クリスマス
「サンタさんは居るのかな? 」 確認するように小首を傾げて聞いてみた。
「翔君は居ると思う?」優しく微笑みながら智兄ちゃんが聞いて来る。
智兄ちゃんは僕に優しくてすっごく大好き。
「うーん。わかんない」本当にわかんないから益々首を傾げる。
「翔君は誰かから言われたのかな? 」ニコニコしながらゆっくり聞いて来る。
「うん。鏡兄ちゃんがサンタさんなんて居ないって言ってたの。智兄ちゃんはサンタさん居ると思う?」
「鏡が言ったのか。全くアイツは……俺はサンタさん居ると思うよ」
「ホントに? 」
「本当に」諭す様に優しく答えてくれた。
「智兄ちゃんが居るって答えてくれるなら本当に居るんだよね」
「そうだよ。そういえばもうすぐクリスマスだね。翔君は何が欲しいのかな? 」
「んー、何でもいいの? 」
「サンタさんが用意できる物だったら何でもいいよ」
「そしたら、鏡兄ちゃんと智兄ちゃんがいいな」
「え? 何で? 」
「だって、泊まりに来ても皆で一緒にお風呂入ったり一緒に寝たりしたいのに、鏡兄ちゃんか智兄ちゃんのどっちかだけしか駄目だから寂しいんだもん」正直に一生懸命言ってみた。
「寂しい……か。そうだなそしたら鏡には俺から頼んでみよう」
「僕も一緒にお願いする」
「ただいま」バタンと音がして鏡兄ちゃんが帰って来た。鏡兄ちゃんは智兄ちゃんのお兄ちゃんで意地悪だけど一緒に居ると結構楽しい。
「お帰り。鏡兄ちゃん」
「ほう、翔か、お母さんに怒られて逃げて来たのか? 」鏡兄ちゃんの意地悪が始まった。
「違うよ! 鏡兄ちゃんの意地悪! 」
「ま、いいや。智どうした? 複雑そうな顔して」
鏡兄ちゃんの隣で大きな声出して「よくないよ! 」と叫んではみたけど鏡兄ちゃんが聞く事をしないことを知っているから敢えてその後は無視する事にする。
「翔君、あっちでゲームしておいで。んで、鏡、お前ちょっと来い! 」
「僕も一緒に居ちゃ駄目? 」上目遣いで智兄ちゃんを見上げながら聞くようにする。
「翔、一緒に居ていいぞ。な?智」悪だくみを考えてる不敵な笑みを浮かべたまま僕と智兄ちゃんを交互に見ている。
「翔君も一緒に居る? 」
「うん」
「決定だな」三人一致。
「鏡。驚かないで聞いてくれよ」
「もったいぶらずに早く言えよ! 」
「翔君が三人でお風呂入ったり一緒に寝たいんだって」
「は? んな事出来るか! 」
「翔君が泊まりに来た時、いつも俺か鏡のどっちかしか一緒に居れないのが寂しいんだって」
「この年で一緒に風呂入って一緒に寝て何が楽しいんだ? 却下に決まってるだろう! 」
「サンタを信じてる子に言ったんだってな。サンタなんか居ないって……」
「そんなこと言ったっけか? 」
「言ってたもん! 」すかさず僕が口を挿む。
「でもな、三人で一緒に行動なんて絶対しない! それに自分勝手だとは思わないのか! それに、智! 翔には甘すぎ! 」だんだん智兄ちゃんの顔が怖くなって来てる。
「ほう。鏡? どの口がそんな無責任な事言うのかな? 」鏡兄ちゃんにとって智兄ちゃんが怒った時は怖いらしくて僕を盾に使い始める。
「ちょ、ちょっと待てよ。冷静に話し合おう。話し合えば理解できる。」
「無理だな。鏡、お前は俺の触れちゃいけない所に触れたみたいだな」不敵な微笑みを浮かべたまま智兄ちゃんは鏡兄ちゃんを逃がさないように腕を掴んでいた。
