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33 すれ違う思い


 生徒会室に入ってきた乙女の姿に、嬉しくなると同時に胸のあたりがざわついた。


 なんとも言い表せない気持ちに、表情が硬くなる。


 それを見た乙女は、不機嫌そうな顔として受け取っていた。言葉が出なくなる。


 けれど彼女の背を二人がそっと押した。


「ほらほら、乙女」


「ちゃんと話さなきゃダメよ」


「う、うん」


 後押しを受けて、乙女は薫子の前に進み出る。


「お姉ちゃん、お話したいことがあるの」


「また部活のこと? 何度来ても、ダメなものはダメ」


「ち、違うよ! お姉ちゃんに謝りたくて……」


「謝るって、なにを?」


 その質問に、乙女はわずかに戸惑ってから返す。


「謝ることはわかってないけど……お姉ちゃん、怒ってるんだよね?」


「……別に怒ってないわ」


 そう。怒ってはいない。


 それは事実なのだが、良くない感情を抱いているのも確かだ。


 けれども、それがどんな感情なのか言い表せない。


 自分の気持ちなのに、理解できていない。


 わからないから、うまく隠すこともできなくて。


 だから、乙女が不安そうな表情をしているのだろう。


「最近のお姉ちゃん、ちょっと変だから……」


 小さくつぶやいてから、力強く薫子の顔を見つめた。


「なにか悪かったなら言って!」


「別に……乙女ちゃんは悪くないから」


「ホントのこと言ってよ。お姉ちゃんを怒らせるようなこと、しちゃったんでしょ?」


 不安そうに言ってから、乙女は決意を込めるように胸の前で、ぎゅっと拳をにぎった。


「私、グズだからすぐには直せないかもしれないけど、頑張るから!」


 その様子に、


「……あぁ、やっぱり」


 薫子がつぶやきを漏らす。


 高校に入ってから、乙女が変わっていくのがよくわかる。


 こんなに力強い乙女は見たことがない。


 これまでは薫子の後ろをついて回ることしかできなかったのに。


 きっと彼女も成長しているのだろう。


 そして、その変化を乙女に与えたのは自分ではない。


 投扇興を始めてから、彼女は変わった。


 だとしたら、薫子のそばにいるより、そちら側にいたほうがいいのかもしれない。


「乙女ちゃん、無理して私に合わせようとしなくていいよ」


「え……? お姉ちゃん、どうしてそんなこと言うの?」


「だって」


 一瞬、言葉に詰まった。


 認めたくなかったから。


 けれど、薫子は溢れる感情を抑えることもできず、叫ぶように返した。


「私のこと、嫌いになったんでしょ!?」


「えぇ!? どうしてそうなるの!?」


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