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オオカミさんウサギさんを見つける

みんな(?)お野菜の(ネタ)にもそろそろ飽きてきたよね?じゃあ、次は獣人ゆえの困った習性についてでも話そうかなぁ。


簡単にいうと、狼人(ロボ)はドS。攻めしかない。え、なにそれダレ得?て思うかもだけど、マジなのよね、これが。そんなんで成り立つのかと言うと、意外と成り立つように世界は都合よく回ってくれている。


狼は完全な弱肉強食の縦社会で、とっても世知辛いの。サディストVSサディスト。負けた方はもれなく下僕になってしまうと言う。本能ゆえか、敗者は勝者に対し自然とリスペクトしていく…ということを私は2つ歳上の兄とドンパチして初めて知った。


「お兄ちゃんサイコ―!世界一の男前!一生ついていくの!」


もちろん……ボロクソに負けたわ!その日から私は兄の下僕になった…悲しいかな、私は狼人の中では強い方だけど兄よりは弱っちかった!


そんな大変な狼生を送る私も、16歳になりイロイロな部族(クラン)の通う有名私立高校に通うことになったの。小・中と肉食系の部族(クラン)しかいない国立中学校に通っていたから、草食系の子に会うのは初めてよ。友達いっぱい作って、楽しいお野菜トークで盛り上がるのが夢なの。


花の高校生生活スタート!レッツ、エンジョイ♪


***


「どうして…どうして皆逃げちゃうの?!」


入学から早1年後、2年生になった私は高校入学当初からの友人である犬人(チュアン)のセレナと向かい合わせでお弁当を食べていた。離れた位置にいる草食系の少女達の視線を感じ、なぜ…と力強く箸を握りしめ、セレナに抑えきれない思いの丈をぶつけたわ。


「だーかーらー、そりゃ私達は肉食で草食系(かれら)から見れば立派な捕食者だからじゃん?ってこれ言うの何回目よ」


244回目よ!


「そんな殺生なぁ…肉食って言ったって同じ獣人を食べる人なんていないでしょう?」


くい気味に詰め寄る私に、白いまろ眉がチャーミングな友人は、その眉を残念そうに垂らした。


「それでも、本能には逆らえないのよ」


高校入学当初、草食系の友達100人作るぞー!と燃えていたのに、それから1年ずっと獣人の本能という名の壁にぶつかってしまっている。草食系の学生は、狼人(わたし)が近づくと途端にぴゅーと蜘蛛の子を散らすように逃げてしまうの。


「本能って……私は野菜には始終トキメいているけど、草食くんを食べたいと思ったことは今まで一度もないわ」


「あ、ミルキは偏食家だったっけ?なんだっけ、確か根菜主義者(ベジタリアン)?」


「そう…だから共学楽しみにしてたのに。きゅうりのカーブの美しさについて語り合えないなんて、何の為にくそ難しい入試受けたのか…もう分からないわ」


この世界の共学とは、男女のことではなく肉食系と草食系を合わせた学校のこと。始めて女子高ならぬ肉食校と聞いた時、私はリアルに吹いた。心の中でチキン校と呼んでいる。


「動機が心底どーでもいいわね…」


この遣り取りも実に244回目かな?


「でも、そうね。私だったら2組のジャスパー辺りが美味しそうだなって惹かれるわ。あくまで食指的な意味だけど」


おやおや?本日のセレナさんは機嫌が良いらしい。いつもの遣り取りにはない情報を落としてくれた。


「ジャスパーくん?」


はて、誰だったかな?首を傾げる私に、心の友セレナがすぐさまフォローを入れてくれる。


「ほら、今ちょうど部活(クラブ)で校庭にいるわよ。あの真っ白い兎人(トゥズ)の男の子。犬人(チュアン)は強い者に焦がれるから、恋愛対象としては貧弱過ぎて論外だけどね~」


セレナの視線を追い窓外を見ると、確かに彼女のいう髪や肌が真っ白で儚げな美少年がテニスラケットを片手に微笑んでいた。彼が件のジャスパーくんだと私にもすぐに分かるほどキラキラしている。


「草食系女子だと結構狙っている子が多いらしいわよ。ああいう中世的で儚げ美少年がウケるみたい」


それは何となく分かる…けど……。


「ねえセレナ。あの子誰だか知ってる?」


私の180度捉える狼眼には、別の獲物がはっきりと映し出されていた。何故か彼が気になってきになって仕方がないの!


「え?う~ん、誰かしら?えーと、ああ彼1年生ね。しかもジャスパーの弟じゃない。あまりにも色が普通(・・・・)だから忘れてたわ。彼がどうかしたの?」


私の質問にも、さすが情報通のセレナは自前の小悪魔手帳を広げ直に答えてくれる。持つべきものは悪友ならぬ悪女が一番よね!


「見つけた」


校庭の端っこの花壇で、チマチマせっせと動き回るその姿は実に地味で目立たない。ほんのり焼けた健康的な小麦色の肌に、人参みたいな夕日色の髪は兎人(トゥズ)の獣人では割と普通だし、人が良さそうだなってくらいしか特徴のない平凡な男の子……でも…。


「なにあのウサギさん!ちょー美味しそう!イジメてあげたい!」


「はい?」


それから私が運命の彼(リアンくん)の情報をセレナから買い、赤いカラコンをネットで注文し、全財産はたいてまで「安心!貴方もこれ一振りで草食動物の仲間入り!」が売りの香水をオークションで競り落とし、その次の日に下駄箱に仕込んだラブレターで速攻呼び出して彼に告白したのは言わずもがなである。


行動力に定評のあるミルキ17歳、桜舞う4月のこと。

name:セレナ

look:ベリーショーの黒髪に白のまろ眉/夜空色の瞳

age :♀17

class:ミルキの友人

personality

犬人の綺麗系美女、世話焼き

情報通でミルキの兄を狙っている

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