モフモフ前編
阿野根は16RTされたら両性な鳥人で溺愛する話を書きます。 http://t.co/0diVzSHyX1
で書かせていただきました。
……私大っきすぎだよね。
もっとちっちゃく生まれたかったよ。
『本当に大きいわね』
『男の子より大きいわ、お嫁にいけるかしら? 』
悪意もないはずの言葉に涙が止まらない。
隠れられるはずもない庭木の影にしゃがみこんだ。
涙で青い空と葉っぱが霞んだ。
悲しくて上を向いたらバササと何か羽音がした。
私の隠れてる木に激突して葉っぱがおちる。
上から綺麗な翡翠色の羽根がひらりと一枚落ちてきて涙に霞む目で上を見上げると翡翠色の大きな翼が引っかかってるのが見えた。
なんだろう……鳥?
暴れてる何かをよく見ると翡翠色の瞳が見えた。
翡翠色の翼を持つ翼人が枝に引っかかってた。
どうしよう……怖い……でも抜けられないなら助けなくちゃ。
「あ、あの大丈夫ですか? 」
「大丈夫に見えるなら目玉をかえてきなさいよ」
それでも怖くて恐る恐る呼びかけると美しい翼人が忌々しそうに私をにらんだ。
こ、怖い……でも助けないと……
「助けを呼んできますね」
ふるえながら回廊の方に後ずさった。
向こうには回廊を含んだ四階建ての灰色の建物が見える。
早くしてちょうだいという彼女? の声を後ろに近くにいるはずの同僚を探して走った。
怖い、怖い、怖いけど……助けなくちゃ。
「セシルさんどうしたんだ? 」
「た、助けてください」
ガタガタふるえながら同僚のウニシス君にしがみついた。
ウニシス君は犬獣人らしいそこそこの筋肉の体型をしている
でも私より小さい。
「セシルさん、敵か?」
ウニシス君が慌てて私を後ろにかばった。
優しいけど隠れきれないよ。
また涙が出た……でも……泣いてる場合じゃないよね。
「ち、違うの誰か木に引っかかってるの」
「……本当にセシルさんは大きい図体なのに臆病だぜ」
ウニシス君がクスリと笑いながらあの木に近づいていった。
大きい図体なんて本当の事でもひどいです。
私は涙ぐんだ。
「さっさとおろしてちょうだい駄犬! 」
「あんた態度がでかすぎ助けてもらう態度じゃないだろう」
翡翠の翼人が叫んでウニシス君が言い返した。
こ、怖い……私は果樹園の入り口で入ろうかどうしようか迷った。
「うるさいわね、あの大人しい方はどこにいるのよ」
「セシルさんは大っきいけど荒事担当じゃないんだよ! 」
翡翠の翼人とウニシス君が言い争いだした。
どうしてそうなるんですか……こ、怖いけどとめないと……
「セシルさんハシゴ持ってきてください! 」
ウニシス君が怒りながら振り向いた。
目つきが怖いです〜。
「は、はい! 」
私は慌てて倉庫に駆け出した。
ウニシス君が明らかにイライラと翼人の羽根を引っ張ってるのがみえる。
痛いわねこの野蛮駄犬。
うるさいこのケバ鳥〜。
そんな声をバックになんとかハシゴを取ろうと慌てて倉庫の鍵を開けようとあせっているとむこうから頼もしい人が来た。
黒い短い髪に黒い豹耳を太陽にさらしてゆっくりしっぽをゆらしながら歩いてくる人が私に気がついて微笑んだ。
「セシルっち、どうしたの」
「あ、タマキさん……助けてください」
私はタマキさんに手を振った。
タマキさんは優しいから大丈夫だよね。
「ウニどんにいじめられた?……何やってるんだあいつ?」
黒豹獣人のタマキさんは不思議そうに果樹園で怒鳴り合ってる二人を見て木にゆっくりと近づいていった。
わーん、早くハシゴ〜。
慌てれば慌てるほど鍵が入らない。
ドサっという音一緒に翡翠色の翼人が落ちてきてウニシス君を潰した。
下で重い〜。とジタバタしているウニシス君はともかく上の翼人は綺麗な翡翠色の羽根と長い髪がだらりたれてぴくりともしない。
し、死んじゃってないよね?
