雲間の中に 下
「今回、神代ちゃんが捕まったってことは政府は当然関知しているはず。それなのになぜスルーされたのか。」
「本当は気づいてないとかじゃないの?」
「そりゃないだろ。それくらい調べはつくはずさ。な?」
「そうね。気づいてないという可能性は低いと思うわ。」
「じゃあなんで?」
「言っちゃあなんだけど。神代ちゃん結構野心家じゃない?」
「否定できなくもないけどさ。でもそれが?」
「きっと、政府にとってまずいことをしたんじゃないかって思うのよね。で、あの人がかかわっている政府が動く人間ってあなたたちじゃない。何か最近おかしなことはなかった?」
思い出してみようとするが、別に心当たりはない。布田も首を横に振っている。
「じゃあ、最近神代ちゃんと話したことを聞かせてもらえるかしら。」
布田が思い出しながらしゃべり始めた。
「確か一番最近でしゃべったのは終業式の日かな。宿題やっとけよ。って言われたのと能力は絶対使うなよってくぎを刺された。でも、別におかしなことはないよ。」
「ほかには?たとえばその時何か持っていた?」
「持ち物?先生は確か英仏辞書と、10色ボールペン持ってたな。変な組み合わせだったから印象に残ってる。
「なるほどね。じゃあ、どこで?」
「教室だよ?普通に終礼終わってすぐ。あ、でも先生に呼び出しかかってたのに私と話してたな。放送聞いてもハイハイみたいな感じで流して。内容知ってたのかも。」
「なるほどね。ありがとう。じゃ、次染地君。」
「僕もそんな変わったことはありませんでしたよ。僕の場合はさしで話したのは終業式の日の朝ですかね。成績気になるか?って話と夏休み何する?って聞かれました。」
「で?なんて答えたの?」
「まあ、成績は気になるよって。夏休みについては実家に帰る。って言いました。別に嘘じゃないし。」
「そのときなんか持ってた?」
「ああ、レ・ミゼラブル持ってました。なんででしょうね。課題図書じゃないのに。」
「ほかには?」
「えっと。あ、その時も放送がなって。先生が呼び出しでした。その時は驚いたような顔して。パパッと走って行っちゃいました。」
「なるほど。そういうことか。」
先生は不思議な笑みを浮かべるとすっと立って窓のほうに歩きだした。
「大丈夫よ。神代ちゃんなら戻ってくるはず。あなたたちの話を聞いて確信したわ。」
「え?」
思わず声を合わせて聞いてしまう。
「そうね明日の朝くらいかしら。まあ、そんな遅くなることはないと思うわ。さあ、かえって宿題でもやりなさい。」
先生はそう言って僕らを追い払った。僕らは渋々部屋を出ていく。
「なんだったんでしょうね。」
「知るかよ。いつもあんなんだからあの人は嫌なんだ。
「わかりますよ。でもあの人予想外したことないじゃないですか。」
「それもそうだよね。意味わからないな。」
「まあ、いいじゃないですか。それよりアイスおごってくださいよ。」
「なんでそうなるんだよ。買わねーよ。」
「ケチですね。守銭奴ですね。」
僕らは学校を出てシェアハウスに戻った。で、宿題をしたりグダグダしたりして夜になって寝た。
次の日の朝、神代先生は戻ってきた。
最後がいささか短くなってしまいました。許してください。
ちなみにトリックなどはありません。ミステリーではないので。あくまで皆さん超能力者なのです。雰囲気をお楽しみいただく小説ですので、悪しからず。
明後日に第二編投稿です。