47 落ち込む理由
「はぁ……」
おうぎは落ち込んでいた。
後から教室にやってきた乙女と薫子は、事情がわからず困惑するしかない。
「……おうぎちゃん、どうしたんだろ?」
「あのおうぎちゃんが、こんなに落ち込むなんて珍しいわね」
「元気だけが取り柄だもんね」
「そうそう。いつもは、ちょっと迷惑なくらいなのに……」
ひどい言われようである。
けれど、おうぎはツッコミを入れる元気もない。
「迷惑……そっかぁ、迷惑かぁ……」
話は聞こえているようだが、怒る気配はない。
それどころか、なにかに納得している様子だった。
「はぁ……」
そして再びため息をつく。
「これは、重症みたいね」
薫子は心配そうにつぶやくと、カバンを手に取った。
そこから、いくつかコンビニ菓子が取り出される。
「おうぎちゃん、よかったら食べる? 今日は少ししかないんだけど……」
これに乙女も慌てて立ち上がった。
「私もなにか買ってこようか!? おうぎちゃん、食べたいものとかある?」
「えー……いや、いいよ」
「遠慮しないで。あっ、そうだ! バナナとかどうかな?」
「あたしはサルじゃないんだけど……」
力なくツッコむ。
おうぎに合わせるようにして、薫子も注意を飛ばした。
「そうだよ。おうぎちゃんだもの、そのくらいじゃ足りないでしょ」
「そっか! たくさんないと、おうぎちゃんも元気にならないよね」
「ここは質より量ね。お腹いっぱいになれば、おうぎちゃんも元に戻るわ」
「じゃあ私、いろいろ買ってくるっ!」
勝手に盛り上げる二人に、おうぎもさすがに落ち込んでいられなかった。
「お腹がすいてるわけじゃないからっ!」
声を荒げるおうぎに、乙女と薫子は信じられないといった様子だ。
「う、ウソだよね……?」
「それ以外の理由がおうぎちゃんが落ち込むなんて……ありえるの?」
「二人とも、あたしのことなんだと思ってるんだーっ!?」