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エロゲ主人公に憑依したんだが?  作者: ろうら
第一章
3/22

3/29 初デート

 うぉぉぉおぉおおぉぉ!!!!

 スゴい、スゴすぎる!

 こいつから話を聞いといてよかった!

 聞いてなかったら確実に叫んでいて不審者扱いだ。

 俺と、茜こと清里茜は学園に入学する際に必須の杖を買うために渋谷に来ている。

 街並みはほぼ日本と一緒だ。

 というかスクランブル交差点がある。

 やはり人だらけ。

 だが決定的に違うのは、人間の容姿。

 7割くらいは普通の人間だが、残りの3割はエルフやら魔族やら獣人やらがいる。

 エルフ耳長い!美人!

 魔族ツノ生えてる!

 獣人はケモミミ!シッポ!

 イメージ通り過ぎる。

 龍星の話からすると、異種族は地球で言う外国人の様な扱いらしい。

 純粋な日本皇国の国民は人間しかおらず、外国にはエルフの国、魔族の国、獣人の国、日本皇国以外の人間の国などがあるらしい。

 ただ平和もかなり長いので、それぞれの血もかなり混じっているとのこと。

 素晴らしいな、異世界!


 いかんいかん、渋谷には杖を買いに来たんだった。

 目的を見失うところだった。

 というか、こいつは茜ちゃんの容姿のことを普通と言っていたので、もしかしたら茜ちゃんの容姿は異世界では平均的なのか?とも考えたが全然違った。

 普通に最上位だ。街行くエルフはイケメンや美人が多いが、茜ちゃんはそれより上である。

 さっきからすれ違う男が殆ど茜ちゃんに見惚れている。

 恐らく俺が居なかったらナンパの嵐だろう。というかさっき俺がいてもナンパされかけた。

 そんな茜ちゃんを普通と宣うこいつは完全に目が腐っている。それとも一緒に生活し過ぎて慣れてしまっているのだろうか。わからん。

 だがこれは優★越★感がハンパない。

 こんな美人が毎朝起こしてくれるんだぜ?どうだ、お前ら羨ましいだろう。


「やっぱり渋谷は人が多いわね。あんまり好きになれないわ」


 確かにな。俺も人混みは好きな方ではない。

 まあ東京に住む以上は仕方ないだろう。

 そうだ。


「はぐれたら困るな」


 そう言って左手で彼女の右手を握る。手ェちっさ!柔らかっ!


「!!!りゅ、龍星!?」

「嫌か?嫌なら離すが」

「い、嫌じゃ…ない…けど」

「とりあえずさっさと杖だけは買いに行こうぜ。その後ゆっくり服とか見よう」

「…うん」


 茜ちゃんは恥ずかしさの余り俯いてしまっている。

 ここは俺が手を引いて店に行こう。

 店の場所は脳内マップ(龍星)が自動で教えてくれる。

 ただ手を繋いだ辺りからやたらと煩いけど。


 -----


「いらっしゃいませ」


 ここが魔法用品店か。

 店内はシックで高級そうな雰囲気が漂っている。


「皇国魔法学園に入学するので杖が見たいんですが」

「御入学おめでとうございます。どうぞこちらへ」

「ありがとうございます」


 店員に案内されてカウンターへ座る。


「見本をお持ちしますので、少々お待ち下さい」


 店員はそう言って店の奥に引っ込む。


「ね、ねぇ」

「どうした?」

「あの、手…」


 手?ああ、そういえば席に座っても手は繋いだままだった。忘れてた。

 嘘だ。

 茜ちゃんの手が柔らかくて離したくなかっただけだ。

 店の中でイチャイチャするならまだしも、ただ手を繋いでいるだけだ。

 どう見ても微笑ましいカップルだろう。

 でもまあ確かに、席に座ってまで繋いでいるのも少し変かもしれない。


「あ、ごめんな。大事な杖だしな。真面目に聞くか」

「う、うん…」


 そう言って手を離す。

 うーん、どう見ても若干残念そうですね。

 決して口には出さないだろうが。


「お待たせしました」


 店員が杖の見本を何本かと紅茶を持ってくる。


 -----


「大体この様な感じですね。基本的に性能は値段に比例します」

「なるほど。個人の属性とかは関係ないのですか?」

「各属性専用の杖もございます。ですが、そちらはその属性を威力を伸ばす反面、それ以外の属性の威力が極端に落ちます。お客様はこれから魔法を習う学生でいらっしゃいますし、各属性専用の杖は進路や方向性が決まった後に揃えるのが一般的かと」