「翔! 俺を助けろ! 」死にそうな声で助け求めてる。助けてあげたいけど……
「翔君、こんな奴助けなくていいよ。ゲームしてなさい。」優しく微笑んではいるけど声には圧力がある。
「鏡兄ちゃんごめん! 智兄ちゃんお話し終わったら一緒に遊ぼうね」本当に鏡兄ちゃんごめんなさい。
「わかったよ。後で遊ぼうね。さて、鏡? 年下の翔君を使って何するつもりだったのかな? まさか俺の怒りを止めようとでも? まさかな、そんなことないよな? 」声の圧力のみで鏡兄ちゃんを竦み上がらせてる。
「わかったから怒るな。お前が怒ると翔から嫌われるぞ? 」
「翔君を盾に使う気だな? 益々俺の怒りに触れたいようだな! 」声が大きくて会話が全部筒抜け状態だ。
「さてと、翔。クリスマスプレゼントは何がいい? 俺は智と違ってバイトしてるから好きなもの買ってやるぞ? 」だから助けろ!と鏡兄ちゃんの目が訴えている。
「鏡? 俺の話の方が先じゃないのかな? 俺が翔君に甘いって? 完全に甘くはないぞ? 厳しい時はキチンと厳しくしてるしな。そうだよね? 翔君? 」
「うん」食事の時は智兄ちゃんがいつも作ってくれるんだけど、僕の嫌いな物良く作って僕が意地で食べないようにしてたらすっごく怖いんだ。
「さて、それでも俺は翔君を甘やかせているとでも? 」
「はいはい。智は翔を甘やかしてないね。口が悪かったです。ごめんなさい」
「わかってくれたらいいよ。二個の頼み聞いてくれたら許してやる」
「やばい気がするのは俺だけか? 」
「いやいや。鏡、正解だよ。さてお願いはクリスマスの日に三人でお風呂入って一緒に寝る事。二つ目は翔君のクリスマスプレゼント半額出せよ? 俺の怒り静める事を考えたら安いほうだろう? 」笑ってはいるけど笑顔の圧力が鏡兄ちゃんに降り掛かっているんだろうな。
「結果的には翔の為かよ。それが甘いって言ってるんだよ! 智は甘やかしすぎてるの! いいか? 子供ってのはきちんと教えないと後で恥かくのは翔なんだからな」うわっ。鏡兄ちゃんまで怒り出した。
「恥かくって翔がか? 時期にわかる事もあるだろう? 今のうちから現実を見せなくてもいいんじゃないか? 夢持っててもいいだろ? 」
「夢だって? いつかは現実見るんだ! 今から現実見ていたほうが後が楽だろう。翔の為を思うんだったら現実をしっかり見せておいた方がマシだろう? 」
二人がこんな喧嘩するのなんて初めて見た。鏡兄ちゃんが怒ってても智兄ちゃんが冷静だったり、智兄ちゃんが怒ってても鏡兄ちゃんが冷静だから……
「ごめんなさい。僕のせいで喧嘩しないで」すっごく二人が喧嘩する事が悲しくなって涙が止まらなかった。
鏡兄ちゃんと智兄ちゃんが僕を見て吃驚してる。
「翔君? 翔君の事で喧嘩してる訳じゃないから泣かなくていいんだよ? 」僕の前にしゃがみこんで涙を拭きながらゆっくり言ってくれたけど涙は止まらなかった。
「悪かった」智兄ちゃんの隣で鏡兄ちゃんが僕の頭をゆっくり撫でてくれる。
(二人とも本当に僕には甘いんだから)
30分位してやっとで僕が泣きやんだら二人とも怒ってる気配は無く僕の手を握って三人で外に行こうと言い始めた。
「翔。ゲーム屋さんがいいか? それとも、おもちゃ屋さんがいいか? どっちがいい? 」
「ゲーム屋さん」おもちゃ屋さんもいいけど皆で楽しみたいからゲーム屋さんの方がみんな楽しいような気がして。
