表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/100

第3話~始動③~

模擬戦で赤井萌に完敗してしまった輝木光。


大いにヘコむ輝木光だが、時は待ってくれない。


もう1人の仲間、内木遊との模擬戦の時間がやってきた。


さあ、内木遊の実力はいかに?


今回で仲間集合編完結です。

「それでは、内木と輝木の戦闘訓練を始める」


14時が過ぎ、私と内木さんの戦闘訓練が国井の掛け声とともに始まる。


……次は勝たねばならない。

このままでは終われない。


考えてみれば、さっきは相手の警戒と分析に集中するあまり、私は移動しなさすぎた。


だから、周りの酸素を奪われて負けてしまったんだ。


あれを防ぐためには、常に動き続けなくてはならない。


内木さんの超能力は分からないが、どんな能力であろうと動いてる相手の方が捉えにくいのは間違いないだろう。


私は前後左右に歩き回り、間合いを測る。


「…………」


それに対し、内木さんは動く気配が全くない。


(行動まで内気なのか……? あ、一歩前に出たぞ。約10メートルのこの距離……そこから一体何を仕掛けてくるんだ??)


私は警戒し、1歩引こうとする。


「……ヒカリちゃん、ごめんね」


そのタイミングで内木さんが私に謝る。


意味が分からないので、私は

『ごめんですって? 謝られる筋合いは……』と言おうとするが……。


(何だ?! 喋れない!? というより体が全く動かせない!?)


自分の体の異常事態に気づく。


少し前に警戒して後ろに引こうとした1歩も、全く踏み出せていないことに気づく!


(な、何をされたんだ……? これは……)


内木さんの方を見ると、いつの間にかその手にはゲームのコントローラーのようなものが握られていた。


「こ、これが、私の超能力なのよ。射程距離内の人間を……このコントローラで操る能力……。ヒカリちゃんは今、私の意のままに動くの」


内木さんが言う。


(そ、そんな! じゃあ私は自分から動き回って射程圏内に入ったってことか!)


ようやく自分のミスに気がついた!


(とんだマヌケじゃないか! ……クソっ! 何とかこの状況を打破しないとマズい!)


私は非常に焦るが、体がピクリとも動かせないこの状況で打てる手なんて……!


「もうこの状況になった時点で私の勝ちなの……。こ、こうすれば、おしまいよ」


内木さんが勝利を宣言した直後、私の右手が『私の意思とは無関係に』挙がる。


一体何をする気だ……。


「参りました」


次は勝手に私の口が動いた。


そして、その一言で私は敗北した。


「そこまで。今の訓練は内木の勝利」


(あぁ、そんな……!)


私はガクリと肩を落とした。


(……あ、体が動くようになってる……)


--------


まさかの全敗。


(私、こんなに弱かったのか……)


私は部屋の隅で傷心を極めていた。


その間に行われた内木さんと赤井さんの訓練は、赤井さんが勝った。


(ダメだこれは……。

私の超能力なんて、赤井さんの足元に及ばない……。

昨日だって、わたしじゃなくて赤井さんだったら阿井を守れただろうし、傷も負わなかっただろう。

私の超能力なんて、本当にただの木っ端でしかない……)


「気にすることないよー! 私たちの中で実績は1番あるんだし平気だって!」


恐らく全開で負のオーラを放っていただろう私に、水野さんが優しく声をかけてくれた。

いい人だ。


「裏を返せば実績だけで実力はないということですわね」


赤井さんにそう言われ、内心ムッとする。

ゲームの中では頼れたが、正直今のところ私はこの人が苦手だ。


「格付けは済んだようだな。では今後、部隊のリーダーは赤井に務めてもらう。君たちの中で一番強い人間がリーダーならば、誰も文句はないだろう」


国井が言う。

その言葉も私に追い打ちをかける。


(つまりそれは私が一番弱いってことか……)


「負けてしまった者は各自反省点をまとめて3日以内に提出すること。では、今日は解散」


(あー、もう……。レポートかよ……。大学の講義じゃないんだから。ほんと最悪)


私の精神はこれまでにないほど沈み切っていた。


--------


解散後、チェーン店の回転寿司屋に私たちはいた。


水野さん……いや、メグが


「今日一緒に夕ご飯食べようよ! 同じチーム同士親睦を深める! 的な感じでさ! あ、そうだ。みんな、私のことは『メグ』って呼んでください!」


と言ったことがきっかけだ。

でも……。


「…………」


誰も話さず、テーブル席では気まずい沈黙が続く。


「い、いやぁ参りましたよ。みなさんお強いですねぇ……」


何か喋らないと間がもたないので、私が突破口を開く。


「あ、い、いや、そんな……。……そ、そういえばヒカリちゃんってどんな超能力なの? 分からないまま訓練終わっちゃって……」


内木さんにそう言われ、手も足も出なかったことを思い出し、また気分が少し沈む私。


そこで、見栄っ張りな私は少しでも見せ場を作ろうと


「では、私の超能力をお見せしましょう」


と言い、超能力を使って離れた所にあるタブレットを触れずに操作し、寿司を注文した。


これで数分後には、新幹線に乗った寿司がやってくるはず……。


(あれ?)


