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41 変わらなきゃ


 放課後の教室で薫子と二人きり。


 葵は緊張しっぱなしだった。


 元々人付き合いが苦手な彼女に、会話を上手く回せるはずもない。


(こういう時は、いつもおうぎがいてくれたから……)


 葵は上手く話せなくても、おうぎの横にいれば問題なかった。


 おうぎは誰が相手でも気負いすることはない。


 ぐいぐい話しかけていく。


 だから葵は、そんなおうぎが暴走しないように抑えるだけでよかった。


 ここにもおうぎが居てくれれば、なにも困ることはなかっただろう。


(おうぎ、早く戻ってきて……!)


 反射的に教室の入口に目を向ける。


 けれども、頼りたい人物が現れる気配はなく。


「……」


 うつむいてしまった葵は、


(ううん、いつまでもおうぎに頼ってばかりじゃいられないわ)


 すぐに顔を上げた。


(私ももう高校生なんだし……ひとりで会話を弾ませるくらい……)


 覚悟を決めるように、ひとつ頷く。


(変わらなきゃっ!)


 意気込んで口を開こうとする。


 けれど、慌てて思いとどまった。


(待って。そうやって考えなしに話しかけるからいけないのよ)


 そう、冷静にならなければ。


(薫子さんなら、どんな話がいいかしら?)


 まずは話題を決めて。


(きっと薫子さんなら、こういう反応をするから……私の返事は……)


 しっかりシミュレーションをして。


(うん! これなら、きっと話も続くはずだわ)


 これまでとは違い、万全の準備をして葵は口を開いた。


「あの、薫子さん」


「ん? どうしたの、葵ちゃん?」


 薫子から笑顔を向けられて。


「あ、いえ……その……」


 頭の中が真っ白になってしまった。


 いろいろと考えておいたのに、なにを言おうとしていたのか、さっぱり思い出せない。


 なかなか続きが出てこなくて。


 やっとの思いで絞り出したのは、諦めの言葉だった。


「なんでも、ないです……」


 おうぎがいなければ、まともに会話もできない自分を変えようと決意したのに……。


(そんな簡単に変われたら、苦労しないわよっ!?)


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