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白球の行方 2/5

話を聞くとこういうことらしい。我らが所属しているこのシェアハウス同好会というのは一応の体裁として同好会という形をとっている。つまり年度初めには部費が生徒会のほうから出るのだ。しかし、あたりまえながら超能力者がただ集まって暮らしているだけの部活なので活動実績がない。生徒会としては活動実績のないクラブ団体には部費は分割できないということだ。別に同好会という形にこだわらなくていいとは思っているのだがシェアハウスの維持費に部費の存在は結構助かるのだ。と、いうわけで適当な実績を上げるために地域活性化の一環として近所の河原で行われる野球大会に参加しろと生徒会の誰かに言われたのだ。ぼーっとつけっぱなしのテレビを見ながら僕は質問をする。ちなみにテレビは毎日のように流れる行方不明の子供のニュースだ。やくざから子供までどれだけ行方不明になれば気が済むのだろうか。


「しかしなぜ野球なんだ?」

「生徒会長が野球好きなんだそうです。」

「そんな私情で部費って決められてるの?」

「そう見受けられますすね。勝ち組ですね。」

「それは横暴だろ。でも野球なんて9人必要なんだぞ。部員3人しかいないし。3人目今いないし。」

「別に縛りはないので顧問の2人は参加してくれるようですよ。」

「残りの5人はどうするんだ?」

「生徒会も協力してくれるようです。4人来てくれます。」

「残り一人は?」

「イッチー、さらっと俺をスルーしてるけど頼りにしてくれたっていいんだぜ。」

さっきまで閉められていたドアが開いてそこには金髪のチャラチャラした男が立っていた。滝坂 六だ。

「先輩。帰ってたんですか。」

「お祭りあるとこに俺の姿ありだぜ。声かけてくれなきゃ寂しいじゃんか。」

「だって先輩どこに行くのか教えてくれないじゃないですか。連絡先も知らないし。この前使った携帯すぐ捨てるし。」

「行先を教えちゃ休暇にならないだろ。」

「それでミッションインポッシブルだ!ってなる人少ないと思いますけど。」

「ほう、わかってくれるじゃないか。ちなみに2だぞ。」

「興味ないです。」

「まあまあ、先輩方。これで9人そろいましたし、行きますか!」

「え?今からなの?」

「そうですよ。さあ行きます。さっきから生徒会からかかる電話でずっと携帯が震えているんですよ。」


場所は変わって近所の河原。結構な人数の親父さんたちが集まっている。活性化なんて本当に必要なのかと思いつつもすでに待機していた生徒会と合流する。生徒会と絡むのはこれが初だ。会長と思しき人が自己紹介を始めた。


「今日は実績を上げるための助力ということで張り切ってまいった!私は生徒会長の上野原 空だ!どうぞよろしく頼むぞ!」


見た目は活発な少女という感じだ。いかにも人望がありそうな感じ。少し茶色がかったショートカットに愛嬌のある顔立ち。たとえ人気投票でも生徒会長になれるだろうと思わせるほどのできた顔だ。


「どうも、副会長の榴ケ丘です。今日はよろしくお願いします。」


会長とは似ていないタイプの青年だ。物腰が柔らかく丁寧な印象の人だ。身長が高い。僕より5cmくらい高いかもしれない。


「小島です。会計を担当しています。隣も小島で書記をやっています。」


一転、暗そうな感じの少女双子コンビだ。クールとでもいうのだろうか。小さい。こじんまりしている感じが否めない。

途中で先生二人が加わり、こちらも適当に自己紹介をして互いの野球のレベルを確認する。シェアハウス組は先生は二人とも経験者で滝坂先輩と僕はルールを知っている程度。布田は何とかできるくらいルールを知っているくらいだ。一方生徒会側は会長を除き全員ずぶの素人らしい。この即席チームでどこまでいけるかは知らないが別に結果は実績にはかかわらないので特に気にしなかった。


「しかし、シェアハウス同好会の諸君!実績を出しに生徒会まで借り出すというのはやる気だね!」

「い、いや別にそんなことも、」

僕が近くにいたのでなんとなく言葉を返す。


「これはきっと楽しませてもらえるね!」

「そんなでも、」

「よし!決めた!初戦は突破しないと実績として認めません!」

「は、え、ちょっと!?」

「頑張ろうじゃないか染地君!だっけか!」


というわけで、勝たないといけなくなってしまった。面倒にもほどがある。しかし、きっと実績なんてろくに作り出せそうにないからこの機会を逃してはならない。この大会での1勝はマストになってしまった。

この大会に参加するのは全部で8組。トーナメント方式で優勝を争う。シェアハウス同好会が初戦で当たるのはチーム府中組。少しガラの悪そうな人が集まっている。要するに強そうだ。勝てる気がしない。ちなみにこれは大変失礼な偏見だが頭は悪そうだ。というかチーム府中組という時点で矛盾している。


「さあ、オーダーを決めましょうじゃないですか!」

即席のチームメイトを集めて布田が仕切り始める。


「僕は1番がいいかな。足もそこそこ速いし。」

「じゃあ、一先輩は1番で。ポジションは?」

「一応野球多少かじってるから、ファーストにします。誰もキャッチできないでアウト取れないのは怖いし。」

「じゃあ、1番ファーストですね。ほかの方々はいかがなさいますか?」

というわけでそんなこんなあってオーダーは以下の順に決まった。


1番 ファースト  染地 一

2番 キャッチャー 榴ケ岡 晴

3番 ライト    神代 百八

4番 ピッチャー  上野原 空

5番 サード    柴崎 千歳

6番 センター   滝坂 六

7番 セカンド   小島 雪

8番 ショート   小島 雨

9番 レフト    布田 七


「希望ばっかり聞いていたら、私が最後になっちゃいましたね。しかもレフトとか花0ですね。」

「んなこと言うなよ。WBCの時の内川の好返球覚えてないのか?鳥肌ものだぜ?」

「それを言うなら、北京オリンピックの時のG.G.佐藤を覚えてないのですか?鳥肌ものですよ。」

「物事はいいほうに考えるものだぜ、そうですよね?六先輩?」

「そうだな、人生はチョコレートの箱だ。開けてみるまで何が起こるかわからない。」

「フォレストガンプですか。もうだいぶ古い映画になりましたよね。」

「ミッションインポッシブルだってシリーズ化されているからぼけてしまうが最初は92年でフォレストガンプより古いからな。」

「映画談義ですか?きっとシリーズ化するとそのたびに第一作目を見た時の自分が思い出されて売り上げが伸びるからだと思いますよ。」

慣れぬ声に目を向けるとそこにはキャッチャーの格好をした榴ケ岡が立っていた。結構似合っている。古田みたいだ。

「あ、榴ケ岡先輩でしたか。どうしたんです?」

「いえ、そろそろ試合が始まるのであちらに整列していただきたいと思いまして。」

「じゃあ、行きますか、すべては実績のために!」

布田の掛け声で僕らは第一試合の相手、チーム府中組に対峙しに向かった。


ほら、こうやって長くなる。

書きためてるとこうなっちゃいますね

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