。大丈夫? どこかで休む?」


「……いいんだ。いいんだよ、これで…………。このままで…………。みんな、幸せなんだから…………」


「……? 変なお姉ちゃん」



誰かと出会うことは、素晴らしいことだ。


出会いがもたらす幸福、喜び……。

それらを私は知った。


しかし、出会いの数だけ、別れがある。


別れがもたらす悲しみも、私は知った。


今の喪失感は苦しすぎる。

辛すぎる。

涙が溢れて止まらない。



時が経てば、この苦しみも忘れてしまうのだろうか?


いや、私は忘れない。

彼女たちと過ごした日々を、忘れたくないから。

あの思い出を、否定してしまいたくないから。



苦しみも、悲しみも、喜びも、幸せも、全部ひっくるめて人生なんだ。

一人一人、みんなが主役で、自分だけのストーリーなんだ。



--------(side:瀬葛鏡太郎) ---------


「兄ちゃん、なんで急に漁師になったんだい? 今まで全然関係ない仕事してたんだろ?」


「……なんででしょうね。なんというか、海が俺を呼んでいたというか、そもそも自分自身今までずっと海にいたというか……。自分でもよく分からないですが、そんな感じですね」


「よく分からねぇ兄ちゃんだなぁ。まあ、いいや、これ取ってきな! 明日も早いんだろ?」


「えぇ、ありがとうございます」



--------(side:野井流美音) ---------


「私はこの世界を変える……。私は神に選ばれた戦士…………。この力で悪趣に満ちた現世を……」


「ちょ、ちょっとやめてくださいよ! 忘れてくださいディレクター!」


「どう? 似てた? 少し前の流美音ちゃんの真似ー!」


「もう! 私、あの時どうかしてたんです! 本当に追い込まれてて……。茶化してますけど、一歩間違えばテロリストだったんですからね?」


「大袈裟なだなぁ流美音ちゃん。あ、次の番組の台本これね、明日もよろしくぅ」


--------(side:都園懸悟) ---------


「社長! 先日の集談社との会議、まとまりそうです! IPものの新商品、無事に出せそうですね!」


「おぉ、本当か。それは一安心だ。これで来月の総会も乗り切れそうだな」


「社長の信頼と信用のおかげですよ! 向こうの人も、我社なら是非にと仰ってくれましたもん。やっぱりビジネスとはいえ人と人ですからね。私も見習いたいです!」


「……そうか。ありがとう……」



--------(side:江留布操) ---------


「あぁ、不幸だ、不幸だ……。どうして僕がこんなことになるんだ、僕が何をしたっていうんだ……」


「保釈だ、さっさと出ろ」


「……どうして僕がこんな目に。おかしい、許されない」


「お前なぁ? 度重なる詐欺、恐喝、窃盗、ヤクの密売にその他諸々。何人の人生をぶち壊したんだ? 出られるだけありがたいと思えよな」


「……あぁ、なんとかして合法に人を不幸にすることは出来ないのか。僕に相応しい生き方はないのか……」



--------(side:美河亮) ---------


「このコースなら、初めの三か月は実質無料でお使いいただけます! その後ご不要であればやめていただいても問題なし! 当然、入会料手数料は……」


「いやぁ、そういうのいいや。また機会があればね。それじゃ」


「お、お待ちください! 話だけでも! ……はぁ。契約、取れないな……。

辛いな、いつまでも下っ端じゃあ……。……はぁ、偉くなりたい。ボスになりてぇなぁ……」



--------(side:坂佐場搠) ---------


「搠、辛かっただろう、苦しかっただろう。分かるよ、俺にも親はいなかったから」


「伊武さん……」


「だからこそ、人を愛し、敬い、尊ぶんだ。俺はずっとそうしてきた。……これを見てごらん」


「……これ、僕の父さんの……僕への手紙……」


「……次郎さんは立派な人だったんだろうな。君の自慢のお父さんだったんだろうな」


「……うっ、ぐずっ……。父さん……僕はっ……」


「搠、やっと泣いてくれたね……。辛い時は泣いてもいいんだ。無理に感情を殺さなくたっていいんだよ……」



--------(side:御貫真) ---------


「……まあ、またこういうことが起きないとも限らないからね。監視はしないとね。超能力はまだまだ謎が多いし」


「それで、君のそれは手品とかじゃないんだな?」


「イエス、そうですよ。だからもちろん、『まだ半信半疑』なのは分かります。ですが、現実としてある話なんですよ、国井さん?」


「ちょ、ちょっと待ってくれ……何かトリックが……。頭を整理させてくれ……」


「構いませんよ? なんなら手伝いましょうか? 『頭の整理』を」


「な、何を…………」


「あはは、冗談ですよ。そんな他者の介入した意志に価値はありません。じっくり考えてくださればいいんです」


「あ、あぁ……」


「…………あぁ。彼女も手伝ってくれると思ったのになぁ。まさか普通の生活を望むとはね。心は読めても人間は分からないなぁ。

でも彼女、精神的に結構弱っていた……。後悔しなきゃいけど……」


--------(side:水野恵) ---------


「や、やった、やった! 受かってるよぉ! お母さん!」


「えぇ、おめでとう、恵……!」


「……まぁ、水野さんはかなり勉強してましたからねぇ。私も教え甲斐がありました」