「確かに、今属性を決め打ちするのは可能性を狭めますね。わかりました、汎用で一番高い杖を2本下さい」

「えっ!!ちょっと!私こんなに高いの買えないわよ」


 今まで大人しく真面目に話を聞いていた茜ちゃんが即座に反応する。

 だが抜かりは無い。


「大丈夫だ。金は全部俺が払うし、親父に許可は取ってある」

「で、でも…こんなに高いのに」


 確かに杖は高い。一番安くて20万、買おうとしてる一番高いのは150万だ。

 相場を聞いてなかったら目ん玉飛び出していただろう。

 だが、ここに来るまでに父親に連絡したら二つ返事で了承してくれた。茜ちゃんが起こしに来ることも知っていたし、家族ぐるみの付き合いなんだろう。


「俺の世話をしてくれたお礼だってさ。貰っとけ貰っとけ。まあプレゼントが親父の金からってのはちょっと情けないが…」


 だが今の俺は学生だ。親のスネを齧るのは仕方がない。そこは割り切るのだ。

 それに、龍星も杖のプレゼントには同意していたしな。


「そっか…うん、わかった。ありがたく使わせて貰う」


 大変素直で宜しい。


「おっしゃ。じゃあ2本でお願いします」

「かしこまりました」


 さて、目的は達成したし、デート再開と行きますか。


 -----


「今度おじ様にお礼言わせてね」

「ああ」

(父は多分来年まで帰って来ませんよ)

(そうなのか。じゃあ電話だな)

「あー、親父は来年まで帰ってこないな。だから今度電話する時に変わるよ」

「わかったわ」


 茜ちゃんはとても嬉しそうだ。喜んでいる美人を見るのはこちらも嬉しくなるな、うんうん。

 ただ次は俺が稼いだ金で渡したいところだ。生活費はスネを齧りまくるとしても、プレゼント代くらいは稼ぎたい。男の甲斐性だな。


(なあ、なんかいいアルバイトないか?)

(アルバイトですか?魔法学園に進む殆どの方は家庭教師をやるみたいですが…)

(家庭教師ね。確かに割の良いバイトだ。だが学力は大丈夫なのか?自慢じゃないが俺はそれほど頭良くないぞ)

(僕のこと馬鹿にしていませんか?一応、皇国魔法学園は日本トップの学園なんですが…。いや、失礼しました。昌一さんはこの世界の人ではないんですからご存知ないのも当然ですよね)

(なんと!知らんとはいえ、そりゃすまなかった)

(いえ、気にしてませんよ)


 この世界の高校卒業後の進学の道は、魔法学園と学術学園、それと専門学校が主流らしい。

 学術学園がいわゆる普通の大学で、専門学校は地球と同じだ。

 ただ魔法学園は圧倒的に人気が高く、進学希望者の殆どは魔法学園を受験するとのこと。まあ確かに魔法使いたいもんな。俺だって使いたい。

 その中で皇国魔法学校はトップ校。

 これはアルバイト代にも期待出来るぜ。

 しかし、龍星は魔法を学びたくて魔法学園に入学した訳だしな。あまりアルバイトに力を入れ過ぎて学園生活が疎かになるのは可哀想だ。ここら辺は応相談だな。

 まあその話は帰ってからでいいか。


「茜」


 そう言って俺は手を差し出す。


「ん?何?」

「いや、デートの続きだろ」

「あっ…」


 おずおずと手を差し出す茜ちゃん。

 よし、今度は。

 恋人繋ぎだ。

 何やらまた脳内が煩いなぁ。

 茜ちゃんは何も言わずに受け入れているというのに。まあさっきよりも更に恥ずかしがっているけど。


「とりあえず服でも見に行くか?」

「う、うん」

「実はちょっとこの格好は堅苦しいなと思ってたんだ。茜のセンスでコーディネートしてくれないか?」

「えっ?いいの?」

「ああ、茜のセンスなら信じられる」


 出かける前に思ったのだが、龍星の服は全てかっちりしている。このまま超高級レストランにでも入れる身綺麗さだ。まあお坊ちゃんだから当然と言えば当然だし、品質はもちろん素晴らしいのだが。

