オオカミさん野菜を手に入れる
こんにちは私の名前は…はて、何だったかな?
生前は野菜に関わる仕事をしていたような気がするけど。ということはイモコとか?…いや、ないな。うん、ないない。え、ないよね?
どうしよう、せっかくの記憶がまさかの野菜オンリーなんてちょっと笑えないわ。
それにしてもお腹減ったな…トマト食べたいなぁ。あのジューシーな赤い実に齧り付きたい…って違う。待って!それトマト違うから!待って、まって、堪忍して!あ、ああああああああ~ん。
目が覚めたら、私は赤ん坊になっていた。
こういうのを巷で人気の輪廻転生というの?基本的に私の前世の記憶は、80%以上野菜に浸食されているので、あまりお得感はない。
名前?分かんない。性別?は女だったような…そのうち思い出すかも?
世界観は前世に暮らしていた環境とほとんど一緒。テレビ、ガス、水道、電気などなど、文明って素晴らしいわ。
そんな私(今世の名前はミルキというらしい)が健やかに成長し、初めて違和感を感じたのが恥ずかしい…ごにょごにょな食事から離乳食へと華麗にチェンジした時。あれ?と思った。
「まぁま、どうしておにくしかないない?」
昼食時、目前に出されたお皿の中身は挽肉オンリー。しかも、生。あれ?幼児虐待かな?
「それはね。ミルキちゃんがオオカミさんだからなの」
「おおかみさぁん?」
んー?私の頭をなでなでしている美人さんは何を言っているのかしら?
「ミルキちゃんのパパとママはオオカミさんなのよ。だから娘のミルキちゃんも私達と同じオオカミさんよ」
な、なんだってー!?
生まれて早2年、お母さんより衝撃の真実を聞かされ、私はその時この世界が前世とちょっとズレていることを知った。
まず第一に人間がいない。
え、マジでいないのって感じ。どうやら絶滅してしまったらしい・・・なむなむ。
そしてこの世界のほぼすべての知的生命体?的な存在が獣人。といっても、その見た目は私の知っている人間とほぼ変わらず、耳やしっぽが映えているあのあざとさはない…ちょっぴり残念。
なんでも大人になると動物の姿も取れるようになるとか、謎すぎるぞ獣人。
だけどそこで困ったのは私。なんたって前世の記憶のおかげで生粋の根菜主義者なのに、まさかのバリバリ肉食獣の狼人になってしまったのだから。
「お、おやさいは?とまとないない?」
野菜LOVEな私は、大きなおめめを一生懸命うるうるさせて懇願したわ。なんたって死活問題だから。幼児のあざとさ100%使用でも文句は言われないはずよ。
「オオカミさんの部族にお野菜はないのよ。だって私達のご飯は鹿や豚、兎のお肉だから。初めてでビックリするかもしれないけど、一口食べてごらんなさいな。とーっても美味しいのよ」
「お、おにくしかないない…おうのー!」
Oh No~!!!なんてこと!肉しかないだと、そりゃ狼だもん。当たり前だよね!でも、でもならどうして神様は私を草食動物にしてくれなかったの…その後の私の苦労(主に食事事情)は推して然るべきでだろう。
というわけで、私は直ぐに行動に移した。まず、どうやって野菜を手に入れるか。考えられる方法は3つ。
ひとぉ~つ、家庭菜園を作る。手間は掛かるが長期的に見れば実に経済的。回答、はいムリー。なぜなら狼人の縄張りがすっごく寒いから、一面雪まみれの地で野菜など実らない。え、ビニールハウスがあるじゃないかって?幼児にそんなもの使えるかっ!
ふたぁ~つ、商人から買う。不定期だけど、狼人の部族の地にも商人がやってくる。回答、肉食獣の元に野菜を届けにくる商人なんているわけないじゃない!
みっつ~、通販で買う。今やネット社会、欲しいものはボタン一つ手に入れてやる!回答…って、あるのっ?!
そんなこんなで私は兎人の部族で作られているウサギ印の新鮮な野菜を何とか確保することで日々の糧を得ることができ、無事に餓死フラグを回避したのだった。ちゃんちゃん。
name:ミルキの母
look:雪色ロングストレート/アーモンド色の瞳
age :♀?
class:狼人部族長の妻
personality
おっとり美人さん