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BRAVE HEARTS  作者: 刹那翼
2/11

優等生と落第生 6/19

 現代、未だに淀みなく加速し続けるバーチャル()リアリティ()技術。この世界から二十五年前、バーチャル空間に人間の体が入り込む事も可能になり、それから十三年後、その技術の進歩によりバーチャル空間の新時代の幕が上がり、特別な効果を付与する事まで出来るようになった。

ーーそれは魔法。バーチャル空間内で擬似的に魔法を使えるようになったのだ。

 その電脳世界での戦いは、人を肉体的に傷付けずに済む。それにより、全国でプロやアマチュアのゲーマーだけでなく、多くのスポーツプレイヤーまでも巻き込んで行った。それだけでなく、賭博とばくによるネットマネーを大きく循環じゅんかんさせる結果に繋がった。

 これは、魔装学園というトップクラスのVR技術を誇る学園生活での、数々の魔法の闘いの物語。



『生徒No.00013216

 大空おおぞら 正義せいぎ

 VRスポーツ実技テスト総合結果

 456位/456人中

 総合判定F 体力E- 速さE- 魔法力F』

「……はぁ、また最下位か」

 携帯端末に映るのは、虚しい結果。この学校は、全国トップクラスのVRスポーツクラブを持つ学校、私立魔装学園高等学校。

 魔装学園では、VR実技は必須科目となっている。この俺、大空正義は魔装高校出身というステータスの為に受験し、ギリギリ回し合格の権利を得て、今に至る。

 それは良いものの、毎月ある実技結果はこれだ。見ていて嫌になる。

 魔装学園では、VRスポーツだけでなく、VR技術を専門としている。俺はこちらを専攻しているのだが、 こちらと定期テストなどの筆記試験の成績はまずまずなので、なんとか生きて来られた。

 生きて来られた、というのも、全ての成績を加味して、毎月最下位の者から三名ずつ退学になる。つまり、卒業までに約90名(春休み、夏休み、冬休みの間は例外で退学なし)が退学となる。先生からは、このままじゃお前、卒業出来ないぞと告げられたほどだ。

 だが、俺にはVRスポーツ実技など必要ないのだ。魔装学園に入った、という事だけでも誇れる事で、何かに就職出来る手立てとしてもその名は使える。そう思って割り切っていた。

「大空、今日、真霧まきり冷姫れいき決闘デュエルがあるってよ!行こうぜ」

 真霧聖司(せいじ)、特待生を除く一年生主席。冷姫氷牙(ひょうが)、同じく一年生第2席。学年の中でもトップクラスの彼らは、俺の手の届かない存在。

「おう、そうだな。行こう」

 携帯端末の電源を切り、友人の元へ走る。自分の技術を磨くためにも、学年トップの試合を見るべきだと思い巨大スクリーンがあるVRリクリエーションルームに向かう。

「ったく、なんで居ねえんだよ……」

「今日体調不良なんだって。寮で寝込んでるんだってさ」

 試合会場のVRレクリエーションルームはざわついていた。

 どうやら、冷姫のチームメイトが休みならしい。それで試合が始まらないだとか。

「決闘と言っても、成績は関係無い模擬戦なんだし、誰でも良いよね」

 取り仕切っている赤色の髪の女性は、何処かしらで見たことがある。しかし、妙に嫌な予感がする。

「君!試合に出て!」

 呼ばれたのは、やはり、俺。嘘だろ、嘘だと言ってくれ。嘘だと言ってくれよ、ゴッドアンドゴッデス……。

 取り敢えず神頼みは意味が無いので、なんとか恥をかくのを避けるため、相手を説得する。

「いや、俺、実技最下位っす。貴女あなたが出たらどうですか?」

「私?私は聖天ホワイト天馬ペガサス第2席、駿河するがすずめ。学園序列は第3位ってとこね。

 学園四天王のうちの一人が試合に入って良いなら、そうするけど」

 この学園には、大きく分けて三つのクラスが存在する。まず俺が属する神聖セイクリッド騎士団ナイツ。これは一般生のみのクラスとなる。そして聖天天馬、漆黒ブラック天龍ドラゴン。これらはそれぞれ、一学年三十人から成る特待生の集団。特待生は退学させられる危険性は全くないが、彼らの間での競争が激しい。一般生には、遠く及ばない存在。学園のスター的な存在と言っても過言では無い。

「え、あの、その、握手して下さい!」

「良いよー」

 学園第3席の女性は、とても綺麗な優しそうな人だった。特待生の全学年合わせて、180人は、決闘の受託じゅたく、管理などをしているが、四天王が出てくるなんて滅多にない。きっと一年生トップ二人の争いだからだ。

「さ、握手したし、出てね?」

 握手をした事で、断れなくなった。軽い気持ちで握手しなければ良かったと、今更後悔する。

「なんだ、こいつ」

不良っぽい銀髪男子ににらまれる。

「えーと、まずは自己紹介か。一年神聖騎士団整備部門所属、大空正義。臨時でチームの一員となる事になったんだけど……まぁ、よろしく」

「整備部門なのに、ごめんね。私の名前はおおとり爽乃さわの。よろしく」

 髪の毛をお下げ括りにしている柔和な女子、鳳は学年10位以内に入る射撃の腕前を持つ。ライフルを持つと敵無しという噂が立っている程だ。

「俺は、冷姫氷牙だ。足手(まと)いになるなよ、大空」

 左の前髪をピンで留めている、やや長髪で銀髪の美少年は、やはり冷姫。

「じゃあ皆、持ち場に着いて」

 VR空間に入る為のポッドの中に入る。そして、そこに示される8桁の生徒番号をキーボードに打ち込めば、VR世界に入ることを許可される。俺の場合、00013216。その生徒番号には、普段使用している魔法データなどが保存してあり、打ち込む事で、いつもVRでの決闘で使用する、プレイヤーアカウントが利用出来る。俺のは、基本いじってないからしょぼいけど。

 VR空間に入ると、既に戦いまでの60秒カウントダウン(チームでお互いの一人目が入ってから、カウントダウンが始まる)が始まって、残り43秒を示していた。どうやら、俺が最後にVR空間にログインしたようだ。ランダムで選ばれる地形。今回のフィールドは比較的狭い森林フィールド。木と木の間が狭く、鳳が苦手そうな地形となっている。

「揃ったな。じゃあ、今回の作戦だ。俺が前衛、鳳が俺の援護。……大空は何が得意なんだ」

「いや、俺全く得意な事ないよ」

「なら、動くな。良いな?」

 それの方が気楽だ。俺は頷く。

「さぁ、配置につけ」

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