「だ、大丈夫ですか? 」
慌てて鍵を諦めて駆け寄ってしゃがみこんだ。
「おい、きちんと警戒をしてから」
タマキさんが止めたけどすぐに術をねりはじめる。
タマキさんが困ったように頬をかいた。
ごめんなさい、こういう性質何です。
翡翠の翼人さんの腕に触ってゆっくりと練った力を翼人の身体に回す。
拒絶反応はないみたいです。
意識を翡翠の翼人さんの身体に集中するために目を閉じる。
右の翼が傷ついてるし小さな傷もあるけど問題は違うみたいそう思いながら右翼の創部、細かいそうをなおしていくやっぱり左翼……気持ち悪いにおい……青黒い……臭い匂い
左翼に絡まるそれが翼全体に絡まって気持ち悪い。
どうに……そうだ、純粋に力をぶつけてはじけさせよう。
青黒い不気味なものに力をぶつけて翼から引き離してはぜさせた。
「いたい! 痛いわね! 」
左翼のなにか嫌なものを壊したところで翼人のちょっとゾクゾクする怖い声で叫んだ。
集中していた意識が途切れて麗しい翡翠色の翼人さんの翡翠目と視線があった。
綺麗な……でも私より大柄な女性?
「うるせい、でか女さっさとどきやがれ」
「ウニどん、セシルっちが終わったみたいだからすぐに排除するよ」
騒ぐウニシス君を尻目に杖を構えるタマキさん
あれ? ……アイアさんまで出てきてます、どういうことですか?
回廊にはいつも他の人に興味を持たない他の研究者も集まってますよ?
タマキさんが浮遊と唱えて杖を持ち上げると勢い良く翼人が持ち上がった。
ウニシス君がコロリところがって立ち上がりながら
私をひっぱって翼人から離れさせて後ろにかばってくれた。
ウニシス君優しいです。
「ちょっとこれがこの国の外交なの? 来ることになってるはずよ……あら……左が動くわ……ともかくおろしなさい」
翡翠の翼人が麗しい眉をつり上げて叫んだあと不思議そうにに翼を見た。
も、もしかしてが、外国の人? 偉い人?
「王立魔術研究所にようこそ? アイアん予定は入ってるのか? 」
「アイアです……」
タマキさんは騒ぐ翡翠の翼人に集中しながら近づいてきた所長秘書のアイアさんに聞いた。
アイアさんは記録と唱えて術を展開して内容を確認してうなづいた。
「クレシオール王国のイアスール殿下のご訪問予定ならあります……イアスール殿下は翼人です……」
アイアさんが資料映像を見えるように回した。
翡翠色の翼と翡翠色の長い髪を結い上げた麗しい翡翠の瞳の胸の大きい美女が映っていた。
翡翠の翼人を見るとそっくりです。
ま、まずい気がするのですが?
みんなが固まってタマキさんの術が切れてイアスール殿下? がドサッと地面に落ちた。
怪我させたら、もっと怪我させたら国際問題?
私は慌てて治療術を練ってイアスール殿下に走り寄ってまた治療を始めた。
モリターイェル王国は獣人や精霊やエルフやドワーフや人間等他種族がごちゃまぜにくらしていてそれぞれの良い所を活かして国を成り立たせている。
私はセシル、狼獣人がメインの獣人で王立魔術研究所所属の治療術士です。
攻撃魔法は全く使えないけど身長が高いのでうどの大木とか図体がでかいとすぐにからかわれる事がストレスなんです。
黒豹獣人で男性のタマキさんよりはちっちゃいけど狐獣人のアイアさんや犬獣人のウニシス君に比べるとすごくおっきいんですよ。
アリーナお姉ちゃんより数倍大っきいのに……戦闘能力ないのだけ一緒だよ。
もう一度イアスール殿下の身体に術を通した……軽い打撲の臀部に……あれ……とばしたはずなのに気持ち悪い青黒いものが今度は左半身に術枝を伸ばそうとしてる……元は……ああ、左の翼の付け根に青黒い根が……
こんな気持ち悪いものがあったら身体に悪いよね。
大変だけど一本ずつ細胞に絡まった術式を解いていく。
深く……より深く……細胞の中まで青黒いなにかを分離して……痛いと聞こえた気がするけど……
もう少しで全部……抜けた! 体外に排出しなきゃ。
「タマキさん燃やしてください! 」
青黒い紐のような固まりが飛び出た瞬間にいつもの反射でお願いした。
「白炎! 」
タマキさんも反射で杖ふるい白い炎で燃やし尽くした。
青黒い塊が燃え尽きた様子を呆然自失でながめていると翡翠色の美人がユラリと私の前にたった。
「どういうことよ!! どうやっても解けなかった呪いがどうして解けるのよ! 」
美人……イアスール殿下は私の肩を掴んだ。
