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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
6/11

現実と救済 6/25

「やっと授業終わったー!」

 日曜を除き、毎日六時間ある授業がやっと終わる。

「今日何する?」

「俺と模擬戦してくんね?携帯ゲームの方の」

「なぁ、大空ー」

「何?」

「お前もやらねーの?」

「……ああ、俺はちょっとやりたい事あるから」

「最近連れねーよなー」

 いつもなら、瞬間的に首を縦に振っていただろうが、今はそれどころではない。

「だって、退学するの嫌だし」

「あ、そうだな」

 そう言って、友達同士で笑い合った。俺は若干の苦笑いだったが。

「大空君!」

 そう言って、放課後の教室に入ってきたのは、意外や意外、駿河雀。教えを受けていた時、急に出て行ってから会っていなかったので、少し驚いた。表情を見る限り、焦っている。

「おい、大空。誰だ、あの美人」

「知らねーのかよ、山ちゃん。この学校の第3席だぞ」

「え!?」

 俺は急に白い目を浴びせられる。

「待て、そんなんじゃない!」

「それどころじゃないの!君、今月退学だって、たったさっき決まったの!」

 その言葉の意味を理解するのに、時間が掛かった。いや、理解したくはなかった。



 それから、駿河と共に職員室を目指した。会話は何一つなかった。

 そして、先生の一人から中に入るように言われる。

「君は、技術面では頑張っていたのだが、どうにも実戦の成績が芳しくない。残念だが……」

 目の前に座っているのは、学園長の虹村透。この学園創立時、つまり十年間学園長の座に居座り続けている。その誇り高き姿は、まるで皇帝。

「この日が来るのは、わかってました」

「……そうか。では、寮の支度をしてくれ給え」

「失礼しました」

 俺は学園長室から出ようとしたその時、部屋のドアが開く。

「失礼します。冷姫氷牙です」

 髪の毛を整えた冷姫が目の前に立っていた。

「その、こいつの退学の事なのですが、まだ今月の集計は、完全には、終わってませんよね?」

 学園長が顔をしかめる。

「ああ、確かにそうだが?」

「こいつは、俺らのチームに今日入る事を志願しました。これがその登録願です。そして、今月末の三十日に決闘を受理しています」

 そう言って、冷姫は手に持っていた書類を学園長に手渡した。

「チームに入ったって、俺ハンコとかも押してな」

「話は後だ」

 俺が最後まで言い切るのを、冷姫は制した。

 学園長が書類に目を通し始める。

「確かに、これは正当な申し出だ。生徒会からの印鑑もある。受け入れよう」

 これは、退学阻止。しかし、冷姫の顔はまだ深刻なままだ。まだ何か残っているのか。

「だが、月末の決闘は、来月の成績に加味される事になっている。この意味が、わかるね」

「……そんな」

 天国から地獄へ堕とされる気分に陥る。しかし、諦めずに冷姫は口を開く。

「なら、学園長。この交渉が決裂となると、俺も退学するって事なら、良いですか?」

「なっ、馬鹿かお前」

「黙ってろ、馬鹿」

「……わかった。君の交渉だ、受け入れよう。しかし、この決闘に負けたら、予定通り退学処分とする」

 ……冷姫のお陰で首の皮一枚だけだが、繋がった。

「ありがとうございます!」

 俺は声を張り上げたが、冷姫はペコリと礼をするだけだった。しかし、頬は緩んでいたように見えた。



「ありがとう、冷姫。なんと礼を言って良いか」

「礼は駿河先輩に言え。この作戦を作ったのは、駿河先輩だ。私はあの子を助けられる立場じゃないからって、俺に任されただけだ」

 突然、目頭が熱くなるのを感じた。何から何まで助けられっぱなしだ。

「助けられたからには、やるべき事をちゃんとやれよ。チャンスは作った。そのチャンスをちゃんと活かせ」

 俺は、冷姫が冷徹な奴だと思ってきたが、心優しく熱いものを胸に秘めている男だという事を悟った。

「おう!」

 そして、彼から借りた恩。また駿河から借りた恩を返す為に、必ず次の決闘で勝たなければならない。

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