序章
俺はエージェントだ。
でも、ただのエージェントじゃない。
高校三年生のエージェントだ。
俺がエージェントになったのはつい一週間前のことだ。
なぜならこの「パンデミック」状態の世界を感染症から守るものを一切持たずに三年間生き延びてきたからだ。
いわば、俺には感染症に対して対抗を持っているってことだ。
でも、菌に対して対抗を持っているやつをエージェントなんかにするのか?って思うだろ?
それもしっかり理由があるのさ。
その理由を話す前に今まで何があったか話そうか...
世界がパンデミック状態になったのは俺が中学3年のときだ。
俺には好きな人がいて、卒業式が終わったら告白しようかと思ってたんだけどさ...
勇気がなくてできなかったんだ...残念...と思いきや!
好きな人から話しかけられたんだよ!いぇ~い!とか思いながら話を聞いてると
今日の三時から家に来てほしいとのことで、俺はおかしいぐらいテンションがあがってた。
あ、そうそう自己紹介をしていなかったな。
俺の名前は、
『神崎 快人』で、俺の好きな人が『河野 唯』だ。
俺は唯の家に行くことになったんだが...
そこで事件が起きた
三時までけっこう時間があったので、家に帰ってソファーの上で寝転がっていた。
「快人、ソファーの上で寝転がらないで。私が座れないじゃんか。」
姉の声だ。
俺の家庭は早くに母を亡くして、父は今どこにいるかわからない。
父は市役所で働いていると母が言っていたが、俺が1歳のときに行方不明になった。
警察に行方不明届けを出したが見つからなかった。
で、母が俺と姉を育ててきたんだが、病気になり、俺が五歳のときに死んだ。その時、姉は15歳だった。
姉の名前は
『神崎 澪』だ。澪姉は受験シーズンにもかかわらず俺の世話をしてくれた。
で、今があるわけだ。
澪姉がテレビをつけるとニュースをやっていた。
「今、アメリカで新型のウイルスが流行しています。
ウイルスに感染した場合、三日で身体に異変がおこり始めます。
感染してから四日後には皮膚がはがれ落ちてしまうそうです。
感染して五日後には憑依されたかのように攻撃的になります。
アメリカでは対策のため感染者を隔離し、壁を作り外にでられないようにしているようです。
アメリカ人は壁の内側をブラックゾーンと呼んでいるそうです。」
俺はこのニュースを見て、
「海外のことなんてどうでもいいわ。日本でなにもおきないんだからどうでもいいじゃん。」
そんなことを言っていると澪姉が、
「そんなことないでしょ。もしかしたらウイルスが日本にくるかもしれないじゃん!」
「そんなことあるわけねーよ。」
と、俺はどーでもいい感じで聞いていた。
このあと、思ってもいなかったことが起きるまでは...
三時前になり、家を出た。唯の家は俺の家からまあまあ遠いところにある。
俺はずっと自転車を走らせていた。
10分ぐらいたっただろうか?
いつもは人も車も少ない道なのだが、今日はよく見かける。
今日はなんかあるのかな?と思い道を進んでいると、異変に気がついた。
みんな俺の進む方向とは反対の方向に進んでいた。
なぜだ?と思いながらも自転車を走らせていると突然
ドーーーーン!
爆発音が聞こえてきた!
あっちは唯の家のほうだ。
俺は全力で自転車をこいだ。
「唯!無事でいてくれ!」
俺はポケットに入れていたスマホを出して唯に電話した。
プルルルル...
プルルルル...
プルルルル...
ただいま電話に出ることができません。
「なんででないんだよ!」
スマホをポケットに入れ、
再び自転車を全力でこいだ。
「まさか死んでないよな?」
そんな不安なことを思いながら向かっていた。
街についた。
自転車をおりて、街を見た
俺はその場でしゃがみこんだ。
ガラッ...
ドサッ...
