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トーラス工房まったり生活記  作者: 玖堂詩乃
第1章 世界の理
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第09話 初仕事2

 収集素材の場所が分かるようになったユウキは、衝撃から立ち直ると今までの鬱憤を晴らすかのように乱獲していた。


「今日はピール草の御浸しだーーー!」


 ピール草は解毒薬の材料なので、基本的に美味しくはない。好んで食べようとする人はいない。

 親のかたきのように引っこ抜いてはインベントリに放り込み、スライムがいれば商売敵のように(ほうむ)る。ジョブレベルは共に4になっており、既に依頼を2回は精算できる量を倒していた。


 しかしそれだけ取っていれば当然枯渇してしまう。見える範囲にドーラの花もピール草も無くなってしまった。

 モンスターはマナによってリポップするため、しばらくすれば元に戻るが。草花の再生には数日かかる。牧場経営ゲームのように日数の影響を受けるのだろう。


 夢中になって取っている間に森の手前まで来ていた。横を見れば森がそこに広がっており、薬草の名前がポツポツと浮いている。

 立ち止まって少し考えるユウキ。


(レベルも上がったし、手前の方なら少しくらい入っても大丈夫かな。)


 わずかに躊躇ためらうが、そう考えると森に入って行ってしまう。


 森の中は人があまり来ないのか、至る所に薬草があった。平原では見かけなかった、リームの花とパルメラ草という物も取れた。中には薬草だけでなく、野苺や林檎のような食料があった。インベントリに入れたら腐らないんだろうかと、実験を兼ねて収穫し放り込んである。 


 収穫の多さにホクホクし、夢中になって結構深くまで来てしまっていた。

 すると、何かが草を踏む音が聞こえた。


(っ!今の音は!?)


 内心焦りながら周囲を伺う。微かにハッハッという息遣いが聞こえた。


(…囲まれてるねこれ。しかもこの息遣いは犬?グランウルフって奴かな、どうしよう…。)


 走っても追いつかれるため逃げるに逃げられない。今の状況では包囲殲滅されてしまうため、どう戦うか考えるユウキ。

 左前方に大きな木が見える。しかしその間にはグランウルフがいた。


(全周囲まれるより、三方向の方がマシか…。)


 そう決めると、走り出す準備をする。大木との間にいるウルフに狙いを定めると、走り込みながらマナボルトを撃ち込む。一撃だった。

 走り出すと同時にユウキに向かって来た新手が、一撃で倒されたことに驚いたのか動きを止めた。

 その間に走りながら狙い撃つ。2体を追加で仕留め、大木に辿り着いた。


 マナボルトはクールタイムが早いのが救いだ。

 辿り着いた大木を壁にして、視界を三方向に絞る。


(犬は確か陽動・襲撃・指揮の3タイプで狩りをした気がする。)


 指揮官を探しながら、包囲網を狭めるウルフの先頭を削ってゆく。

 7匹目を倒した事でボスが焦ったようだ、一際高い遠吠えが右奥から聞こえた。

 その声によって一斉に襲い掛かってくる。



  (ACTIVE)

    マナスパークLv1を習得しました。

    鑑定Lv1を習得しました。

  (PASSIVE)

    マナリカバリーLv1を習得しました。

    スペルキャストLv1を習得しました。

    暗算Lv1を習得しました。

    生産効率Lv1を習得しました。



 7匹目を倒した時にレベルアップしたらしい、脳裏にログが流れる。

 周囲から駆け込んでくるウルフをログ越しに意識しながら、迷わずその1つを唱える。


「マナスパーク!」


 白色のプラズマがユウキを起点に放射状に走る。ウルフに当たったプラズマはそれでも止まらず、近くの目標目掛けて伝播(でんぱ)してゆく。

 ユウキ目掛けて殺到し、密集していたウルフ達。一網打尽にした事を確認することなく悟り、そのまま声の聞こえた右奥へ走り込む。

 仲間が全滅したことに驚いたのか、ボスらしいウルフはその場にいた。


 チャンスとばかりにマナボルトを打ち込む。しかし一撃では倒れなかった。

 攻撃されたことで硬直が解けたボスは、ユウキに向かってくる。


(まずい!クールタイムがっ!)


 その時、前方に小さめの石が落ちていることに気づいた。

 止まりかけた足を強引に動かして加速する。


(間に合えぇ!!)


 突進してくるボスに、辿り着いた石を蹴り付ける。

 それを見たボスは一瞬身をよじり軌道を楕円に曲げる。石はボスの鼻先を掠めて飛んでいった。

 その僅かな抵抗によって得た時間で、マナボルトはクールタイムを終えていた。

 至近距離からマナボルトを打ち込む。これでダメなら最早手は無い。

 目を閉じ、事態の推移を身を堅くして待っていた。


 何も起きない事に、恐る恐る目を開けると、ボスが消滅するところだった。


「た‥倒した…か。」


 その光景を呆然と見詰める。

 ドロップの毛皮が現れると、周囲は静寂に包まれた。

 静寂の中に鳥の声が聞こえる。


「ハッ!別のやつが来るかもしれない。」


 ただの鳥なのだが、他の生き物の存在を知ったことで新手が来る可能性を思い出す。

 慌てて倒したウルフの毛皮を集めて周り、森を引き返した。


 森を出て平原に帰って来たユウキは、ホッと胸を撫で下ろし、復活しているスライムを倒すことにした。

 ウルフの一件でレベルが上がっていたが、気づいたのは日が暮れ始め、帰ろうとした時だった。



  九条結貴 Lv10 [メイジ]

    ジョブリンク [クラフター]

    ファイター:Lv01 スカウト:Lv01 メイジ:Lv08 クラフター:Lv08



「あのウルフ達Lv7-8だったしな。ボスなんてLv見てられなかったし。」


 スキルのLvもいくつか上がっていた。

 ジョブレベルが自分のレベルに追いつきつつあることに驚きながら、夕暮れに染まったグランポリスへの道を歩いてゆく。朝には人だらけだった平原が、今はまばらになっていた。


 南門にやってくると、朝送り出してくれた人とは違う門番だった。三交代制なんだろうか。

 検査を受けて、街の中に入る。まずは換金しようと、冒険者ギルドに向かうことにした。




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