叙述「明日の天気」
シトシトと雨が降る。
シトシトと雨が降る。
溜まった雫が下へ落ちる。
跳ねる雫。
しなる葉っぱ。
シトシトと雨が降る。
ふと、振り返る。
無音の部屋。
雑音のような雨音。
そして、また外を眺める。
吐息で曇る窓ガラス。
シトシトと雨が降る。
時が流れる。
音が鳴る。
シトシトと雨が降る。
曇ったガラスを指で拭く。
キュッキュッと音が鳴る。
窓ガラスの向こうで雨が降る。
昨日のことを振り返る。
無音の空間。
静かなようで騒がしい。
流れる時間。
昨日のこと。
まるでそれは昨日のこと。
あんなに晴れていたのに、今はシトシトと雨が降る。
激しくもなく、優しい雨音。
まるで変わらない昨日と今日。
違うのはそういう雨音だけ。
誰かが「雨が降ってるの?」と聞く。
きっと晴れていると私は言う。
「じゃあこの雨はなに?」と誰かが聞く。
分からないと私は答える。
「明日の天気はどうする?」と誰かが尋ねる。
きっと晴れると君が答える。
だからこそシトシトと雨が降る。
そういうもんだと君が答えた。
窓ガラスを指でなぞる。
キュッキュッと音が鳴る。
ありがとうと聞こえた。