ツインズ《解答編》
シーザーは、母親のエリーと共に、ある場所で待機している。場所は少し高い位置にあり、自然の感じる作りである事は間違いなかった。
「ねぇ、本当に来るかしら? あの子たち?」
シーザーには強い確信と自信を持っている。
「大丈夫さ。自信はある。必ず来るよ」
二人は身をひそめて隠れている。
その頃、双子達は、ある場所に向かって早歩きのような歩き方で、急いで向かっていた。
向かったのは自宅から数メートル離れた場所。
「本当にいるのかなぁ?」
「いるといいねぇ」
「ねー」
双子は仲良く歩いて父がいる場所へ向かう。
「オッ! くるか」
向かっている双子
両親は中にあるテーブルの影に身をひそめて、扉を開かれるのを待つ。
部屋に掛けられた鳩時計の秒針がゆっくりと動いていく。
双子は、小さな手と小さな足を駆使して、梯子を上りあがることに成功した。
扉の前でジョンとマークは、勢いよくドアを開ける。
スローモーションとはこのことなのか……双子がドアを開けた瞬間、彼らにとって起きる物事が全て遅く感じた。
テーブルの後ろから勢いよく両親が登場し、隠し持っていたパーティークラッカーの紐を引っ張る。
大きな音を立てて、宙に紙吹雪と金と銀が混ざったテープが小さな双子を包み込んだ。
彼らは全く状況が理解できず、目を丸くして立ち尽くしている。
シーザーとエリーは双子に向けて、祝った。
「誕生日おめでとう!」
「誕生日?」
「日?」
双子はまだ状況を飲み込めていないらしく、二人とも同じタイミングで首を傾げている。
「全くわかっている雰囲気ではないみたいね」
エリーの毒が軽く入った言葉を浴びながら、シーザーは軽い笑いで場を乗り過ごそうとしていた。
「あ、あはははは~そうか~まだわからないよな。お前達は、実はな今日はお前たちの誕生日だ。おめでとう!!」
マークとジョンは父の言葉を聞いて、喜んではいるものの、何とも言えない空気を感じた。
「パパ! あの暗号分かったんだよ! 僕たち二人で解いたんだよ!」
この双子が暗号を解いた事に、シーザー自身は、やはりと確信を得ているらしく、解き方について、小さな二人に訊いてみる。
「どうやって解いたのかパパに教えてくれ」
マークとジョンはにっこりと笑顔で答える。
『いいよ!』
マークは半ズボンのポケットに入れていた一枚の紙をテーブルに広げた。
広げた紙には色んな文字や数字の羅列がいっぱい記載されている。
ジョンとマークは指で示しながら解き方をシーザーとエリーに教えることにした。
「まずは、この《Wuhh Krxvh》を全部、大きくするんだ~」
次にジョンが一冊の本を父に手渡す。
「で、大きくした《WUHH KRXVH》をパパがくれたヒントを使うんだ!」
「ヒントかい?」
「うん! まずはヒントの意味を捜してみたんだ」
「そう。ヒント①はシーザー暗号法の事なんだ!」
ジョンは、本のページをめくって、シーザー暗号法のページを示す。
「シーザー暗号法はこの文字をずらしていく暗号の作り方なんだ~」
「ああ、知っているよ」
「それで、次はヒント②の三月三日だね。これは数の三であることを表していているんだ」
マークはヒントを囲み矢印を鉛筆で描いて紙に示す。
「じゃあ、この三はどういう事なんだい?」
「これはヒント③につながっていくんだ。文字の中身をずらしていくんだ」
「だー」
マークは続けて話していく。
「例えば、Aがあるでしょう? これを、三ずつらしていくんだ……」
隣にいるジョンは小さな手で、暗号の解読方法を大人2人に見せるようにして記述していく。
「そうそう。で、このAを三つ、ずらしたらDになるでしょう?」
ジョンは一枚の白い紙に記していく。それを見ながらマークは付け足した。
「だけど、今回のひねられていたんだ。ずらした後の文字を問題としてボクたちに解かせたんだ。つまり……」
「つまり?」
マークは証明していく。
「つまり、この暗号は既にずらしたもの。パパはこの暗号を用いて、僕達に挑んだんだ!」
「そう。それで既にずらされた暗号を戻せばいいんだ~」
「パパはボクたちに行き先を示したんだ。この暗号でね」
ジョンとマークは、それぞれで書き続けていき、暗号を解いて紙に示す。
「ヒントとこの法則を照らしていくと……」
《Wuhh Krxvs》
《WUHH KRXVH》
《 W=T U=R H=E H=E 》
《 K=H R=O X=U V=S H=E 》
「それを整理すると」
《T R E E》
《H O U S E》
「これを繋げて読んでいけば……」
《TREE HOUSE》
双子のアンサー。
『ツリーハウス』
「パパが僕たちに示した場所はツリーハウス。つまりここだったんだ」
シーザーは彼らの推理力、解読能力に脱帽した。
「素晴らしい流石だ」
「ええ、本当に素晴らしいわ」
両親2人はニコニコしていた。シーザーは双子に順番で暖かい左手で、頭を撫でていく。
単純な暗号の解き方でも、彼らは一丸となって解決していき、見事に、父親が作り上げた暗号を解いたのだ。
ジョンとマークは、頭をいつもより多く撫でられて、若干くすぐったそうにしている。
「パパ、くすぐったいよ~」
「たいよ~」
「ああ、ごめんごめん。さて、今日は誕生日だ。家族、皆でママの手作りケーキを食べよう!」
『やった!!』
双子のシンクロした喜びが部屋に響きわたった……
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