03 部活動
「高校デビューか~」
登校中。乙女の決意について説明されて、薫子が嬉しそうに微笑む。
「乙女ちゃんもそういうこと考えるんだね」
「うん……でも、私にはちょっと早かったみたい」
「高校デビューに早いとか遅いってあるの!?」
「だって、初日から寝坊しそうになっちゃうし……」
薫子が起こしてくれなければ、こんなふうにゆっくり歩いて登校することはできなかっただろう。
「やっぱり無理な背伸びは止めようかなぁ、って」
「うーん……乙女ちゃんらしいけど」
苦笑を浮かべる薫子は、何か思いついたように手を打った。
「じゃあ、せめて新しいことを始めてみるのはどう?」
「新しいことって……例えば?」
「ほら、部活とか! 中学の時は帰宅部だったよね?」
「うん……」
入りたいと思った部活は、いくつかあった。
しかし乙女は、結局どこにも入部しなかった。
「この機会に、部活始めてみたら? 何か変わるかもよ」
薫子が明るく提案する。けれど、乙女はあまりピンと来ていなかった。
「うーん……部活かぁ……」
一方その頃。
乙女がこれから通う高校の、とある一年生の教室にて。
入学式の開始を待っている生徒たちの中で、すでに友人関係にある二人の女の子がいた。
そのうちの一人が目を輝かせる。
「なーなー葵! 新しい部活作ろうよ!」
「部活って、なんの?」
「それはもちろん――」
「あ、待って、言わなくていいわ。おうぎのことだから、なんて言うかわかるもの」
「さっすが葵! あたしのことよくわかってるよな」
「なっ」
葵と呼ばれた少女が、顔を真っ赤にした。
「べ、別にわかりたくてわかったわけじゃないわよ! おうぎがいっつも同じことばっかり言うから……」
「え? なんで怒ってるの?」
「怒ってない!」
葵は気を取り直すように、こほんとひとつ咳払いをして、
「私、手伝わないからね」
「えっ! なんで!?」
「だって、私はおうぎほど真剣にやってないし……」
葵の言葉に、おうぎが涙目になる。
「ひどい! 葵は遊びで私に付き合ってただけ、ってこと!?」
「ちょっ、誤解を招くようなこと言わないでよ!」
「もう充分遊んだから、あたしにはもう興味がないんだ!?」
「だから、そういう言い方しないでっ!」
葵が慌てておうぎの口をふさぐ。けれど、すでに手遅れだった。
近くの席にいた生徒たちが、ざわめき始めている。
「え……あの二人ってそういう……?」
「確かにさっきから仲良さそうだったけど」
何を想像したのか、ざわついている女の子たちは頬を染めている。
そんな女子生徒たちからの視線を受けて、葵は彼女たち以上に顔を真っ赤にしていた。
「もー、おうぎのバカーーーッ!!」