4/4 武活動
昨夜、龍星と俺達の今後について話し合い、覚悟を決めてハーレムを作ることを決意した。
今日は学園生活三日目。今は武術活動を行う射撃訓練場に来ている。
武術活動、武活はいわゆる普通の部活とは違い、講義中に行われる。同学年の全クラスが同じ時間に講義を受け、同じ武器に分かれて武活を行う。
俺は刀か銃で悩んだ挙句、銃にした。
俺の好みというのもあるが、龍星の適正も銃が一番高かったからだ。
と言っても龍星の戦闘センスはかなりのもので、どれをやっても上手いのだが。
やっぱり銃を撃てるのは憧れちゃうよな。
使用銃は貫通力の高いサブマシンガンとハンドガンである。
ちなみに、茜は薙刀、亜莉紗は弓、クリスは短剣、信長は剣。
「おぉーほっほっ、見つけましてよ、咲ヶ峰龍星!貴方が銃を選んだのは幸運でした。入試では私の勝ちでしたが、銃でも私のほうが上ということを思い知らせて差し上げます」
なんだ?この金髪縦ロールお嬢様が勝手にライバル認定している主人公に言いそうなセリフは。
声のあった方を見ると、やっぱり金髪縦ロールの美女が俺に近づいて来ていた。
薄々感じていたし、龍星にも昨日話したが、これでもう4人目だ。たぶんもう間違いない。
幼馴染の茜、食パン少女の亜莉紗、そしておそらく攻略対象の留学王女のクリスに続いての4人目攻略対象はこの娘だ。
おそらく龍星のことを好きになる女性、つまり攻略対象は、エロゲやギャルゲにおけるテンプレ要素を含んでいる。
これは大きなヒントだ。
いくら何でもノーヒントで女性たちを救えというのは無理だろう。
だが、金髪縦ロールのお嬢様か。実際に会うといきなりこんなセリフを吐く人間とコミュニケーションを取るのは非常に気が進まないが、頑張ろう。
というか、向こうは俺のこと知ってるみたいだが、俺はこの娘のことを知らん。
いや、正確に言えば、名前も容姿も知っている。
入学式で新入生代表挨拶をしていた娘だ。つまり首席合格。
たしか名前は、霧生院 麗華。
金髪縦ロールの名前、テンプレすぎない!?と思ったからよく覚えている。
だが、知っているのはそこまで。
クラスは違うし、会ったことが無い。
入学式の後、龍星にも聞いたので間違いない。
「たしか霧生院麗華さん、だったか。代表挨拶で見ましたが、どうして俺のことを知ってるんです?たしか会ったことはないと思いますが」
「私のことを知らないですって?今まで私がどんな想いで……。まあいいでしょう、首席は私です。つまり最後に勝ったのは私ということです。霧生院家に相応しい寛大な心で許して差し上げましょう。そして、先ほども言いましたが、銃で勝つのも私です。今度こそ覚えておいてくださいませね」
質問に答えてくれない…。
「いや、あのだから、どうして俺のことを知ってるんです?」
「ふんっ、貴方が知らないことを私がわざわざ教えて差し上げる義理はございませんわ」
さっき霧生院家に相応しい寛大な心って言ってたじゃん…。
まあいいや、さっき主席は私で、最後に勝ったって言ってたな。
つまり勉強関係のライバルってことか。
そんで龍星が知らないってことは、同じ学校じゃないってことだろう。
ということは、全国模試か。
霧生院麗華は模試で龍星に負けてライバル視してたってことかな?
でも龍星は高校時代の模試が全て1位ってわけじゃない。なら龍星より点数が上回った時もあると思うんだけどな。しかも模試だとしたら俺の顔を知ってるのは何故だ?
まあここら辺は追及しても怒らせるだけだろうからわざわざ聞かないが。
しかし、ライバル視されてるキャラはどう攻略するのが正解なんだろう。
仲良くしようと思っても拒否られる可能性があるし、かといって銃で勝ったらまたライバル視が強まるし、負けたら格下扱いされて終了だ。
ん?考えてみると意外と難しいかもしれない。
ゲームならイベントでピンチに陥った相手を助けることで認めてくれたりするんだが…。
そんなに都合よくピンチにならないだろう。
うーん、まあ正攻法でやってみるしかないよな。
「そうか。まあいいや。初対面だし、改めて自己紹介だ。俺は咲ヶ峰龍星。龍星でいいぞ。よろしく」
「……霧生院麗華ですわ。生憎、敵と握手する趣味はございませんわ」
敵って…。
しかし、初対面で握手もしてくれないとは。
マジで霧生院家の寛大な心はどこ行ったんだよ。
攻略は前途多難かもしれない。
ここで講義開始のチャイムが鳴り、先生がやってくる。
「よし、始めるぞお前ら。まずは二人一組になれ。その二人で的当てを行う。得点を競うからそのつもりでな」
お?これは霧生院とペアになるチャンスか?
