1.未完成(冒頭)
@本作ブラバのおすすめ
1話(注意書き)、5話、14話(登場人物Nに問題)
以降でも読者数の低下はあるため、ご注意ください。
※バフ的日常話の大体が不評。作者の趣味です。
@注意!
〔鬱展開〕、〔常軌を逸した残虐な描写〕、
〔性的官能を目的としない性描写〕といった特殊な表現があります。
不快を抑える表現に努めていますが、
世界観を保つ都合で削除していません。
『我々に繁栄をもたらす異界の聖者よ』
『せまる魔族から人類を守護する』
『その身でこの地を満たしたまえ』
「おひょー、人型だよ! 人型、珍しいなー」
目の前にいるのは小型の人間、着ている貫頭衣の後ろから羽のような何かが飛び出していて、宙に浮いている。
硬そうな質感の壁に囲まれているので、ここが何処なのかはわからない。何か情報がないか見渡していると、何度も視界に入ろうとする奴がいる。
「お前は誰だ?」
「私はあれさー、魔力の歪みから生まれる精霊だよ」
精霊は天井に視線を向けて考えるような仕草をする。
「枯れた大地には水、植物あるいは生物となる。極端な歪みを治そうとする魔力達が集まった存在なんだ」
目が合う。握った手を唇に当てていて、こちらをうかがう。
「ところで君の名前は何? あー、私に名前は無いよ」
「俺は***だ」
「じゃあ、アケハって呼ぶね!」
「いや、なんで呼び方を変えるんだ?」
「あんまり聞かない名前だと変でしょ、それに名付けなんて滅多にできないじゃん」
「とりあえず、わかった」
「わーお、私名付け親、やったー」
精霊の無邪気な笑顔と開かれた両腕が、不信感をやわらげる。
「ところでお前は何の精霊なんだ?」
「ダンジョンの精霊だよ、魔力を溜めて魔物を生み出す場所、それを扱うものとして君を呼んだんだ」
「何をすればいいんだ?」
「ダンジョンは人間を殺すために作られたものだよ。財宝なんかで引き寄せてね」
口角を上げて歯を見せてくる。
「同族を殺せっていうのか?」
「別にダンジョンを動かさなくても、ただの人間としては生きていけるから心配しなくてもいいよ」
表情が豊かで、反応も早い。会話をするのが好きなのだろう。
「私という存在が生まれるくらいなんだから相当な歪みがあるってことだよ」
精霊がこちらを責めるような悲しい表情をしている。
「私の生まれた理由は知らない、でも私を正しく使って欲しいな」
ダンジョンは魔物を生み出すだけで、引き寄せなければ人間を殺す事もないのだろう。
「……人間を殺すかは決めてないけど、とにかく使ってみるよ」
「利用者なんて珍しいからどうなるか楽しみだなー。大きく、たくさん育ててね」
大きくなるというのはダンジョンの事だろう。目立つように大きくダンジョンを作り、魔物という存在をたくさん生み出す事ができれば、目の前の精霊は満足するのだろう。
「そうだった、そろそろ成り替わりそうだから言っておくけど。青い球体が後ろの台座にあるから、それに触れてくれるとダンジョンの操作ができるよ」
ダンジョンというものを操作できるほど説明を受けていない。実際に操作してダンジョンを理解してもらいたいのだろう。
「それじゃあねー、いい一生をアケハ」
精霊が僅かな光を散りばめ薄らいでいく。
気付かない間に現れた青い球体と自分だけがこの空間に残る。
精霊に言われた通りに、片手で掴みきれない大きさの、球体に触れる。
『利用者アケハを確認、ダンジョンの製造が完了しました』