ウィンタープリンセス(笑)とノーブレインキング(笑)の作戦
開いて頂きありがとうございました!星馴染です。
『冬の女王で引きこもってるけど質問ある?』
そのスレが立ったのは、七月。
とっくの昔に交代していない冬の女王が引きこもっている、というスレが立った。
『クッソワロタwww』
『嘘乙、七月まで居る訳ねーだろJK』
『証拠うp』
『ちょっと待ってろ……』
スレ主がそう言い残して十分後、冬の女王がドヤ顔で城の部屋の中が見えるように映った写真がアップロードされた。
『マジじゃん!?』
『何してんの!?』
『はよ変われや!?』
『IDも付けてみた』
二枚目の写真がアップロードされる。若作りした衣装にIDを書いた紙を持って、胸元や足元をチラ見せしている美人。
『冬の女王で引きこもってるけど質問ある?』スレがぐんぐん伸びる。
『もっとうp!』
『いや、アップロード要らないからさっさと帰れ!』
『春来ないのお前のせいなの!?』
お前のせいかよ!と嵐のような書き込みでスレッドストップした。
時は既に三月。
昨年の気温は、十四度。
今年の気温マイナス三度。
例年比較が意味をなさないくらいの異常気象に、民からの苦情が多い。
燃料は底を付きかけ、国庫の食料は既に尽きて隣国から購入している。
王は頭を抱えた。
「冬の女王は何してくれてんの……これじゃあワシ女王交代させられない無能王として民から罵られるじゃん」
冬の女王が引きこもってしまった。
自室を開けてくれないのだ。
『王様だけど冬の女王を追い出す方法ある?褒美出すけど』
そして、王様はわらにもすがる思いで掲示板に書き込んだ。
『ご飯とかどうしてんの?』
書き込みを見て、王様も疑問に思った。食事する時に追い出せるだろう、と。
「食事はどうしてるんだ?」
侍女はドアをスライドさせて、食べ物を中に送り込む。
「入口のドアの下半分に食事がぎりぎり通るだけの小さいドアがついてます……」
「なんでそんな物を付けた!?いや、入らない場合はどうしてるんだ?」
「紐で窓から引っ張り上げてます」
「そうか……」
『食事を与えなければ出てくるんじゃないの?』
五日後、侍女が焦ったように王様の元に現れた。
「王様!女王様が餓死してしまいます!もう五日間何も食べてません!」
冬の女王が餓死してしまうのは危険だ。冬が来なくなってしまう、と王は他の方法を考える事にした。
『トイレに行った所を捕まえれば?』
そういう書き込みを見つけて、王は疑問に思った。
「トイレはどうしてるんだ?」
王様の言葉に、侍女は目を逸らし一枚の写真を取り出した。
以前、掲示板でアップロードされた、冬の女王の最新情報である。
「美女王はトイレなんかしない、と言ってますが、このドヤ顔の汚部屋写真を見てください」
「ふむ?煽ったような顔にイラッとするだけで、とくに変わった所は無いようだが?」
「イラッとするのは同意ですが、アナタの嫁ですけど?」
そして侍女が写真……冬の女王の後ろ側を指さす。
「後ろに黄色い色が付いたペットボトルが見えますか?」
「お茶かな、飲み物には困ってない訳だな」
「…」
「あと、こちらです。謎なビニール袋が積み重なってるエリアが」
「それがどうかしたのかね?」
「……いえ、美女王はトイレをしないのだと思います」
「美女王というものは難儀だな」
『王様がお願いしてみたら?愛してるよって一言添えてさ』
その書き込みを見て、王様は直接女王の部屋に出向こうとして……
「おやめください!」
「何故止めるのだ?」
「冬の女王様は、王様と下着を一緒に洗濯するなというくらい嫌っておいでです。恐らく逆効果でしかないと」
「……ああ、そうなんだ。でも、強がってるだけかも、ほらツンデレって奴かも」
「そんな事は絶対ありません、諦めてください。王様は嫌われてます」
『そもそも何で引きこもってるの?』
「理由は解るのかね?」
「おそらく、これが原因でしょう……」
侍女はPCを立ち上げる。季節はめぐるオンライン。略してメグオン。
「女王様は、このゲームにはまっておいでです」
「どういうゲームなのかね?」
「超だるいレベルの上がらないMMORPG+高額ガチャカード集めゲーです」
豪華声優、豪華絵師と言いながら
絵師は手抜き絵。
声優は
「こんにちは」
「ありがとう」
「ふぇぇぇ?」
くらいしか吹き込んでなかったようなアレだろう……。
どんな会話中でも、ふぇぇぇって入れれば無理が無いと考えてるんじゃないだろうな?