「そしたら、ゲーム屋さんに行こう。翔君はどんなゲームが好きなのかな? 」
「みんなで出来るゲームがいい」
ゲーム屋さんに着いたけど何にも買わずに帰ってきて、皆でテレビ見たりゲームしたりしているうちにお母さんが迎えにきた。
「こんばんわ。翔がお世話になってます」玄関からお母さんの声が聞こえて三人で一緒に玄関に行く。
「お母さん。クリスマスの日お兄ちゃんの所に泊まりに来てもいい? 」
「クリスマス? お兄ちゃん達忙しいだろうから駄目よ」
「僕たちは大丈夫ですよ。両親も出張で帰ってこないし、翔君が居た方が楽しいですし」
「そうですか? そしたらクリスマスイブだけお願いしようかしら。年末だから仕事が忙しくってね」ごめんねとお母さんは頭を下げていた。
(やった。これで三人でクリスマスイブ過せる。大晦日とお正月はお泊り許してくれないだろうな)少し寂しくなる。嬉しいんだけどお兄ちゃん達ともっと一緒に居たい。
「それではクリスマスイブの朝に翔君迎えに行きますね」
「はい。翔を一日お願いします」お母さんが深々と頭を下げてたから僕も頭をペコリと下げた。
「25日の夕方まで翔君預かっててもいいでしょうか? 」
「御迷惑でなければ。翔? いい子にしてた? 」
「翔君はいつもいい子ですよ。ね、翔君。嫌いな物も頑張って食べてるしね」ニコニコと智兄ちゃんが答えてる。
もう10時回っていて眠くて眠くて睡魔の湖へと身を委ねていった。
鏡兄ちゃんや智兄ちゃんの家はお金持ちで発売前でもゲームソフトは山程ある。それに智兄ちゃんのご飯はとっても美味しいけど、嫌いな物を一個ずつ作るのは止めてほしい……よく泊まりに来るし家に居たら8〜9時位になるとお母さんが早く寝なさいって怒り出すけど、鏡兄ちゃんや智兄ちゃんは起きてても怒らないから夜更かしでゲームもできる。僕にとってはすっごく楽しい所なの。
「んー。あれ? 鏡兄ちゃんの家の玄関に居たのに」完全に寝惚けているのは大体分かる。居間まで行くとお母さんの置手紙があった。
(今日は帰って来れそうにないからお兄ちゃんの所に泊まってね。連絡は昨日帰ってくる前に言ってるから。カギはちゃんと掛けるのよ。お母さんより PS.お父さんは昨日から出張だから暫くお母さんと二人暮らしね)
ご飯は作ってあるけど冷蔵庫にいつも通り入れてそのままお兄ちゃんの家に行くことにする。
(今日は智兄ちゃんの朝ごはんは何かな? )長期休み中いつもお兄ちゃんの家に泊まりに行く時は朝ごはんを抜いてお兄ちゃん達と一緒に食べるようにしてる。一人で食べてもいいんだけど、やっぱり皆で食べた方が美味しいからね。
ピンポーン
「おにーちゃん。泊まりに来たよー」
「翔君おはよう。泊まりにきたっていつも通りご飯抜いて来たのかな? ちゃんとご飯食べてこないと駄目って言ったでしょ? 」
「翔か? 早く入って来い。遊ぶぞ」
「智兄ちゃんごめん。でも、智兄ちゃんの事だから三人前作ってたりして」
「それは作ってるけどね。これからちゃんと家でご飯食べて来るんだよ。わかった? 」
「嫌だ! 智兄ちゃん達と一緒に食べる! 」智兄ちゃん怒ったら怖いけど怒られても絶対に引かない! 一人で寂しく食べるのも嫌だし、それに自分だけ違うもの食べるのも嫌! だから怒られても絶対これだけは聞いてあげない。
「翔君? お母さんがいつも朝ごはん作ってるけどいつも食べてくれないって泣いてたよ? 食べてあげよう? 」