「ありがとうございます、先生。なんとお礼を……」


「お礼なんて要りませんよ、奨学金付きでの医学部合格は彼女自身の頑張りです。娘さんをほめてあげてください」


「恵、頑張ったわね……! ずっとお医者さんになりたいって言ってたもんね……。うぅっ……。良かった……っ! 良かったよぉ、……!」


「な、泣かないで、お母さん。それに、まだゴールじゃないんだよ。これからが本当の勉強なんだもん! 一人でも多くの人を助けられるように頑張るよぉ」


「へぇ、分かってるじゃねェか、水野。浮かれてるようなら甘ェって言ってやろうと思ってたのによ」


「え、あの、あ、阿鳩先生?」


「あぁ、お母さん、気にしないで。優先生はテンションが上がると急にこんな感じになるんだよぉ。それだけ私の合格でテンション上げてくれてるってこと!」


「まあな! オレの優秀な生徒だぜ、お前……。オ、オホン。失礼いたしました、お母様」


「ふふふ。阿鳩先生って面白い方ですのね」


「すみません、どうも育ちが悪いもんでして……」



--------(side:内木遊) ---------


「…………うぅ。パトロールと言っても、特にこの街は…………。……あっ」


「…………」


「……ねぇ、君。どうしたの? パパとママとはぐれちゃったのかな?」


「う、うん…………」


「そっか……。怖いよね、大丈夫だよ。お姉さんが一緒に探してあげるからね。どこでパパとママはいなくなっちゃったのかな?」


「あっち…………」


「あのデパート? お買い物中にはぐれちゃったんだね。大丈夫だよ、安心してね。お姉さんが絶対に見つけてあげるから」




「こらー! ダメでしょ、勝手にいなくなっちゃ! ほら、警察のお姉さんにお礼言いなさい!」


「あ、ありがとう……」


「い、いえ……そんな。私、警察官ですから……、当たり前のことを……」


「……ねぇ、お姉さん、どうして僕が迷子って分かったの? 僕、何も言ってないのに……。僕、怖がりだし、恥ずかしがりだから、あんま話せないのに……」


「……うーん。なんでだろう? なんとなくかな? 実は私もね、すごい恥ずかしがりで、臆病で小心者なの。

だからかな? 同じような人の気持ちが分かるんだ……。あ、きっと困ってるんだろうなって……」


「お、お姉さんは臆病なんかじゃないもん! 僕を助けてくれた優しい人だもん! あのね、ママ! 僕、将来お巡りさんになる!」


「あらあら……。ふふ。この子ったら」


「ふふ、ありがとうね、僕。私、君がお巡りさんになるまでに、本当に臆病者じゃなくなれるように……頑張るね」



--------(side:赤井萌) ---------


「本日より勤務いたします、赤井です! 一日でも早く皆さまのお力になれるよう、努めてまいります! どうぞよろしくお願いいたします!」


「あー! 赤井焔の妹ちゃんだろ? いやぁ、顔似てるなぁ」


「あ、兄を知ってらっしゃるんですか! あの、いつも兄がお世話になっております!」


「あぁ、いや、俺たまたま同期だったんだよ。焔はまた海外に出てるみたいだけど、代わりに俺の事を兄だと思って……」


「何言ってんだ、お前」


「いや俺はずっと可愛い妹が欲しかったからさ」


「妹好きタイプだったのかよ……」


「にしても兄妹で外交官なんてすごいわよね。オマケにどっちもキャリア」


「い、いえそんな、私は……」


「いやいや、それどころかこの子、お父さん大使だからね。赤井太陽さん」


「え、そうなの!? それなら、丁重にもてなさないと……、あ、あの、お茶をお待ちしましょうか?」


「そ、そんな! とんでもないですわ! 家族のことはここでは関係ありません! 私は一番の下っ端ですから、私が雑用を……」


「……な、なんか……真面目ね、すごく」


「もうちょっと気軽にいこうぜー萌ちゃん? 肩の力を抜いて、お兄ちゃんに任せなさい」


「逆にお前は馴れ馴れしいんだよ!」


「は、ははは……」



--------(side:輝木光) ---------


私の冒険はこれからも続く。


だから、毎日を大切にしよう。

これから出会う人達、これまで出会ってきた人達との日々を。


その先に待つ悲痛に負けないように。



「本日より入社いたしました、営業部配属の輝木光です! よろしくお願いいたします!」



いい人生だったと、最後に笑えるように。


私の物語を。




『クズでも世界を変えられる』 完


ここまでま見てくださり、本当にありがとうございました。

割と自信はあったのですが、PVも評価もなかなか伸びず、だいぶ悲しいことになりました……が!

淡々と投稿し、何とか完結出来ました。

数少ない見てくださった方には、感謝してもしきれません。

最大限の感謝と敬意をもって対応させていただきたいです……!

重ね重ねとなりますが、本当にありがとうございました!


(もしよろしければ評価や感想などいただけると嬉しいです……涙)


--------


最後のオチは微妙な感じですが、もしも続いたら、仲間の記憶は理由をつけて元に戻す予定です。

続きは途中までしか書き溜めていないので、続けるかはまだ考え中となります。


何卒よろしくお願いいたします。


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