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魔法迷宮で暮らす方法  作者: 朝日あつ
6.同行編:158-185話
174/323

174.適性



「一度、手から魔力を放出してみるか? ……光の正面に手を向けて、抑えた状態から慎重に。《灯火》が消えたところで出力を保ってみてくれ」

 魔力放出を増やすと、目の前の光が薄れる。

 このまま消えていくなら、防御のための硬化魔法が無駄に思える。細かく調節するのも面倒で、魔力量だけに頼っても大体の魔法を消せるだろう。普段、硬化魔法に使っている分を流用しても、十分な防御になる。

 光が消えて、部屋の明かりがひとつ減った。

「最低単位の魔法だが、妨害には比較的多くの魔力を消費する。アケハの魔力は抵抗力が低く、浸食力も低い。倍はいかないが、前回の計測で魔力量が少なければ教えなかったかもしれない」

 魔力による妨害も、細かい実力差を補う程度らしい。

 当然だ。絶対に勝つ方法があれば誰だって学ぶ。備えというなら、実力差を補う手段を大量に集めておく事だろう。

 これまで安心できる状況など一度も無かった。一時の慢心だけだ。


「次は徐々にではなく、勢いをつけて放出する。魔力量は今の半分ほどで有効なはずだ」

 マギポコの指導通りに魔力を動かす。

 勢いをつけた事もあって、光は一気に消えた。

「慣れるのが早いな。魔力の放出も上手く抑えている。少し強めた状態で試してみるか?」

「お願いします」

 マギポコに頼んで、魔力妨害を練習させてもらう。

 

 明るさは変わらないが、消す際に必要な魔力は増えた。

 光から外れた向きに放出しても妨害にはならず、

 放出を止めて手で光を包み込むと、別の場所で光が生み出され、装置上部を手で覆うと、魔力供給が断たれるためか光は生み出さなくなる。

 あらかじめ、十分な魔力を放出しておくと、光が現れるまで遅れがでる事も分かった。


「魔力濃度が悪い、少し換気させる」

「満たすのは危険ですか?」

 光が再出現する時間を確認するために、最初より魔力を放出していた。

「悪いな。特定の魔力が濃いと機器が狂う。他人の魔力は不純物で、魔法の制御が難しくなる。魔力感知ができる者からすれば、威嚇や攻撃準備と思われる。やめておけ」

 常用するには問題のある手段のようだ。普段は硬化魔法を保って、必要なら魔力による妨害を行うべきなのだろう。

「防御として一手ではあるが、妨害してくる相手にわざわざ寄ってくれるか? 距離が増すごとに消費も増大する、包み込む形を変える動的な妨害も可能だが、そこまでいくと直接的に攻撃する方が楽だろう」

 魔力妨害では物理的な攻撃には対処できず、戦技に優れる聖者とは到底戦えない。他にも勝てない相手は変わらず多いはずだ。


「天井の照明にも影響がありますか?」

「良い発想だ。だが、中々難しいぞ」

 マギポコが場を離れる。

「まず、対策として魔法に頼らず光を生み出している。魔力実験を行う度に、明かりが消えていたら困るだろ。それでも魔力で妨害は可能だが、魔力が通りにくい素材で被覆されている。結界で囲まれた、独立した《灯火》の魔法という感じだろう。槍なんかで突く方が早く壊せる」

 目の前の魔法の光と同様、明るさ調節はできるみたいだが、魔法でなければ魔力による妨害は難しいらしい。

「言っておくが高いぞ。部品の換えは効くが市販じゃない。街の外灯より維持費は安いが、購入費用で圧倒的に勝る。やるなら、納得される言い訳を用意してくれよ」

 一度くらい試してみたいが、誰でも壊せるなら試す理由も少ないだろう。

「少し、対象を変えてみるか。私が標的を用意しよう」

 マギポコが隣に来る。


「《灯火》」

 手を差し出したマギポコが告げる。

 手の上に現れた光は、横の装置と変わりない見た目だ。

「今は放出だけで妨害してくれ。出力は今まで試した程度なら問題無い。直接魔法を向けられると、防御も貫かれるからな」

 使える魔法は硬化だけ、攻撃魔法は教わっていない。

 一応、体内の魔力を乱して怪我を与えられるが、離れていればまず無理だろう。

「妨害対策もいくつかあって、復元力より強度を高められる。魔力を迂回させたり、発動位置をずらしたり。途中の魔力を保護したり、あるいは出力を高めたりだな」

 マギポコは話しながら光を自在に動かしている。

 手で追えない速さや、緩急をつけた動きで光を消せない。

「後は最初から独立した魔法を使う事だ。供給が不要で制御を手放しても魔法が保たれる。

《火球》なんて最初に形と向きを示せば勝手に飛んでいく。一度形になってしまえば、作った相手を殺しても魔法が残る」

 マギポコの手へ魔力を向けても、光は消えない。

 妨害を防がれたのか、あるいは手以外から魔力を送っているのか、分からない。


「……魔法というより魔道具だろう。動作させれば後は自動。魔力を蓄え、制御するまでを魔力が担う。そこに関わってくるのが適正だ」

 適性と言われると、魔力の復元力でも話していた。

「適性は道具や部品になる魔力の有無といっていい。水を運ぶのに器を使うとしても、アケハの場合は魔法の度に道具を使い捨てるしかない。他の者は常に道具を携帯しており有事の際、すぐ使える」

 原始的な方法で効率も悪い。工夫を学べないと後になるほど苦労するだろう。

「魔法の規模が大きくなるほど制御が増大するが、アケハは制御による限界が早く訪れるだろう。制御の才能があっても適性が皆無だと魔法は難しい」

 体系化された多種の魔法が使えないという点は大きく劣る。

「できない事は無いと思うが、魔法にしても完全に解明されたわけではない。アケハが優秀な列に並ぶには、魔法についての研究が数世代は足りないというのが現状だ」

 数世代といわれると無理という事だろう。

「魔道具を集めるだけでも十分な戦力になる。務まらない部分を除けば、かなり優れた魔法使いになれるだろう」

 狙われる立場になれば、いずれ勝てない相手が現れる。戦技で、魔法で勝てない相手を、ダンジョンを操って倒せるとは思わない。


 隠れ潜むか、認めてもらえる相手を探すか。光神教を巻き込む賭けは怖い。獣魔の数体は認められても、際限なく増やせる魔物までは認めてもらえないだろう。

 ダンジョンの機能を知り尽くしたわけでも無く、人間を殺す事が目的だとDP増加が示している点で、疑問も残っている。

 最初に見かけた精霊も、正否は不明だが人を殺す事が正しいと主張していた。そんな相手が関わったダンジョンを残して問題が起こらないか。

 とにかく、情報が足りず、集める手段も限られている。

 アプリリスに賭けるにも本人も聖女についても知らない。

 変に動くより、耐えるべきなのだろう。


「魔力妨害の解説はこのくらいだな。装置は残しておくから、試したい時は前日にでも知らせてくれ」

 実験室を明るくしたマギポコが、退出の準備を始める。

 部屋の施錠して、通路を進み、建物を移る。


 二人で教授の部屋に戻った後は、昼になるまで座学を続けた。



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