 しかし、俺のようなザ・一般庶民からするともう少しラフな格好の方が気が楽だ。

 更に茜ちゃんは普通に若者らしい服装だし、今のままだと茜ちゃんとの差でかなり浮いている。

 それに俺はこちらの世界のセンスに自信がない。なにせ今日来たばかりだからな。

 ならば茜ちゃんに見繕って貰うのが正解だろう。


「わかった。確かにこのままだとけっこうチグハグだしね」

「やっぱり茜もそう思ってたか」

「私服の時はいつも思ってるよ。けど私はそんな高いの買えないし」


 茜ちゃんも同じことを思っていたようだ。


「今まで気づかなくてごめんな」

「別にいいよ。その格好の龍星も、か、かっこいいし…」


 おやおや、好かれてるなぁ俺。いや、俺じゃなくて龍星だが。

 この朴念仁も今の言葉で何か気づくかね?


(この格好は駄目なんでしょうか。いつも外商さんから購入しているので知りませんでした)


 駄目だこいつ。

 それにしても外商か…。やはりとんでもない金持ちだな。


 それからたっぷり2時間半。俺は茜ちゃんのコーディネートに身を任せた。

 昼飯も取ってない。

 買ったのは10アイテム以上。

 その中から適当なものをその場で着替えた。

 うん、やはり茜ちゃんのセンスに任せて正解だな。

 バッチリ似合っている。

 龍星は疲れたのか既に寝ている様子。

 お前何もしてないだろ。

 しかし、龍星が寝ていても身体には特に影響がない。これは新しい発見だ。

 逆に龍星が起きている状態で俺が寝るという検証も必要だな。


「ありがとな。やっぱり茜に任せて良かったよ」

「ううん。私も楽しかったし」

「遅くなっちゃったけど、昼飯行こうか。何食べたい?」

「そうだなー。けっこうお腹空いたし、がっつりいきたいかも」

「がっつりか…。ハンバーガーとかどうだ?」

「あっ!じゃあ最近出来たあそこ行きたい!けっこう近いよ。話題になってるけどこの時間なら大丈夫だと思う」

「おっけー。じゃあ案内してくれるか」

「うんっ!」


 あー甘酸っぺー。青春ってやつだな。

 まさか再び大学時代みたいなことが出来るとは。

 しかも隣はめちゃくちゃ可愛い女の子。

 異世界様々ですな。


 幸い店は大分空いていて楽に座ることが出来た。

 ハンバーガーもかなりデカくて食べ応えがある。うむ、普通に美味いな。


「でも今日は本当にびっくりしたわ」

「ん?何が?」

「いや、龍星のことよ。3日前に会った時と全然別人なんだもん。頭を打ったか、危ないクスリに手を出したのかと思っちゃった。おじ様とおば様に連絡しなきゃって本当に考えたもの」