俺の目の前には見たこともない場所があった。
建物は崩れ、そこら中に死体が転がっていた。
絶望していると声が聞こえてきた。
「その男を連れていけ!」
「了解しました。」
「ほかに生きている奴がいないかさがせ!」
声の聞こえる方向を見ると、男たちが見えた。
いや、全員男なのかは確認できなかった。
なぜならガスマスクを付けていたからだ。
ほかにも、防弾チョッキ、腰にハンドガンとナイフ
手にはアサルトライフルを持っていた。
見ているとまた話しだした
「キャプテン!生きている人間を発見!」
「ダメだ。そいつはたぶん感染して五日間たっている。」
「了解です。」
バン!
男は躊躇なく頭を狙って撃った
「排除しました。」
「了解。」
おいおい嘘だろ...
目の前で人が死んだ。
人なのか?感染して五日間たってるとかいってたな。
俺はニュースを思い出した
「感染して五日後には憑依されたかのように攻撃的になります。」
おいおいおいおいおい!
まさかほんとにウイルスが日本まで来たってのか?
プルルルル...
プルルルル...
電話が鳴った
俺は唯かと思いスマホの画面を見た。
唯ではなかった...
澪姉だ
「快人!大丈夫?凄い音がしてた。今、ニュースにもなってる。速報ですって言って。」
「俺は無事だ。でも友達が...」
「友達?唯ちゃんのこと?」
「なんで知ってんの?」
「それぐらいわかるよ。姉さんなんだから。」
「そんなことより電話が繋がらないんだ。」
「どうするのよ?」
「唯を探す」
「そっちの状況は?」
「装備した人が約15人。そこら中に崩れた建物と死体がある。」
「悲惨な状況ね...」
「あと感染の疑いのある人がいるかも。」
「感染?なにに?」
「さっきニュースで見たやつだと思う」
「え?ほんとにいってるの?」
「うん。」
話していると一人俺の方に向かって来た
「澪姉、電話切るよ。一人こっちに来る。あいつらがいい奴らだとは思わない。」
「なんで?」
「軍ならつくのが早すぎる。」
「わかった。絶対生きててよ!」
「うん。」
電話が切れた...
「唯どこにいるんだ?生きてるのか?」
そんなことより、こっちに向かって来る奴をどうにかしないと。
自分が対応できる相手なのか?
俺は格闘技をやっていて去年全国大会1位だったが
さすがに装備した大人に勝てるわけがない。
銃だって持っているし...
考えろ...
乗り切るんだ...
唯を探さないと!
考えろ...
考えろ...
考えろ...
やっぱダメだ...逃げれない
そこら中に装備した奴らがいる。
もしばれたらたぶん即殺されるだろう
イチかバチか仕掛けてみるか!
他の奴に見つからないようにあいつだけを倒す!
俺は近くにあった小石を投げた。
「ん?なんだ?」
よし!食いついた!
こっちにこい!
少しずつ近づいてきた。
「おい、誰かいるのか?」
周りが森でよかった。
森なら人目を気にせず倒せる
相手が森に入ってきた...
よし!今ならいける!
相手の背後に回り込み、膝裏を蹴り地面に膝をつかせ、腰についているナイフを取り、首を締めた。
ナイフを相手の首にかざして質問した
「お前は何者だ?」
「ま、まて殺さないでくれ!」
「大きい声を出すな。もう一度聞くぞ。お前は何者だ?」
「お、お、俺は『白神 達也』だ。[Freeze bird]のメンバーだ。」
「フリーズバード?凍る鳥?何なんだそれは?」
「この事件を起こした犯人だ。」
「なぜ一人男を連れ去った?」
「あいつは研究者だ。もっと感染力の強いビフェイラストを作るんだ。」
「ビフェイラスト...菌の名前だな。」
もうこいつに用はないな...
さすがに殺すのはやめておこう
俺は達也と名乗る男を締め落とした。
「やばいぞ!ゴーストだ!」
ゴースト?なんだそれは?
見た先には感染者?らしき人がいた。
感染者はゴーストと呼んでいるのか...
「あぁああぁぁぁああぁあ...」
うめき声をあげながらFreeze birdのメンバーたちに襲い掛かっていた
「撃て!」
ズババババババババッ
バンバンバンッ
銃声が鳴り響いていた
だいたいわかってきたぞ...
とにかく唯を探さないと。
唯...どこにいるんだ......?
生きててくれよ...絶対に探し出すからな!