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魔法迷宮で暮らす方法  作者: 朝日あつ
1.意思編:2-37話
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2.初めてのダンジョン



 球体に触れた瞬間、正面の壁に様々な情報が映し出される。


ーDP表示

ー配下一覧

ーダンジョン地図

ーダンジョン管理

ー機能管理


 操作は思考を読まれているようで体を動かさずに項目を選択できる。ダンジョンはDPというものを消費して操作するらしい。空間の編集、配下の魔物の召喚や物品の作成が可能みたいだ。

 その他にダンジョン自体の維持にもDPが必要になる。これについてはダンジョン付近の地脈に流れる魔力をDPに変換して溜めているため。新しく配下や空間を追加しない限りDPがなくなることは無いようだ。精霊が言った通りに人間を殺す事を強要されていない。

 ダンジョンの地図を見てみると、このダンジョンは一つの直方体で作られている。高さは自分が手を伸ばして届く程度で、幅は6人は横に並ぶことができる。奥行きは息を止めて歩くなら、最期まで辿り着けないほど長い。

 こんな四角く削り取られた道は人工的でおそらく誰が見ても怪しまれてしまう。ダンジョンで迷う事は無いだろう。

 地図を見ても自分が今居る石壁で囲まれた空間がなかった。自分を探そうとして地図を操作しているとダンジョン内の壁からの視点が表示される。ダンジョンで作成した天井や壁、床には魔力の線、ラインが敷かれていて、これらからは配下の移動や視界確保ができるみたいだ。侵入者の観察にも使えるだろう。

 自分が居る場所はコアルームらしい、ダンジョンの最奥の台座に収まっているダンジョンコアから行き来できるようだ。

 ダンジョンの操作も飽きてきたので一旦、外に出て休憩するためにコアルームを脱出する。地図で見えていた台座の場所、ダンジョン最奥に出現したようだ。ダンジョンの外は明るいため日中だと思う。台座に置かれたわずかに光る球体はコアルーム内のそれと同じ形状で、コアルームに侵入できることを確認してからダンジョンの外を確認することにした。


「おお! 自然が多い」

 ダンジョンから外を見ると視界の下半分を埋めるような緑がある。全力で走っても避けられそうな間隔で木々が伸びており、地面に様々な種類の草が生えているのが見える。ひとまずこの辺りが人間の居住域でない事はわかった。

 どんな植物があるか確かめてみようと、ダンジョンの入口を出たところで体が異常を発する。

 吐き気と頭痛。

 ダンジョンから離れるにしたがって、それらが徐々に強まる。耐えられない事はないが慣れて忘れることはできなさそうだ。ダンジョンの利用者になった影響だろうか。逃げると不快な気持ちにさせて、ダンジョンの中で住みたいと考えさせるのだろうか。

 ダンジョンの奥行きの2倍ほど離れてみると、不快な症状も悪化しなくなった。この場所から離れる事は出来そうだ。

 少しの間、周辺を探してみても食べられそうな植物や生物もなかった。このダンジョンはそれなりの高さの山の足元にあるようだ。

 どこかには川もあるはずだが今日は歩き疲れたので、コアルームに戻ってから休憩しようと思う。ダンジョン入口の天井部分がわずかに岩や土から露出しているが、埋め込まれたように作られている。


「何も無いな」

 つい独り言を言ってしまう。あの精霊もいないようだし、こんな知らない場所で話し相手が居ないのはすこし心細い。

 始めてDPを消費して作成した、水と餌を食べながらコアルーム内で座っている。

 水は皮袋に入った状態で生み出した。多少DPを多く消費するけど、空中から直飲みなんて方法は取りたくなかった。

 問題は餌のほうだ。雑食系の動物用の餌と表示されていたから呼び出してみたが、頑張っても美味しいとは言えない。雑穀を茹でて固めたような丸いこれは、食感の変化はあるものの、水が無ければ呑み込む事さえ嫌になる。