「嫌だ! いくら智兄ちゃんの言う事でも嫌だ! 一人で寂しく食べるのも嫌だし、自分だけ別の物食べるのも嫌だ! 」段々智兄ちゃんの顔色が変わっていく。
「翔君? そんな我儘ばかり言ってたらもうご飯作ってあげないよ! 」
「やだぁー。一緒に一緒のご飯食べるぅ」涙がボロボロ流れ出したけど気にしない。皆で一緒に食べたいもん。
「はぁ、翔君? そしたら明日からお母さんが作ってくれたもの持っておいで。お昼は同じメニュー作ってあげるから。それだったらいい? 」根負けしたように智兄ちゃんが提案した。
「うん。それだったら持ってくる」まだ愚図ってるけど袖で目を擦っていると智兄ちゃんが抱きかかえてくれてそのまま洗面所に行って顔を洗うように言われた。
「翔? 智の逆鱗に触れたのか? 怖かったろう。智もあんまり翔泣かせるんじゃないぞ? 」からかい半分で鏡兄ちゃんが言ってくる。
「別に逆鱗に触れてないよ。お前の方が逆鱗に触れているがな」
「ぐむっ。翔だけ依怙贔屓してないか? 全く……翔、さっさと顔洗って飯食って一緒にゲームしようぜ」
「鏡兄ちゃんと僕だけでゲーム嫌だ。鏡兄ちゃん絶対僕に勝てるのしかしてくれないんだもん」
「何? 今日は何でもいいぞ? 翔は何がしたい? 」
「ほんとに何でもいいの? 」
「ああ、全部俺負ける気がしないしな」
「もしかしなくても徹夜明け? 夜中じゅう僕に勝てるように練習したとか? 」
「当然だろ。俺負けるの嫌だし」
「鏡! 珍しく俺より先に起きてると思ったら完徹してたのか? ちゃんと寝とけってあれ程言っただろう! 」
「わかった。早くご飯食べるね」
「10秒以内な」
「えー無理だよ。10秒なんて」
「10・9・8・7・6・5・4・3」
「鏡! 翔君があせって喉詰まらせたらどうすんだ! ゆっくり食べさせろ! 」
「2・1・0……遊んでやらねー」初めっからそのつもりだったな鏡兄ちゃん。いいもん智兄ちゃんと遊んでもらうもん!
「智兄ちゃん後で二人で遊ぼう」
「いいよ。鏡なんてほっぽいて遊ぼうね」
「ほっぽいてって。智酷いな。翔も翔だぞ? 一緒に混ぜろ! 」
「鏡兄ちゃんは意地悪言って遊んでくれないんでしょ? いいもん。智兄ちゃんに遊んでもらうから」
「鏡。翔君は鏡なんかと遊びたくないんだと」
「二人して俺を仲間外れにするのか? そうかそうか。そしたらクリスマスイブの日は二人でゆっくり過ごしな。俺はホテルにでも泊まるか」
「き・ょ・う? 貴様。そんな事言ってわかってんだろうな? 俺の逆鱗にまだ触れ足りないとでも? 」ヤバイ。智兄ちゃんのこめかみがピクピクなってる。こういう時は、逃げるが勝ち。
「ご飯食べて来る」
「あ! 翔、逃げるのか? 俺も飯食ってくる。そんじゃな智」ドタバタと鏡兄ちゃんが僕の後を追いかけて来る。
「そしたら俺もご飯食べようかな」
「いただきまーす」今日のご飯はトーストにスクランブルエッグに僕の大嫌いなサラダ。
「翔君? サラダちゃんと食べようね」にこやかに笑ってはいるが笑顔の裏でサラダを完食させると目が訴えていた。
「うっ。サラダ全部食べないと駄目? 少しじゃ駄目? 」
「全部食べようね」
「なんか僕のお皿だけサラダ一番多いよ? 」
「うん。翔君のためにサラダ作ったからいっぱい食べてほしくってね」
