21.「俺の彼女になってください」
ブレザーに、膝上15センチの赤チェックのミニスカート姿で、鏡の前に立つ。受験生と言うことで、黒に染めた髪は、胸の下あたりまで伸びた。ダイエットを始めて、1年が経った。
2年生の4月、全然知らない他クラスの、若干小物臭のする男子にボロカス言われ、おまけにしてもないのに振られた。
それをキッカケに、人生初のダイエットに挑戦。
最初は苦しくて、つらくて、挫折しそうだった。でも、友達の応援もあって、時々誘惑に負けながらも、何とかやり遂げた。
今は、ご飯の量も減り、間食もほとんどしなくなった。
細くなった体型は、しっかりキープしている。何気にくびれもできて、胸は太っていた頃より少しちいさくなったけど、他の肉が落ちたおかげか、大きいと言われる。
1年前に着ていた制服はスッカリぶかぶかになり、買い直してもらうことになってしまった。
余談だが、私のダイエットをキッカケとし、我が家には空前のダイエットブームがきている。
無事、3年生に進級した私は、制服に身を包み、学校への道を歩く。前まで学校までの坂道が憎かったが、今は足取りが軽い。
教室に入って、席につく。
「おっ、朝野じゃん。随分変わったな~」
「……誰?」
突然、馴れ馴れしく話しかけてきたこの男子のことを、私は全く知らない。記憶にもない。
「俺だよ俺。ほら、2年の時朝野を振った。今なら、付き合ってやってもいいかな」
にやにやしながら、私の胸元を見ながら笑う男子。
あー! あの時の勘違い野郎!
全くもって意味がわからない。どうして1年前にボロカス言った相手が、未だに自分を好いてくれていると思えるのか。
私は、冷めた目で言う。
「結構です」
しかしこやつ、めげない。
「何で敬語なの。いーじゃん、放課後遊びに行こうぜ」
「友達と約束してるので」
「あたしのみっちゃんに、何か用?」
「え……ひぃ! お、大木。くそっ、覚えてろよ!」
勘違い野郎のことなんぞ、秒速で忘れてやるわ。それより、何であんなに怯えてたんだろ?
……あ、そう言えば1年前に私がボロカス言われた時、偶然目撃して勘違い野郎を撃退したの、つかっちゃんだった。
「大丈夫だった? みっちゃん。全く、あんな男、もう一回締め上げてもいいくらい。みっちゃんがどれだけ頑張ったか、知りもしないくせにねぇ!」
「……ありがとう。つかっちゃん」
不意に、つかっちゃんが真剣な顔になる。じっと見つめられ、ドキリと心臓が大きく跳ね、顔が熱くなる。
い、いかんいかん。つかっちゃんは普通にカッコいいから、こんな風に見つめられると、照れてしまう。
つかっちゃんは、友達なのに。
黙っていたつかっちゃんが、口を開く。
「ねぇみっちゃん。小学5年生の時のこと、覚えてる?」
「へ!? いや、覚えてない……けど」
突然どうしたのだろう。混乱する私を他所に、つかっちゃんは懐かしそうに目を細めて語り出す。
「小学5年生の時、あたしはみっちゃんのいる学校に転校した。転校する前の学校でも、転校先でも、あたしはオカマって馬鹿にされた」
……! 思い出した。そうだ、つかっちゃんと初めて会ったのは、小学5年生の時。
転校してきたつかっちゃんは、女言葉を喋る変な男子として、いじめられた。いじめは嫌いだった。だから、声をかけたんだ。
「やめなよ」
「何だよ朝野。お前オカマの味方するのかよ」
「女の子が男の子みたいに振る舞っても何も言わないのに、男の子が女の子みたいに振る舞うのはダメなの?」
私の疑問に、いじめてた男子達は答えられず、つかっちゃんへのいじめはそれっきりなくなった。代わりに、私はつかっちゃんと友達になった。
「あたしね、あの時のこと、ずっと忘れてない。みっちゃんはあたしの、ヒーローだもの」
すっとさりげなく手を取られる。
「ずっとみっちゃん……いや、朝野美都子さん、あなたが好きでした。俺の彼女になってください」




