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39 空回る葵


(薫子さんと二人っきりなんて、どうしたら!?)


 葵はまさかの事態に慌てふためいていた。そして、


「……」


 なにも言えなくなってしまう。


 けれど、無言は無言で辛いものがあった。


 つまらない人などと思われたら、耐えられない。


(なにか・・・なにか話さなきゃ!)


「あのっ、薫子さん!」


「え!? ……な、なに?」


 意気込んで呼びかけるが、声が大きすぎた。


 薫子がわずかにビックリしている。


 失敗したと後悔しながらも、葵が続きを口にしようとする。


「えっと、あの……」


 しかし、そこで教室の空気が止まった。


(どうしよう!? 言うこと考えてなかった!)


 とはいえ、話しかけてしまった以上は、もう引き返せない


(なにか話題……話すことは!?)


「その……い、いい天気ですね!」


「え? 曇ってるわよ」


「あ……」


(うわぁあん! 失敗したーーっ!?)


 気まずくなって葵は口を閉ざす。


「…………」


(で、でも、このまま無言ってわけにはいかないわよね?)


 なにか話さなければ。


 投扇興部としては葵のほうが先輩なのだ。


 リードしてあげるべきだろう。


 葵は気を取り直すように咳払いをひとつ。


「あの、薫子さん」


 今度の声は、適切な大きさだった。


「なに?」


 正直、すでに葵は挙動不審だが、それでも薫子は優しく微笑む。


 だから葵も、気負うことなく口を開いた。


「いえ、その……」


 けれど、また話すことを考えていなかった。


 続きが出てこない。


 とはいえ、ここで黙るわけにもいかない。


 必死に思考を回転させる。


(えっとえっと……確か昔読んだ本に、人と仲良くなるにはその人のことを聞けって)


「あ、あのっ……ご趣味は?」


 なんとか声を絞り出すと、薫子から笑い声が漏れた。


「ふふ、なんだかお見合いみたいね」


「ご、ごご、ごめんなさいっ! そんなつもりじゃなくて」


 慌てて言い訳するが、薫子がそれを遮るようにして続けた。


「お見合い相手が葵ちゃんみたいなかわいい子だったら、すぐに結婚しちゃいそうね」


「えぇ!? 私が薫子さんと結婚!? そんな……私なんて、ペットで十分ですっ!」


(って、なに言ってるの、私!?)


「ペットかぁ。こんなかわいいペットなら大歓迎ね~」


 満足そうに笑っている薫子と、落ち込んでいく葵。


(さっきから変なことばっかり言っちゃってる……)


 じつは薫子はまったく気にしていないのだが、葵はどんどん思い詰めてられてしまう。


(おうぎ助けて……っ!)


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