「鏡兄ちゃん。サラダあげる」僕はサッと鏡兄ちゃんのサラダのお皿に自分のサラダをせっせと乗せていると、隣でにこやかに笑いながら口の横がヒクヒクしている智兄ちゃんと目が合った。
「翔。お前ガンバって自分で食った方がいいぞ? 智がキレ始めてる」
「翔君? せっかく僕が翔君の為に作ってあげたのに……そしたら僕のサラダ翔君にあげるね」
「いらない! 」慌ててサラダの入ったお皿に手を乗っけて入れれなくする。
「翔君? わかった。お昼は豚汁にしようね。夜は豚汁と焼き魚」僕の大嫌いな豚汁と焼き魚。嫌いな物オンパレード。智兄ちゃん酷いよ。
「サラダ食べたらお昼ごはんと夜ごはん何になる? 」
「そうだな。お昼は御素麺で夜はハンバーグにでもしようかなって」智兄ちゃんの意地悪。どうしても僕に一番嫌いなサラダ食べさせようとしてる。
「えー、それ酷い」目に涙が溜まってきた。
「酷いのは翔君と僕のどっちかな? 翔君の為にせっかくサラダ作ってあげたのに食べてくれないんだもんな」
「わかった。頑張る」半ベソをかきながら口に一気に詰め込んだ。
「いい子、いい子。嫌いなサラダちゃんと食べれたね」
あれ?今日のサラダ嫌いじゃないぞ? 何でだろう?
「今日のサラダ嫌いじゃない。もっと頂戴」今度は鏡お兄ちゃんのサラダをせっせと自分のお皿に入れ始める。
「態々鏡のお皿から取らなくてもいいよ。新しいのついできてあげるから」
「ねぇ、智兄ちゃん? 今日のサラダいつもと一緒のサラダ? 」
「野菜は一緒だけどドレッシングは僕が作ったんだよ。このドレッシング好き? 」
「大好き。このドレッシングだったらサラダ食べれる」
「そしたら明日帰る時にお母さんに渡しておくね」
「うんっ」返事をするのと同じ位に僕の前にはサラダが出てきて、迷わず僕はサラダをかけ込み始めると智兄ちゃんが嬉しそうに笑っている。
「翔、良かったな。嫌いな物が一つ消えて」
「うんっ。あ! 智兄ちゃん? 今日のお昼と夜は豚汁と焼き魚嫌だよ? 」上目使いで智兄ちゃんをジーっと見上げる。
「約束通り翔君はちゃんとサラダ食べてくれたから御素麺とハンバーグにしようね。ハンバーグ作る時翔君手伝ってくれる? 」
「うんっ。お手伝いする」やったー。サラダ美味しいし、お昼ご飯と夜ご飯は大好きなおかずオンパレードだ。
「翔君? ハンバーグはデミグラスハンバーグがいい? それとも、チーズハンバーグ? 」
「チーズ乗っけてデミグラスソースが掛かってるやつがいい。駄目? 」
「いいよ。少し手間取るけど手作りで作ろうね」
そんな会話をしている内に朝ごはんをみんな食べ終わっていて僕はテレビにせっせとゲームのコードを繋いで行く。
「翔? ゲーム繋ぎ終わったか? さっさとレイブンしようぜ」
「またレイブン? 鏡兄ちゃんそればっかり。他のだと僕に勝てないからレイブンするんでしょ? 」
「ほー。そんな口は俺に勝ってから言うんだな。翔はいつも智に泣きついて智が俺を負かせてる状態だろ? 」
「うー、いいもん。智兄ちゃん。レンジャースレイヤーしよう」僕が台所まで行って智兄ちゃんを呼びに行くと智兄ちゃんは洗い物していた。
「後でね。鏡に虐められたら僕が行った時に言ってね。ボコボコのケチョンケチョンにしてあげるから」ニコリと微笑み洗い物を再開している。
鏡兄ちゃんの所に戻り、レイブンを開始している鏡兄ちゃんの隣で飛び込みバトルを開始する。
