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37 今日の部活は


 自習室でのことである。


「うわぁ! もうわかんないって!」


 おうぎが悲鳴を上げると、葵が慌てて人差し指を立てた。


「こら、大きな声出さないの。他の人もいるんだからね」


「だってさー、問題が難しすぎるんだよ」


 不服そうに言ってから、それにと付け足す。


「数も多いし……」


 おうぎの前にはプリントの山が積まれていた。


 そのすべてに、数学の問題が並んでいる。


「自業自得じゃない」


 葵は冷たくあしらうと、事実を言い並べていく。


「宿題は出さないし、小テストは毎回ゼロ点。課題が出るのも当然よ」


「いやー、どうも勉強する気にならないんだよねー」


「よくこの高校受かったわね……」


「それは、葵が勉強見てくれたおかげだって! ほんと助かったよ。いくら感謝しても足りないくらいっ!」


 素直な感謝の気持ちをぶつけられて、葵の頬が赤く染まる。


「そ、そういうのはいいから……さっさと課題やりなさいよ」


「そうだ! この課題も手伝ってよ」


 一転、葵の表情が冷たくなった。


「嫌よ。自分で頑張って」


「そんなっ!? あたし一人でできるわけないじゃん!」


「だからって私が手伝っちゃったら課題の意味がないでしょ」


 それに葵はいつまでもここにいるわけにはいかなかった。


「乙女たちも待ってるだろうし、私は教室戻ってるから」


「ひどいや! あたしを置いて、他の女と会うつもり!?」


「変なこと言わないでっ! ただの部活でしょ!?」


「あたし抜きで、みんなで遊ぶんだ……あたしとするのは飽きたってこと!?」


「だから誤解を招く言い方しないでっ!」


 葵は顔を真っ赤にして、周囲に視線を走らせる。


 多くの生徒がこちらを見ていた。


 迷惑がっている人もいるが、顔を赤らめてひそひそウワサ話をしている女子もいる。


 明らかに変な誤解を生んでいるだろう。


「もう! ほんとに先行くからねっ」


 これ以上の誤解を避けるため、葵は走り去るようにして自習室を後にした。


 その背中を見送りながら、おうぎは頬を膨らませる。


「なんだよ、葵のやつ……冷たいなー」


 不満そうにつぶやくおうぎの耳に、ふと不穏な音が届いた。


「はぁはぁ」


 熱っぽく荒い息づかい。


 これには聞き覚えがあった。


 その人物は少し離れた席からこちらを見ている。


「はぁはぁ……扇ちゃんも葵ちゃんも、もっと続けてくれてよかったのに……」


「乙女、いつからそこに!?」


「えっと、二人が入ってくるちょっと前、かな?」


「初めからじゃん! 声かけてよ」


「だって……二人だけの空気を邪魔したくなくて……はぁはぁ」


「なおのこと声かけてほしかったなぁ……」


 若干引き気味のおうぎだったが、乙女の前に置かれているものを見て首を傾げる。


「そのプリントの山、どうしたの?」


「あ、じつはね、私もおうぎちゃんと同じで、課題たくさん出されちゃって……」


「え? ってことは、今日の部活は?」


 これは奇妙な組み合わせになりそうである。


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