の、呪い? 気持ち悪いものとしか……解き方なんて、ほ、本能だしわからないです。
「それはセシル治療士の腕が良いからでございます」
うちの狸親父が揉み手しながら現われた。
狸獣人なんですよ、本当に。
まん丸のお腹は娘さんにメタボだから痩せなきゃ、一緒に歩かないと言われて男泣きしてたけど……ご飯いっぱい食べるけど食えない男です……面倒見はいいんだよね。
「治療士なのに解呪もできるってなんなのよ、でもありがとう」
イアスール殿下が私を思いっきり抱きしめたのでなんか出そうになった。
柔らか……くないよ~胸〜。
大きいのに筋肉質? 私、筋肉ないけどおっきいのに全然抜け出られないです。
苦しいのでジタバタしてると耳がゾクゾクした。
「この子ちょうだい」
イアスール殿下の声が耳元に聞こえた。
ペットじゃないです〜。
「セシルはモリターイェル最高クラスの治療士でございます」
|高等治療士》《ハイヒーラー》は国の宝でございます。
狸所長がニコニコ断わった。
「セシルちゃんっていうのね、わかったわ、この子は私のものよ」
イアスール殿下はその言葉が通じてないみたいです。
「耳がないのかよ」
ウニシス君がブツブツ言ってるのが聞こえる。
「……補聴器を準備致しますか? 」
アイアさんが冷静にカタログのホログラムを空中に展開した。
「いや……通訳だろう必要なのは」
タマキさんがため息をついた。
耳は綺麗な耳があるみたいです……美しい顔を見上げるとイアスール殿下が目を細めた。
「本当に失礼な人たちね、まあ、いいわ、私のものになれば可愛がってあげるわよ」
イアスール殿下が私の耳に顎をうずめて甘く微笑んだ。
そ、それより離してくれないと意識が……それにそのおっきい狼耳は敏感なんです……
「リボン結んだりか?」
「……美味しい餌ですか? 」
「首輪もありだろう」
ウニシス君、アイアさん、タマキさんがボソボソはなしてる。
リボン……美味しい餌はいいけど……首輪は嫌です。
でも……意識が……呼吸苦が……
「イアスール殿下、まずは視察においでになられたのですからごあんないいたしま……」
狸所長が言いかけたところで私は意識が途切れた。
ちょっと大丈夫? というゾクゾクする声を聞いた気がした。
私は狼獣人だ、銀の髪の灰色狼で目は母親と同じブルーグリーン色の瞳の目立つ容貌で父親の長身を受け継いだ……狼戦士……ではない、一定の割合で出る本能の狼獣人の治療士です。
おばさんたちによく父親に似てるのに男の子じゃなくて残念ねとか嫁の貰い手あるのかしらとか言われてます……くすん。
一定の割合といっても一世代に一人くらいしか出ないらしいけど……平和な時代は従軍も必要ないので好きな術の研究も研究所で出来てるんだよね。
アリーナお姉ちゃんのおかげで王立魔法研究所に入れたんです。
ありがとうアリーナお姉ちゃん。
気がつくとなんか弾力のある生暖かいものに囲まれてるのに気が付いた。
だ、だれかに抱き上げられてる。
「まあ、ここが駄犬の研究室なの? 」
麗しい声が耳元で聞こえて見上げると翡翠色だった。
い、イアスール殿下に赤ちゃん抱っこされてる。
ほ、捕獲ですか?
「駄犬じゃね……」
「ウニどん落ち着いて〜」
ウニシス君が何か言いかけてタマキさんに口を押さられてる。
げ、現実を見よう私……何とか降りないと……
「あら起きたのね可愛い子ちゃん」
「あの、おろしてください」
遠慮しなくていいのよとイアスール殿下に微笑まれて次の瞬間メテオストライクを落とされた。
「可愛い子ちゃんの研究室は見てきたわよ、きちんと浮遊島に送るように手配するわね」
ニコニコと微笑むイアスール殿下に私はくらくらした。
とりあえず降りよう……
「あの重いですからおろしてください」
「いや~ねこの子は気にして~」
イアスール殿下が空いてる方の手で私の頭を撫でた。
気持ちいい……じゃなくて、ああ、やっぱり青黒い術の残滓を感じる。
それから……見られてるような……気持ち悪い……
御守……作った方がいいのかな……でも材料採集が必要かも……
アリーナお姉ちゃんにこの間渡したから底ついてたような……買うと高いしなぁ……ガルフォ兄ちゃんはキリルさんに求愛中だし……
狸親父たすけてください。
隣で目を細めて見ている狸親父に目で訴えた。
狸親父にニッコリと微笑まれた……放置ですか?