「さて、翔が入って来たから虐めてやるか」してやったりと微笑む。
「いいもん。智兄ちゃんが後で仕返ししてくれるって言ってくれたし」負けてもいいもん。鏡兄ちゃんが負けてレンジャースレイヤーし始めたら僕がボコボコにするもん。
「翔? 俺のキャラ何がいい? 選ばせてやる」
「何でもいいよ。どうせ、鏡兄ちゃんには勝てないんだから」
「そうかそうか、それじゃ、メリス・ハヴェントでも使ってやるか」
「えー。メリス使うの? 一番強いじゃん。鏡兄ちゃんの意地悪! 」僕は鏡兄ちゃんの頭をポカポカ叩き始めた。
「いてて……翔が何でもいいって言ったんだろう? 」
「鏡? またレイブンで翔君虐めてるのか? 」
「虐めてねーぞ」
「鏡兄ちゃんが虐める。メリス使って虐めるぅ」目に涙を貯めながら智兄ちゃんの所に走っていく。
「さて、洗い物も終わったし鏡を虐め返してあげよう」
「だから虐めてないって言ってんだろう! 」
「んじゃ、何で翔君が泣いてんだ? 」
「またそれか」溜息混じりにぼやいてる。
「俺はシャイレン使ってやろう。勝てるなら勝ってみろ! 」
僕は智兄ちゃんの横でテレビをじーっと見ながら智兄ちゃんの応援をせっせと頑張っていた。
「くそー! また負けた。智!レンジャースレイヤーで勝負だ! ぜってー打ちのめしてやる」
「それじゃ、レンスレだから翔君にバトンタッチしよう。翔君頑張ってね」
「うんっ。鏡兄ちゃんをボコボコにする」元気よく返事してゲームのディスクをレンジャースレイヤーに変えてコントローラーを握る。
「ちょっと待て! 二人掛りで俺一人ボコボコにするつもりか? お前ら鬼か? 」
鏡兄ちゃんが愚痴っている間に電源を入れてVSモードでキャラクター選択まで持っていく。
「鏡兄ちゃんどれでくる? 僕は何でもいいから指定していいよ」
結果的には全体的に僕の方が強いから別に気にしない。だって、ここ最近家に居る時ずっと自分の不得意なキャラクターを練習して強くなってるから負ける気がしない。
「俺は妃劉で行こう。んで、翔は縁で来い! 迎え討ちでボコボコにしてやる」
妃劉は鏡兄ちゃんの使うキャラクターの中で(隠れキャラクター以外で)一番強いキャラクターで、指定された縁は以前した時に僕の中で一番弱かったキャラクターだけど、今は縁が最強に強かったりする。
「本当に縁でいいの? 縁でいいなら僕本当に使っちゃうよ? 」含みのある言葉を口にしながら鏡兄ちゃんを覗いてみた。
「いいからさっさと決定しろ! 」
縁で決定して対戦が始まる。
初めの一回目は遊びでわざと負ける。
二回目はギリギリで勝ったようなふりしながら、危なかったーと焦った様に言ったらくそーって悔しがってた。
三回目はまたギリギリで勝つ様に再度仕組む。
そうすればまたやってくるに違いない。
思惑通り……
「翔! 再度同じキャラクターで対戦しろ! 」
ヤッター。引っかかった。次はどうしようと考えていると鏡兄ちゃんと僕がキャラクター決めた後ステージ選んでいたら。
「翔君。鏡が可哀そうだから本気で戦ってあげて」
智兄ちゃんがそう言うなら仕方ない。
「わかった」と簡単に答えながらステージを決定して対戦が始まる。
「何? 翔! 手加減してやってたのか? 」今更の如く吃驚して僕と智兄ちゃんの顔を交互に見ていた。
「ほら、対戦始まってるよ」そう言いながら距離を取っている。
「ああ。そしたら俺も今回から本気や! 」鏡兄ちゃんは没頭すると言葉が変わる。
