45 一緒なら
「あははっ、葵らしいなー」
これまでの経緯を聞いたおうぎが快活に笑う。
「もう……そんなに笑うことないじゃない」
「だって、中学の時から全然変わってないなーって」
「うぅ……反論できないわ……」
そんな二人のやり取りを見て、乙女が目を丸くする。
「意外だよ。葵ちゃんが人見知りだったなんて……」
乙女はそんなこと、まったく気づいていなかったらしい
けれど葵が言うには、理由があるようだ
「乙女と話すときは、大抵おうぎが一緒だったもの」
「あたしがそばにいると、普通なんだけどなー」
「おうぎちゃんと一緒のときだけ……?」
乙女は頬をそめた。
「はぁはぁ……葵ちゃんかわいい」
「言うと思ったわ!? だから黙ってたのよっ!」
葵は気まずい空気を変えたいのか、咳払いをひとつ。
「そ、そんなことより、二人ともずいぶん早かったわね。課題は終わったの?」
「いや、ほとんど進んでないっ!」
「ダメじゃない!? なんで戻ってきたのよ!?」
「あたしと乙女だけで解ける問題じゃなかったんだよ。だから葵に手伝ってもらおうかなって」
「それじゃあ課題の意味がないでしょ? ほら、早く自習室に……」
自習室に戻るように言おうとしたものの、葵の言葉が途切れる
おうぎがいなくなったら、また上手く会話できなくなるかもしれない
いや、確実にそうなるだろう
「し、仕方ないわね。答えじゃなくて、あくまでも解き方を教えるだけよ」
「やったー! 葵が手伝ってくれるなら、今日中に終わりそうだよ!」
「葵ちゃん、ありがとーっ!」
歓喜の声を上げるおうぎと乙女。
一気に課題を片付けよう、という空気になっていく。
けれど、そこに薫子が割り込んだ。
「課題はもちろんだけど、私は中学時代の葵ちゃんの話がもっと聞きたいな~」
「えぇ!? それはちょっと……」
困惑する葵だったが、薫子に同意する者がいた。
「私も聞きたい! 葵ちゃんのかわいいお話っ!」
乙女が頬を染め、息を荒げて、おうぎに詰め寄る。
二人から要求されて、おうぎもなぜか目を輝かせていた。
「よーしっ、任しといて! エピソードならいっぱいあるからさ!」
ぐっと親指を立てるおうぎに、二人の歓喜の声が上がる。
「私の話はもういいでしょ!? お願いだから、止めてーーっ!!」
対して、葵は悲鳴を上げるのだった