 一人前食べても50DPも消費しないのでたくさん食べられるが、早く食材を確保したくなってきた。人間と交流しなくては。

 噛み応えがあって中々、満腹感がある。これを毎日食べればあごもしっかりするかもしれない。噛む事に疲れてきた。味は気にしてはいけない。自然を感じる空気を吸っているみたいだ。

 食べ終わったら眠気もしてきたので横になることにした。

 DPの表示は10363DPとなっていたので、明日からはもう少しDPの必要な食材を出現させようと思う。

 調理は焼くだけならなんとかなりそうだし、何より雑穀の餌を毎日食べるのは味覚を失くしそうだ。





 起きてみると便意を催したので、急いでダンジョンの外に出る。大自然の中とはいっても周囲を気にしてしまう。茂みの脇で用を足して土で埋めておく。こんな場所に長居しようとするなら安全な便所を作らないといけない。野生動物がいたら襲われてしまいそうだ。

 ダンジョンに入ろうとした時に入口の直ぐ脇に、こぶし大ほどの穴があった。奥を見てみると茶色のねずみの家族がいたので、とりあえず自分が食べたものと同じ餌を与えることにした。少しの時間、ねずみの親は警戒していた。その後はしっかり囲んで食べてくれたので、これからは定期的に餌を与えようと思う。

 餌が食べられて崩れていく様子を観察する事に、夢中になっていた。しかし、ねずみといっても胴回りがこぶし大と考えるとかなり大きい。怖くて近づけない。こうして出会うまでは、ねずみという存在に非現実感があったが実際はこのような生物なのか。自然の内で活動するためにも、これからはよく観察しようと思う。

 ダンジョンに手を加えないのは面白くないので、何か一体ぐらいは配下を出してみたい。最初はDPが安いものを出してみる事にする。維持費がかさむと食糧事情が悪くなりそうだ。

 ダンジョンによって生み出せる魔物は種類も多く、今のDPでは生み出せない魔物まで確認できる。あまり目立たない大きさで少数でも自給自足ができるような魔物を作成したい。

 移動速度や生活環境を考えて召喚させた魔物を見てみる。暗い茶色の毛をしていて、短い4つ足に僅かに覗く歯、こぶし大の胴周り。その名前は腹切りねずみ……。それはダンジョンを抜けて食料を探しにいったようだ。奴がダンジョンを抜けるまで自分はコアルームから動くことは無かった。

 心を落ち着かせたところで、コアルーム内で操作を調べてみる。地図はダンジョン内しか表示されないが、ダンジョン内に敷かれたラインからの視覚情報でダンジョンの入口の辺りは確認できる。

 地図には生物も表示させるみたいで、地図の表示の限界辺りに、入口に住み着いた腹切りねずみの家族が表示されている。彼らの巣穴自体は地図に表示されていないから、視覚とは別の方法で生物を感知しているみたいだ。

 ダンジョンの広さの変更方法を探す。およそ600DPで身長程度の立方空間が確保できるみたいだ。ダンジョンのラインだけを敷くこともできる。

 現在のダンジョンは広く細長い形をしているが、この空間を作成するために消費したDPは単純計算で40万近い。

 せめて一つは曲がり角を用意しろ、と最初に出会った精霊に主張したい。物の持ち込みはできるので土や木で遮蔽物を作る事で何とか守れそうだ。

 外から姿を見られる事は気が落ち着かないため、ダンジョンの最奥の横に小さな部屋を作成してみる。腕を振り回せる広さの部屋で、入口は楽に通れる大きさに決める。

 コアを操作して部屋の作成をさせる。部屋の作成に時間がかかるらしく、ダンジョンの側面から順に作られていく様子が通路側の壁からの視点でよくわかる。最終的な消費が4000DPほどで、部屋を作る空間にあった土を取り除くよりも、壁を作る際に多くのDPが必要なようだ。

 コアの移動も可能みたいなので早速先ほど作った部屋に移動させる。コアの移動にもDPが消費されるようで昨日から溜まっていた分がみるみる減っていく。

 時間をかけて移動した事を確認すると地図に配下のねずみが映る。ダンジョンの外から帰ってきたようだ。

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