いや、でも勝っても負けても関係は進まなそうだし、ここは別の人と組んだ方がいいか?
どうしよう。
なんてことを考えている間に、霧生院に先に声を掛けられてしまった。
「咲ヶ峰龍星、私と組みなさい。ここで雌雄を決しますわよ!」
「……わかった、組もう」
-----
そうして的当てが始まった。
俺らの番は最後になった。
暇なので、麗華に話しかけよう。
少しでもお近づきにならないとな。
「なあ、霧生院は銃歴はどのくらいだ?」
日本は平和なので、武器を扱ったことのある生徒はそう多くない。
更に銃は免許制で、合計60時間の講習を行う必要があり、学園でも銃術希望者は他の部活に比べ最小だ。
だが、麗華はお嬢様だ。……たぶん。霧生院家とか言ってるしな。
もしかしたら昔からやっているのかもしれないと思って聞いてみた。
ちなみに麗華が持っているのはアサルトライフルだ。
お嬢様らしく装備は立派だけど、女の子にはデカいんじゃないの、その銃。
他の女の子が持ってきてるのはサブマシンガンとかだよ。
「昨年免許を取得しましたわ」
がーん。全然違った。初心者もいいとこだ。どう考えても勝ってしまう。
というか高校3年生の受験前に免許取得って何考えてんだこの娘。
でも勝負をする以上、勝敗はあることだからな。
負けて格下認定されるよりはいいと考えよう。
「そ、そうか。実は俺は8歳のころからやっててな」
「そうなんですのね。ですが、免許を持っているのは私も同じ。負けるつもりなどさらさらありません」
うーん、かなり頑固だ。
まるで攻略のとっかかりがつかめない。
「なあ霧生院、どうして俺をそんなに敵視するんだ。俺は霧生院のことを敵だなんて全く思ってないぞ」
「貴方には、私の悔しさはわかりませんわ」
「ああ、わからない。だから聞いている」
「…まあ、いいでしょう。入試では私が勝ったのですから。教えて差し上げますわ。私は高校時代の全ての全国模試で、全て貴方より順位が一つだけ下でした」
え?マジ?
全ての全国模試で全て龍星より順位が一つだけ下だった?
龍星が一位だったときは麗華が二位で、龍星が十位だったときは麗華が十一位だったってこと?全部?
そんな偶然ある?
呪いレベルじゃん。
でもそれならこの嫌われようもわかる気がする。
あとこの因縁、麗華は100%攻略対象だわ。
「そ、そうだったのか。それは知らなくて済まなかった」
「別に貴方に謝ってもらう必要はありません。それより、私が怒っているのは入試当日のことです」
「入試当日?どういうことだ」
「私が入試を受けていた教室では、最後のテストの時、具合が悪くなり途中退出した男子生徒が1人おりました」
あ、やばい。
龍星のことだ。
龍星は自分の不甲斐なさを嘆いていたが、俺の予想では龍星が首席を取れなかったのはたぶんそのせいだ。
「入試の時はわかりませんでしたが、入学した後貴方を探し当てた時、あの男子生徒が貴方であることを知りましたわ」
やっぱり…。
「体調不良とはいえ、私が首席合格した事実は変わりません。ですが、それでは私の気が済みませんの。ですから、この講義でも必ず貴方に勝ってみせますわ」
ずっと僅差で負け続けて、最後にやっと勝ったと思ったら相手は体調不良でほぼ不戦勝。
そりゃあやるせないよ。
だが、これで安易に負けてあげるわけにもいかなくなった。
「わかった。でも俺も10年やってきたプライドがある。去年免許取得した霧生院に簡単に負けてやるわけにはいかないな」
「望むところですわ」
-----
結果は当然だが俺の圧勝だった。
霧生院はめちゃくちゃ悔しそうだったが、同時に新たな目標を見つけたみたいでやる気に満ち溢れている。
「霧生院、挑戦はいつでも受けて立つ。またやろう」
「今回は完敗です。ですが、次こそ勝ってみせますわ」
俺たちはがっちりと握手して、再戦を誓ったのだった。
うん、ファーストコンタクトとしてはいい感じではなかろうか。
ライバルというより、敵として認識されていた印象もだいぶ弱まった気がする。
これからも霧生院はことあるごとに俺に勝負を挑んでくるだろう。
それを繰り返していくうちに、仲良くなれるきっかけもあるだろう。
簡易人物紹介
霧生院麗華
18歳 犬獣人族
金髪縦ロール
名家霧生院家のお嬢様だが、財力は咲ヶ峰の方が圧倒的に上
高3の夏休みという大事な受験シーズンに銃の免許を取得するという剛の者