何でも冬の女王はトッププレイヤーでイベント一位常連らしい。
血税?それならガチャでゴミカード引いて捨てたよ?くらいガチャらないと無理だろう。
地味に高額だが、リア充な春の女王が、
「これ買っちゃった!」とブランド物を数点買うくらいの額なので文句も言えない。
「全然ワシの部屋に来ないと思ったら、こんな所にいたのか……」
一年に限られた期間しか会えない女王。
女王が愛する……愛する?王に会いに来ない時点で対策撃てよ、と侍女は王を冷たい視線で睨んだ。
「で、王女のキャラはどれなのかね?」
「これですね……」
☆ウィンタープリンセス☆
そこには、レア装備を身にまとい、延々とモンスターを狩り続けるキャラが居た。
王様は名前を見てワナワナと震える。
「何がプリンセスだ!2〇(ぴー)歳のくせに!サバ読みすぎだろ!」
「王様はそういう事を言うから嫌われるんですよ……?」
「それより、今は情報が欲しい。コンタクトを取ってみろ」
『あの、姫様、侍女です。そろそろ春の女王と交代されては?』
侍女が自キャラを使いチャットで打ち込む。
『ダメよ、私が来なくなるとみんな死んじゃう!回復魔法が必要なんだから!』
「このままだとリアルでみんな餓死っちゃうだろ!?」
そういう王様に侍女は頷きチャットを続ける。
『このままだと、作物が収穫できませんよ』
『収穫しなければいいじゃない』
『……食べ物がなくなりますよ』
『食べなければいいじゃない』
『……お金がなくなります。通販で物が買えなくなりますよ。あとガチャもできなくなります』
『えっ?ちょ、ちょっと?もう少しで春祭りガチャがあるのに!』
春祭りまで居座る気だったのかよ!?
何なの、冬の女王って事忘れてるの?と王様が悲鳴を上げる。
『解ったわ。じゃあ、最後にPVPで私を倒せる王子様が居たら引退してもいい』
そういう冬の女王に、証拠のスクショを撮らせて、王は良くやった!と侍女を褒める。
「ですが……ウィンタープリンセスは今このゲーム上では最強ですけど」
「大丈夫だ、ワシも公務で忙しかったが、王子時代に国の税収の半分をつぎ込んだ強キャラが居る!」
「なんでしょう、冬の女王も問題ですけど、王様自体にも問題があるような気がしてきました」
「よし、PVPを申し込むぞ」
「……なんですか、このキャラ。無能王……?」
「かっこいいだろう。参謀不要の王、ワシのノーブレインキングだ」
「ウィンタープリンセスを貶せる名前センスじゃないって事だけは解りました」
そしてノーブレインキング(無能王)がウィンタープリンセス(冬の姫:笑)の前に立ち、チャットを打ち込む。
『ワシが勝てば引退するんだな?』
『……』
☆ウィンタープリンセス☆さんはログアウトしました。
「やりましたね、王様!王様がゲームに参加したら、飽きたと言い残してお城から出て実家に戻りましたよ!」
「……ワシ、そんなに嫌われてたの!?」
「まあ、これで次の季節が来ます。良かったですね、王様」
春の女王様が到着して、お城の部屋に入った時……
「あのペットボトルとかビニール袋とか……酷すぎますわ、わたくしに対する嫌がらせですの?」
そういって、泣きながらとんぼ返りした春の女王をどうやって呼ぼう、と王が頭を悩ませるのは、
また別の話である。
久々に小説を書いたので手が震えてます。
少しのってきたら、もう一本落としたいな、と思う今日この頃。
読んで頂きありがとうございました!