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49 多数派の意見


 おうぎと葵の関係に息を荒げる乙女。


 これに、おうぎのほうは声を荒げた。


「こっちは真剣に悩んでるんだけど!?」


「あっ、ご、ごめんね。ついクセで……」


「嫌なクセだな!?」


「つ、次からは気を付けるから」


「まったく信用できないっ!」


 とはいえ、乙女のこれは今に始まったことではない。


 おうぎも慣れ始めていた。


 そんなことよりも、気になるのは葵のことだ。


「いつもの葵らしくなかったんだよなー。あたしから逃げるみたいに帰ってったし……」


 悲しそうにつぶやくおうぎに、薫子が予想を立ててみる。


「すごく急いでいたんじゃない? よっぽど大事な用事だったとか?」


「だとしても、何の用事なのか教えてくれてもいいじゃん……」


「それは……言えない事情があったとか?」


「人に言えないような……? 葵、やっぱりなにか悪いことを!?」


「葵ちゃんに限って、それはないような……?」


「でも、もしそうだったら!? 大変だっ、早く葵を自首させなきゃ!」


「おうぎちゃん、落ち着いて。まだそうと決まったわけじゃないから」


「そ、そうだけど……」


 さきほどから、落ち込んだり慌ててたりと、表情が忙しい。


 それくらい葵のことを気にかけているのだろう。


 そんなおうぎの様子を見て、乙女があることを思いつく。


「そうだっ! そんなに気になるなら、葵ちゃんの後をつけてみようよ」


「え? どういうこと?」


「後をつければ、用事がなんなのかわかるよ。今からなら、まだ追いつけると思うし」


 知りたいなら、自分の目で直接確かめればいい。


 単純だが、実にわかりやすい手段だ。


 けれど、おうぎはすぐには頷かなかった。


「そんなの、すぐにバレるって」


「大丈夫だよ。尾行にはコツがあってね、それを守っていれば簡単には気づかれないよ」


「へぇー、乙女詳しいんだ……ま、まさか?」


「え? まさかって、なに?」


「普段から尾行してる!? かわいい子を見かけたら、その子をつけたり……っ!?」


「え……っ!? ……し……してないよ、そんなこと」


「今の間はなんだ!? 乙女、それ完全に犯罪だからっ!」


 おうぎは真剣な表情で、乙女の両肩に手を置いて続けた。


「葵よりも、まずは乙女が自首しようか?」


「ほ、ほんとにしてないってば!」


 慌てて答えるものの、乙女の目は泳ぎまくりだ。


 そのことを誤魔化すように、彼女は話題を戻した。


「ほら、急がないと葵ちゃんに追いつけなくなっちゃうよ。早く行こ」


「……いや、この流れで尾行する気にはならないんだけど」


 共犯者にはなりたくない。


 乙女の余罪を抜きにしても、尾行には気乗りしなかった。


「さすがにやりすぎな気がするし……薫子さんもよくないって思うでしょ?」


 真面目な薫子なら、きっと反対してくれる。


 二対一になれば、乙女だって引き下がるだろう。


 そう予想していたおうぎだが、薫子はカバンを肩にかけて教室の入口に立っていた。


「ほら二人とも、急ぐわよ」


「ノリノリだっ!?」


「それはそうだよ。だって、葵ちゃんの新しい一面が見られるかもしれないしっ!」


「あ、ダメだ……この二人、基本的には同じ思考だった!?」


 数の力で阻止しようとしていたのだが、数の暴力で押し切られてしまうおうぎであった。


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