一回目は距離を空けながら戦ったからパーフェクト勝ち。二回戦が始まる前に鏡兄ちゃんが接近戦で戦え! って言うから仕方なく接近戦で戦ってあげる。
妃劉が動き始めたらしっかりガードしてきっちりダメージを喰らわないようにする。
妃劉は間接攻撃持ってなくて、直接攻撃はきっちりガードしたらダメージは0だからパーフェクト(体力を減らさずに勝つ事)も見えてくる。
対空技が終わって落ちている最中は無防備だからそこを狙って妃劉が対空攻撃を出してくる。
だから僕は空中から間接攻撃を使って妃劉を地面に叩きつけて起き上がるまでに妃劉を追い詰めていく。
これ以上追い詰めれなくなってガードが甘くなった瞬間に縁の空中連続攻撃が華麗に決まる。
連続攻撃の最後の一撃が決まった瞬間に僕のパーフェクトが確定する。
鏡兄ちゃんを少し見てみたら、真っ青な顔してた。
縁相手だったら勝てると思っていたんだろうな。
「次こそは……」
「鏡。そろそろ諦めたら? 」
「さて次はどうしてほしい? 鏡兄ちゃん」にっこり微笑みながら聞いてみる。
「手を抜くな。本気でかかって来い! これで負けたら隠れキャラで潰してやる! 」
「智兄ちゃん本気で行ってあげた方がいい? 」今度はわざと攻撃をガードしたりかわしながら智兄ちゃんに意見を求めた。
「可哀そうだからたったと終わらせてあげて」にこやかに笑いながら答えてくれる。
さてと、智兄ちゃんからたったと終わらせてって言われたから最速で倒してみよう。
一気に接近戦に持ち込んで、妃劉を打ち上げて連続攻撃の準備をする。
連続攻撃が終わる時に縁の位置と妃劉の位置を見てみると空中から再度空中に打ち上げれそうだったので試してみたら見事に打ち上がり再度縁の連続攻撃が再開し始める。
ラッキーな状況が3回も続いて一回も落とさず決着がついてしまった。
接近戦に持ち込んで僅か15秒。
僕の中では最速の試合だった。
僕が喜んでいると、鏡兄ちゃんが隠れキャラクターの竜剣翁を出して決定し、僕に縁を選ぶように催促する。
縁を選択してステージを選択し、戦いが始まる。
竜剣翁は間接も持ってはいるけど直接攻撃をガードしても体力が減ってしまうから掠る事もパーフェクトの為には許されない。
竜剣翁が間接を出した瞬間に隙をついて打ち上げて再度連続攻撃を開始する。
どうも、連続攻撃が切れると思っていた所は空中から打ち上げでまだ続くらしい。
だから、一回打ち上げると二度と地上に戻らずに相手を倒せる。
連続で無限ループの如く徹底的に空中の連続攻撃を華麗に振舞う。
「ハメかよ! ハメは禁止だろ。やっぱり…… 」
「愚痴っても駄目だな! 勝負の世界は甘くないんだぞ? 鏡兄ちゃん」智兄ちゃんがからかう様に言いながら鏡兄ちゃんの肩をポンポンと叩いた。
「うるさい! 」
竜剣翁VS縁の対決も三回対決して三回共総てパーフェクト勝ち。
鏡兄ちゃんからしたら散々だった。
「智! お前知ってたな! 翔が強くなってる事」
「ああ、知ってたぞ。翔君は頑張ってるって翔君のお母さんから聞いてたからね」
ゲームしたりお手伝いしたりしてたら夜になって今日は鏡兄ちゃん意地悪だったから、智兄ちゃんと一緒に寝る様にする。
翌日、帰る前に智兄ちゃんに明日も来て良い? って聞いたら智兄ちゃんが明日から3日位用事あるからごめんねと言われそれ以上言えなかった。
