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六乂六乂(むかむか)  作者: 枝野メル
第一部 何日是歸年
11/14

第九話 幕間一 老人風の話し方をする褐色ポニ娘は実在する

 ウェブがまだまだ科学者とオタクのものと捉えられていた頃の,伝説的な話.とある,日本の無職・童貞・ひきこもりが集まるスレッドフロート型画像掲示板に,ある日の朝四時,一枚の画像が投稿された.ターバンを巻いた半裸の褐色美少女を描いたイラストである.しかし,その画像は,無惨にもナローバンド回線によってアップロードが失敗し,下半身が途切れてしまっていた.通常,そのような事態では,スレッドのレスは「貼りなおせ」や「こんナロー」で埋まってしまう.ところが,今回は幸か不幸か,画像に添えられた本文に対する反応が少なからずあった.

 結果,同一人物による同一時間における同一画像の投稿は,一週間続くことになった.もちろん,匿名の掲示板であるので,投稿した人物が同一であった保証はない.管理人さんなら知っているかもしれないが,管理人さんのことを知ろうとするところころされる.それでも,そのスレッドに集った無職・童貞・ひきこもりたちは,毎回下半身が途切れるその画像とレスの文体に同一性を見出し,投稿した人物を親しみと憎しみを込めてこう呼んだ.

 「こうなろう」と.

 ちなみに,最後の投稿でも下半身が切れたので,下半身を想像で描き足す祭が二,三日続いた.


 ログ倉庫に残っていた一部の本文を抜粋するとこうだ.

「こんナロー」

「は り な お せ」

「ブロードバンドにしてもらえ」

「願いを,無限に」

「セックスさせろ」

「二次元との行き来を自由に」

「働きたくない」

「ババア結婚してくれ」

「あなたつかれてるのよ>願いを無限に」

「某有名海外ドラマの『三つの願い』いいよな.あのシーズンが一番好きだ」

「お前がほしい」

「鯖増強してくれ」

「世界平和.人類の絶滅的な意味で」

「どこで攫ってきた」

「自殺しろ」

「バイトで某所の倉に調査に行って,その中の古い巻物を修復に持って来たら出てきた.お決まりだけど願いの回数は増やせないって.一つだけみんなに譲るから何がいい>どこで攫ってきた」

「死ね」

「生きろ」

「なんで倉にランプの精がいるんだよ」

「俺たち全員に職と嫁を」

「俺も調査と修復のバイトやるわ」

「俺も俺も」

「全俺が泣いた>俺たち全員に職と嫁を」

「これだ>俺たち全員に職と嫁を」

「自分を好きだったあの頃に戻してくれ」

「職じゃなくて金だけくれ」

「おいそういうことをいうのはやめろ>自分を好きだったあの頃に戻してくれ」

「巻物というか絵図だった>なんで倉にランプの精がいるんだよ」

「『月曜の朝』とかもいいよね>あのシーズン」

「これでいい?金と嫁のがいい?>俺たち全員に職と嫁を」

「人間じゃないから中に出しても安心だな.ただしふやける」

「女子向けに婿も可にしてくれ!!!」

「女子などいない」

「ミノ粉と常温核融合を現実化してくれ」

「でもホモはいるから婿も可で>女子などいない」

「飛行機野郎は自重しろ>でもホモはいるから婿も可で」

「サイレン鳴らそうぜ」

「アカシックレコード掌握」

「まて!みんなが職と嫁を手に入れてしまったらここが過疎になるぞ!」

「お前頭いいな」

「あと『偉大なるマリーニ』とかな.おまえとはいい酒が飲めそうだ>『月曜の朝』」

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