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「そろそろちゃんと部活にしないとなー」
投扇興もせずにダラダラしている状況に、さすがのおうぎも危機感を覚えたらしい。
「ずいぶん今更ね……」
「だってさー、やっぱり投扇興部作りたいし」
このままでは、ただ放課後に集まって遊んでいるだけだ。
もちろん投扇興をやることもあるのだが、おうぎはそれでは納得できないらしい。
「認められるには部員が五人いればいいから……あとたった一人でいいんだけどなー」
「その最後の一人が見つからないから困っているわけだけれど」
乙女、薫子と順調に部員が増えていったから感覚がマヒしていた。
新しい部活を作ると聞いて、積極的に参加してくれる人も滅多にいないだろう。
しかも投扇興というマイナー競技である。
入ってくれる物好きなんて皆無だ。
となると、部員を五人集めるのは難しい。
「実績作って認めてもらう方法も失敗しちゃったしなー」
「あれは、やる前から無謀だったわ……」
部活を作るには、部員五人か実績があるかのどちらかだけ。
それ以外の方法で承認をもらうことはできない。
けれど、どちらも可能性は低い。
だからこそ、おうぎは薫子に泣きついていた。
「薫子さーん、何度も言うけど、生徒会なんだからどうにかできないの!?」
「何度も断って悪いんだけど、職権乱用はちょっと……」
「でも、やろうと思えばできるんでしょ!?」
「うーん……どうかな? 私、生徒会って言っても、ただの書記だから」
「次期生徒会長ってウワサじゃん!」
「それはみんなが勝手に……」
困ったような、照れているような、微妙な表情の薫子。
反応に困っていると、おうぎがさらに言い募る。
「今の会長はお飾り会長だから、業務は薫子さんがほとんどやってるって話だし!」
「まぁ……それは間違ってないけど」
この情報に、乙女はこの前のことを思い出していた。
「そういえば、生徒会に乗り込んだ時、お姉ちゃんしかいなかったね……」
「あぁ、おうぎちゃんが「たのもー」って言いながら入ってきた時の」
「そうそう、すごかったよね。道場破りみたいだった!」
楽しそうに語る二人だが、葵は呆れ気味だ。
「今時たのもーなんて、おうぎくらいしか言わないわよ」
と、こんな話をしていたからだろうか?
教室のドアが勢いよく開けられた。
「たのもー!」
「他にもいたわ!?」
ビックリしながら、ドアに視線を向ける。
そこには小さな女の子がいた。
小柄な乙女よりも、さらに小さい。
小学生くらいに見える。
けれど、その服装は乙女たちと同じ制服姿で、高校生ということがわかる。
その女の子は、迷いなく乙女の前まで進んできた。
「花里乙女、わたしと勝負しなさい!」
「え……えぇ!? どういうこと!?」
いきなりのことに理解が追いつかない。
みんながみんな困惑している。
その中で、おうぎだけが何か閃くように目を輝かせていた。
「あ、五人目見っけ!」