3日経って智兄ちゃんが朝迎えに来てくれて初めてクリスマスイブだという事に気がついた。
その日夕方まで智兄ちゃんと鏡兄ちゃんから洋服屋さんやゲームセンターを連れまわされ、ぬいぐるみや洋服を一杯買っていた。
(なんでだろう? )不思議に思いながらも聞けずにいるといつの間にか夕方になっていてやっとで智兄ちゃん達の家に辿り着いた。
そこで僕が目の当たりにしたモノは……
夥しい程の電飾やクリスマスの飾りだった。
「これ、どうしたの? クリスマスってのは分かるけど、ピカピカしすぎてる」
「翔君の為に3日前からドタバタ用意したんだよ。それと。ついて来て」それだけ言うと荷物を持たされている鏡兄ちゃんを引き連れて二階の部屋の前までお兄ちゃん達が僕を連れて行く。
「翔君。ここを開けてみて」
「翔ここ開けてみな」二人同時に微笑みながら僕の行動を見てる。
(この部屋って確か何にもないお部屋だったよね? ここに何があるのかな? )興味は有るものの戸惑っていると、早くとお兄ちゃん達が急かし始める。
「わかった」と言いながらおずおずとノブに手を伸ばし部屋を少しだけ開けて覗いてみた。
「わー。これどうしたの? すごいね〜」なんと其処には真新しいベッドや小さな机やタンス、カーテン。
生活する上で何不自由なく過ごせる様な状態だったので吃驚した。
「翔君のお部屋だよ」
「翔。お前の部屋だ! 」これまた二人同時に言ってくる。
「え? 僕の部屋? 」
「うん。翔君の為に二人で親父からこの家を買い取って翔君のお部屋を作ったんだよ」
「高かったんだから有り難く思えよ! 」
「恩着せがましいぞ! 鏡! 」
「うるさいな! 事実だろ! 」
「……」吃驚し過ぎて言葉が出ない。
ただ、少しだけ変だな? って思った。だってベッドがすっごく大きいんだもん。
「智兄ちゃん。ベッド何で大きいの? 」
「それはね特注って言って緊急に作って貰ったんだよ。翔君、前に三人で一緒に寝たいって言ってたよね? 」
「うん。言ったけど、鏡兄ちゃん嫌なんでしょ? 」
「鏡の事は気にしなくていい」ちょっと不機嫌な顔になりながらも智兄ちゃんは話を続けた。
「三人で寝れる様に作ってもらったの」
「嬉しい。ありがとう」ポロポロと涙が溢れたから智兄ちゃんが吃驚してる。
それから三人でご飯食べて、ケーキ食べて、三人でお風呂入って、僕の部屋で三人で仲良く寝た。
これからも三人で仲良く過ごせたらいいな……
甘えんぼで自分の気持ちに素直(自分勝手なだけ。。。)で智兄ちゃんと鏡兄ちゃんにべたべたな翔君でしたが楽しんで頂けたでしょうか?
智兄ちゃんはすごく翔君贔屓でしたが。。。
鏡兄ちゃんは悪役?イエイエ。彼は彼で翔君の事気に入ってるんですよ。
虐めると素直に反応を返してしまう翔君。。。
あくまで「私の中の暗殺者」に登場する翔太君をモチーフに性格をそのままこちらに移動させて新規で作成し直しただけですが。。。。
もし翔君の元になった翔太君を見てみたいと思ってくださる方はぜひ私の中の暗殺者をご一読くださると嬉しいです。
一応ホラー指定してますが、そこまで怖くないですw
何年前の作品ですし、作者が描写を苦手としている為、まだまだ考慮の余地が大量にある作品ですが。。。
ご感想などあればぜひメッセージなどお待ちしております。
作者は寂しがり屋なので送ってくださるととてもやる気?に変換されます。