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55 いつもの風景


 とある放課後のことである。


 乙女たちは部活という名目で教室に集まっていた。


 もはや見慣れた光景に、おうぎは感慨深くなってしまう。


「なんか、いつもの部活風景って感じになってきたなー」


 しかし葵が呆れたようにため息を返す。


「まだ部活って認められてないでしょ」


「そうなんだけどさー」


 部活を作るには、部員があと一人足りていない。


 けれど、おうぎに焦る様子はなかった。


「なんか順調に部員増えてるし、なんとかなるんじゃないかな?」


「そんなにうまくいくわけないでしょ……」


 呆れながら葵は部員募集のチラシを作り続けている。


「あのさ、いつもチラシ作ってるけど、ちゃんと受け取ってもらえてるの?」


「そ、それは……っ」


「そもそも、配ってるところ見たことないんだけど?」


「う……」


「葵が知らない人にチラシ渡せるとも思えないし」


「悪かったわねっ! そんな度胸ないわよっ!?」


「逆ギレ!?」


「そもそもおうぎも手伝いなさいよっ! そっちが部活作るって言い出したんでしょ!」


「しまった……言い訳できない!?」


 おうぎと葵が、そんなことを言い合っている横では、


「乙女ちゃん、そこのコンビニで新しいお菓子が出てたの。食べる?」


「いいの? 食べる食べる」


「はい、あーん」


「えぇ、いいの!?」


 予想外の事態に、乙女は頬を染めて息を荒げる。


「そんなのよくないよ……よ、よくないけど、お姉ちゃんがどうしてもって言うなら……」


 胸の前で、きゅっと拳がにぎられる。


「お姉ちゃんが誘うからいけないんだよ……もう、どうなっても知らないからね?」


 なとどつぶやきながら、薫子に差し出されたお菓子を口に運ぶ。


「んっ……お姉ちゃんの、おいしいよ」


 あまりの光景に、おうぎはドン引きである。


 けれど、薫子はそのおかしさに気づく様子もなく笑み浮かべている。


「お菓子食べてる乙女ちゃんもかわいいな~……」


 ただただ、年下のいとこを可愛がっている。


「そんな……私なんかよりお姉ちゃんのほうがかわいいよぉ」


 対して、乙女は不純そうな様子で息を荒げていて。


「ちょっとおうぎっ! 私の話聞いてるの? もっと真面目にやってよ!」


 すぐに興味がそれるおうぎに、葵が怒りの声をあげる。


 そんな光景を見て、おうぎは力強く頷いていた。


「うんっ、いつもの部活風景だ!」


 嫌な「いつも」である。


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