12 一緒に部活やらない?
「合計は六十二点ね。最初のうちはプラスの点になるのも大変なのに、すごいわ」
葵に褒められるものの、狙って取ったわけではない。
「ただの偶然だよ」
言い訳のように返す。これにおうぎが反応した。
「いやいや、偶然でこういう高得点が出るから楽しいんだって」
「上手な人なら、狙って高得点が出せるけどね」
「葵~……そういう冷静な意見、言わないでほしいなぁ……」
おうぎは苦笑してしまうが、乙女は別の感想を抱いていた。
「あの難しい形を、狙って?」
「まぁ、ここまでの高得点は運も必要だけど、三十点とか五十点の手なら狙って出せるんだってさ」
蝶が落ちた後の位置まで狙うなんて、今の乙女には造像もつかない。
扇を真っ直ぐ飛ばすことだけで精一杯なのだから。
「私もそうなれるかな?」
自然とつぶやいていた。
おうぎが目を輝かせる。
「投扇興に興味出てきた!?」
「う、うん……まだわからないことも多いけど、楽しかったから」
乙女の感想に、二人は嬉しそうだった。
葵が笑顔を浮かべながらも、ため息をつく。
「よかった。おうぎが強引だったから、嫌な思いしてたらどうしようって心配だったのよ」
「えぇ、あたしはただ投扇興の楽しさを伝えたかっただけだし」
「押し付けはよくないって話よ」
「楽しいって思ってもらえたんだから、いいじゃん」
「いや、そういう問題じゃなくて……」
疲れた表情になっていく葵。それを気にする様子もなく、おうぎは乙女の手を取った。
「ねぇ、投扇興楽しかったよね!?」
「えっ、う、うん……楽しかったよ」
「あたしたち、投扇興部作るんだけど、よかったら乙女も入らない?」
「部活……」
乙女は、いとこの薫子と話したことを思い出していた。
高校入学をきっかけに、部活を始めてみる。
これはいい機会なのかもしれない。
狙ったところに扇が飛んでいくのは楽しくて。
結果が高得点になったときは、とても嬉しかった。
上手くなれば、これを狙って出せるかもしれない。
それはすごくカッコいいと思う。
そんなふうになりたいと思ってしまう。
そんな姿に憧れを抱いてしまう。
だからこそ、乙女の中で答えは決まっていた。
おうぎからの部活動のお誘い。
これに乙女は、大きな声で返事をした。
「む、ムリですっ!」
「えぇ!?」
まさかの答えに、おうぎの驚く声が響いた。