表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

4.「この子、ダイエット始めたのよ」

 今日は、夏の大イベントである、バーベキューにきていた。溢れんばかりの肉、肉、肉!



 夏休みに入ったので、課題もしっかりしつつ、しっかり遊ぶ。これ大事。



 去年までの私なら、肉にがっついていたことだろう。しかし、今年の私は去年の私とは違う。そう、ダイエット中だから!



 とは言え、折角友達と毎年やっているお祭り行事だし、断るのも悪いので、きた。


 

 この毎年バーベキューをするメンバーは、幼稚園の頃からの友達で、家が近所の所謂幼馴染みってやつ。



 つかっちゃんと初めて会ったのが確か小学校5年か、6年の時だったので、今日はいない。



 メンバーは私を合わせて6人。



 かなりきーも、その中の1人である。



 付き合いが長いので、それぞれ勝手に付けたあだ名で呼び合っている。



 平凡な男を表したような吉田は「ヨッシー」、いつもふりふりのロリータ服? を着ている千恵は「ちぃちゃん」、部活の日焼けで、健康的に焼けた黒い肌の良介は「シロ」、反対に透き通るような白い肌の咲は「クロ」。



 男2人からは、私は「みー」、ちぃちゃんは「ちぃ」と呼ばれている。



「久しぶり! ちぃちゃん、毎年思うけどこの暑い中そのフリルはすごいよねぇ」

「クロは体弱いから、あんま火のそば寄るなよー」

「めっずらしぃ~、みっちゃんが野菜食べるなんて」

「この子、ダイエット始めたのよ。応援したって」



 ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、野菜や肉を焼いては食べる。



 そう、クロの言う通り、私が野菜をこのバーベキュー会で食べるなんて、稀に見ることなのだ。それほど、今まで肉しか見ていなかった。



 それが、野菜も食べてみると案外美味しい。とは言え、油断は大敵。ここでしめの焼きそばをもりもり食べたら、意味がない。



 皆で楽しく食べながらも、ダイエット中と言う緊張感は忘れない。



 ふと、ヨッシーとちぃちゃんが仲良さげに話しているのを見て、あの2人、もしかして……なんて、考えたりもする。



 ヨッシーのほうは分かりやすくでれでれだし、ちぃちゃんも頬を染めて嬉しそう。



 邪魔するのも悪いな、と思い2人のそばからこそこそと離れる。それを見ていたかなりきーに、呆れた口調で「他人のことには気が付くのに…」と言われた。



 何のことだろう。



 やっぱり、高校生だし、恋愛とかしたいよねー。その相手が幼馴染みで、ずーっと好きな相手だとしたら、嬉しいよなぁ。



 少女漫画とかでありそうな展開だ。羨ましい。でも、私は幼馴染み連中の男共を恋愛対象として見たことがないし、見れる気もしない。



 だって、ねぇ……。おねしょが地図みたいな形になって自慢されたこととか、小型犬に追い掛けられてぎゃん泣きしてたこととか、全部知ってるんだよ。



 お互い、恥ずかしい過去は知り尽くしている。



 余談だけど、何で肌の黒い良介が「シロ」で、肌の白い咲が「クロ」なのかと言えば、単純に子供の遊び心である。



 言い出しっぺは、私。



「黒いからクロ、白いからシロじゃそのまんま過ぎてつまんないから、反対にしよ!」



 言っておくが、その場に当人クロとシロはいなかった。



 なぜなら、勝手に決めて勝手に呼んでいるあだ名だから。



 子供って、結構酷いよね、って成長してから思ったりする。でもまぁ、定着したってことはそれでいいんだろう。多分。



 野菜と言えど、流石に食べ過ぎたので、皆が焼きそばを食べているのを遠目に、1人で川に足だけ入って遊ぶ。



 私のもとに、シロが歩いてくる。


「なぁ、みー」

「どしたー? シロ」

「今さ、彼氏とかいる?」

「いないけど」

「じゃーさ、俺と付き合ってみない?」



 …………はい?



 一瞬、時が止まったかと思った。実際に止まっていたのは、私のほうだったんだけど。



 止まっていたと言うか、固まった。突然の言葉に、脳が追い付いてこない、



 告白、された? ドッキリ……じゃ、ないよね。いや、シロはそんなことする人じゃないし。それは、長年一緒にいたから、わかる。



「え、っと……」

「好き、なんだ。てか、ずっと好きだった。明るくて、皆に慕われて……。返事、今すぐじゃなくてもいいからさ。考えてくれよ」

「シーー」

「頼む、時間をくれ。俺って泣き虫だからさ、今すぐ振られたら泣く自信ある」



 はは、と泣きそうな顔で乾いた笑いを浮かべるシロを見て、本気なんだと実感する。



 シロは、それ以上は何も言わずに、片手を上げて皆の元に戻っていった。



 川の流れる音が、やけに大きく聞こえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