困ってると扉が叩かれた。
……所長入りますとアイアさんの声がして扉が開いた。
灰色の翼の男性がアイアさんに案内されて入ってきた。
「ラダール、来たのね」
イアスール殿下が微笑んだ。
「来たのねではございません」
心配したのでございますよと灰色の翼人が眉をひそめた。
「ねえ、獣人の女の子ってどんなものが必要なのかしら? 」
イアスール殿下が私に頬ずりして笑った。
やっぱり飼う気ですか?
「拾いものをしてはいけませんと言ったはずです」
男性がイアスール殿下から私を奪い取って脇を持って床におろしてくれた。
翼人ってもしかして力持ち?
ささっとなさけないけどウニシス君のうしろに隠れた。
「ラダール……私の呪いは解けたわ……とりあえずだけど」
イアスール殿下が美しい翡翠色の翼を広げてみせた。
「それは……一体どうやって!? 」
ラダールさん? が驚いた顔をした。
「そこの治療士……セシルちゃんが根こそぎね」
すごいでしょう? と低い声でイアスール殿下は目を細めて私を見つめた。
こんな小さい娘がとラダールさんは驚いた顔をした。
私、大っきいです、翼人っておっきい生き物なんですか?
そういえば、二人ともおっきいかもしれない……
「わかりました、姉に連絡してセシル様をお迎えする準備を整えて参ります」
「よろしくね〜」
ラダールさんが踵を返したのをヒラヒラと手を振ってからイアスール殿下が私を獲物を狙う目でみてさあ、いらっしゃいと手招きした。
「タマキさ~ん」
怖くなって私はタマキの後ろに鞍替えしてしがみついた。
「あらあらライバルかしら? 」
イアスール殿下のゾクゾクする笑みにタマキさんがニッコリ返した。
「イアスール殿下、次の場所に移動いたします、まさに解呪のプロがいますよ」
狸親父が揉み手をしながらイアスール殿下を扉に押しやった。
やっとフォローしてくれる気になったらしい。
「解呪のプロね……迎えに来るから準備してなさい」
甘い声でイアスール殿下は言い残して狸親父に案内されていった。
部屋の緊張感一気に解かれた。
「翼人には翻訳者が必要だね」
「そうだな」
タマキさんとウニシス君が口々にいった。
「とりあえずは王太子妃のアリーナ様を通じて王妃様を頼るしかないかなぁ」
タマキさんが腕組みしてまだしがみついてる私を見た。
アリーナお姉ちゃんに?
「……王太子妃様で大丈夫なのでしょうか? 」
アイアさんがボソリとつぶやいたのに気がついて私とウニシス君とタマキさんはビクッとなった。
け、気配がなかったよ。
「アイアさん、狸についていったんじゃないのかよ」
「……ファニーリア解呪士は私のこと嫌いですから」
ウニシスさんの突っ込みに……なんででしょうとアイアさんが小首をかしげた。
ああ、ファニーさんアイアさんがスレンダーだから嫌いなんだよね、胸のでかい苦しみを知らないのよと叫んでたよ。
ファニーさん巨乳だからね……普通胸のさっぱりした人がそういう反応するってガルフォ兄ちゃんが言ってたんだけどね……アイアさん、天然資源だから……あれ天然記念物だっけ?
「このままだとゴリ押しされるな」
「ええ? 嫌ですよ」
タマキさんの発言に思わず反応した。
治療術の研究続けたいもん。
解呪なんてできません、あれ治療だもん〜。
ケバ鳥にまけんな〜、セシルさんとウニシス君が拳をつきあげた。
よっぽど相性が合わなかったらしい。
うん、みんなと仲良く研究できるように頑張ろう。
冗談だよね〜絶対に首輪つけられて囲われたくないよ〜。
私はいっかいの治療士なんだからね〜。
読んでいただきありがとうございます♥