だが、やってきたのはなぜか店員だった。

そして、店員はこう言い放つ。


「お会計でしょうか?」


どうやら、間違えて隣にあった会計ボタンも押してしまったようだ……。



「私は何やってもダメなんだ……はは……」


日常でも失敗続きだ。

私には何の才能もなかったのだ。


「そんなに気を落とさないでヒカリちゃん……。今日は運がなかっただけよ…….。私もモエちゃんも初見殺しな超能力だし……」


内木さんは慰めてくれるが、


(初見殺し? そんなの嘘だよ。内木さんはまだしも、赤井さんの能力は知ってたとしても対処できるようなモノじゃないでしょ)


と内心反発してしまう。


「あはは……私ももっと強い超能力が欲しかったですよ……。世の中不平等ですね……」


私にはこう力なく笑うのが精一杯だった。


「……アナタ、そもそも今日の訓練やる気ありましたの?

ゲームの中で会った……知恵と勇気でテロリストに立ち向かった『ひかりん』と……今日戦ったフヌケが同一人物にはとても見えなかったんですけども……」


(フヌケだと! こ、こいつ……!)


赤井さんにそう言われ、少し怒りを覚える私。


「同一人物なんだから仕方ないじゃないですか……。私はあなたのように現実の超能力には恵まれなかったんですよー……」


だが、私はこらえた。

これから先、上手くやっていくには、ここでキレてしまうわけにはいかない……。


「はぁ……。

私の買いかぶりでしたわ……。

こんな方だったとは、失望です。

本当……救えないですわね。

今のアナタは、自らの実力と意思の弱さを能力のせいにして逃げてるだけですわ。

周りの優しさに甘えてグダグダと……」


「っ! なんだと赤井っ! お前、一度私に勝ったくらいで調子に乗りすぎじゃないか!」


思わず席を立ち上がり激怒する。

今まで赤井に『さん』付けしてたが、もう呼び捨てだ。


(こいつ、下手に出てればつけ上がりやがって!)


後で振り返れば、赤井の言ってることは完全に正しいのだが、当時の私は完全に冷静さを失っていた。


「も、モエ(赤井萌の下の名前。内木さんとメグは赤井をこう呼ぶ)ちゃん……。なにもそこまで言わなくても……」


内木さんがアワアワしている。


「だって事実ですもの。

事実ほど残酷で、耳の痛いものはありませんわ。

訓練だからと全力も出さずに適当に戦い全敗し、その後で不貞腐れている。

超能力よりも人として弱い。

それがアナタですわ」


「随分と好き勝手言いやがって! もうブチ切れたわ。今なら本気で相手してやるよ、かかってきな! この天パが!」


「……いいですわよ。次は少し酸欠になるだけでなくてよ。消し炭にして差し上げますわ! このフヌケ!」


「はっ。事実ほど耳が痛いってのは本当みたいだな。気にしてるならストレートパーマでもかければ?」


「言い返せず相手の容姿を罵るだけなんて、情けない方ですのね! 今朝はアナタを尊敬していたのに……心底ガッカリですわ! 本当にしょうもない人ですのね!」


私も赤井も売り言葉に買い言葉で、怒りのボルテージが上がり続けて止まらない。


「はん! なんとでも言え! すぐに――」


その時、私の言葉の途中で体に異変が起きた。


(――ぐっ。か、身体が動かない……! この超能力は……)


「お、お願いします……。2人とも冷静になって……。お、お客さん、みんなこっち見てるわよ……」


内木さんに拘束されて止められたようだ。

いつの間にか内木さんの手には、彼女の超能力発動の印であるコントローラーが現れている。


「特にヒカリちゃん……。どうしちゃったの? お、女の子の容姿へ攻撃するのは、その……ダメよ!」


内木さんに注意されるが、頭に昇った血がおさまらない。


しかし、直後に


『パシン!』


左の頬を赤井に叩かれ呆然とする。


(……はぁ? やりやがったなこの天パが!)


私は激昂した。


だが次の瞬間


『パシン!』


『私も無意識に赤井の左頬を叩いていた』のだ。


「け、喧嘩両成敗よ。これでこの話はおしまい……ね?」


どうやら内木さんの超能力で、赤井は私を、私は赤井を、お互いに叩いていたようだ。


「内木さんにそう言われたら仕方ないですね……。命拾いしたね、お嬢様」


ここまで内木さんに言わせてしまい、さすがに申し訳なくなった私は引き下がる。


「その言葉、そっくりお返ししますわ。このフヌケ」


(やっぱりこいつムカつく……)


だが、結局私と赤井の間にピリピリとした緊張感は残されたままだった。


「ねぇねぇ! この中トロ美味しよ! みんなも食べなよぉ!」


メグはこの空気でも動じていなかった。


(メグ……。ある意味あんたはすごいよ)


そして、私たちは回転寿司屋を後にした。


完全に八つ当たりだが、赤井と険悪になってしまった輝木光。


そもそも、輝木光は絵に書いたダメ人間。


果たして仲間と上手くやれるのか……?


次回、仲間との絆が試される、強敵が登場!



ここまでお読みいただきありがとうございます

これでメインキャラ集合でございます……!


今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の俗っぽい思考好き
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