 鋭い。

 全然別人なんだよぁ。

 理由は憑依だけど。


「人聞きが悪いな。けどさっきも言ったけど、もう来週から学園生だしな。せっかくだし学園デビューして友達沢山作ろうかなと思ってさ」

「学園デビューね…。そっか、でもいいと思う。龍星の良いところは変わってないみたいだし」

「良いところ?」


 どこだろう。まだこいつと会って?初日だし、真面目なんだなくらいしかわからないな。

 でも俺は真面目とは程遠いしな、きっと別のところなんだろう。


「優しいところ、だ…よ…」


 自分で言っておいて、自分で照れている。

 そんなに照れるなら言わなきゃいいのに。

 だが女の子にここまで言わせておいて、そのままなのは男が廃るというものだ。


「…めちゃくちゃ照れるな、それは。だが優しさで言えば茜の方が断然上だろう。毎日起こしに行くなんて俺には絶対に不可能だ。たとえ相手を好きでもな」

「っっ!そ、それは…」

「冗談だ」

「うう…やっぱり優しくないかも」

「だが感謝はしているのは本当だ。ありがとう。これからも起こしてくれるか?」

「はぁ…もう日課みたいなものだしね。いいよ」


 うーむ、この大事な場面で寝ている鈍感男にはもったいないほどの良い女の子だ。

 逆に何故これほどの女の子が龍星を好きになったのだろう。それとも龍星が好きだから、これほどの女の子になったのだろうか。

 もしかして昔、茜ちゃんと結婚の約束とかしてないだろうな。…ありうるな。後で確認しよう。

 だけどなぁ、こういう場合大抵男は忘れてるのがお約束なんだ。期待はしないでおこう。


 ふと思いついて、ポテトを茜ちゃんの口元に差し出す。


「何?ま、まさか…」


 そう、そのまさかよっ!

 キョロキョロと店内にまばらにいる人の視線を確認し、意を決した様に口を開く茜ちゃん。

 既にその唇はポテトの油なのか、グロスなのかわからないくらいにはテカテカだ。

 小さく開かれたその口とは反対に、羞恥に悶えるようにギュッと目は閉じられている。目を閉じたら食べられないでしょうに。

 入れろってことですね、わかります。

 眼福なのでずっとそのまま見ていようかと思ったが、流石に可哀想なので早めに口に入れてあげる。


「はい、あーん」


 お決まりのセリフを呟き、ポテトを置いて指を離そうとしたその瞬間、


「いって!」


 指が噛まれた。

 もちろん怪我しない程度に極々弱くだったのだが、想定外の事態に軽く声を上げてしまった。

 やられた…。

 精神的敗北である。


「ふ、ふん。私だってやられっぱなしじゃないんだから」


 認めよう。確かに10歳近く年下の女の子だと思って甘く見ていた。はっきり言って舐めていたのである。

 だが、このまま終わるわけにはっ!


「あー」


 今度は俺が口を開ける。だが俺は目を閉じない。

 明らかに罠だ。当然、敵も警戒している。


「噛むんでしょ」

「そんなことは神に誓ってせん。大体、二番煎じなど負けを認めたようなものだ」

「わかった…信じるわ」


 ゆっくりと口にポテトが近づけられる。

 口では信じると言いつつも、信じきれていないのだろう。自分が行った行為だからな、やったらやりかえされると思ってしまうのは当然だろう。

 だが、俺は決してこの白い指を噛んだりなどしない!


「はい、あーん」


 茜ちゃんもこのセリフを言ってくれるみたいだ。

 嬉しい。この行為はこのセリフが無かったら嬉しさが半減してしまうからな。

 だが今の茜ちゃんは敵である。

 昌一、容赦せんっ!

 ポテトが口の中に入った瞬間!


 ペロッ


 やった!やってやった!

 帝王はこの昌一だッ!

 依然、変わりなくッ!


「きゃっ!」


 今日一番可愛い悲鳴をあげ、指を引っ込める茜ちゃん。

 うむ、美味、実に美味である。いや、ポテトのことだよ?決して他意はないのである。


 何をされたのか気がついた茜ちゃんの表情が暗黒に染ま……らなかった。

 軽く涙目だ。

 完全にやり過ぎた。


「こ、ごめん…」

「べっ、別に…嫌だったわけじゃ…」


 うん、わかってる。いきなりでびっくりしただけだよな。

 しかし、気まずくなってしまった。勝負に勝って、試合に負けている。

 何か話をして話題を逸らさないと。

 だが、茜ちゃんとは今日会ったばかりで趣味嗜好がほぼ分からない。また、迂闊な話をして俺が龍星で無いことを疑われるのも良くない。

 となると、やはり魔法学園の話か。


「あ、茜はさ、受講するのを決めてる講義はあるか?」

「えっ?…講義かぁ。日常生活でも使えるし、生活魔法の講義は受けようと思ってる…かな」


 やはり良い娘である。

 俺が空気を変えようとしてるのを察して、話に乗ってくれているのである。

 こんな娘が結婚してくれたら…。

昌一が劇中で『こいつ』と言ってるのは、基本的に龍星のことです。

わかりにくかったら申し訳ないです。

また、昌一が口語では茜と呼び捨てにし、地の文で茜ちゃんと言っているのは、龍星という役を演じているから(演じられているのかは不明)です。

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