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トーラス工房まったり生活記  作者: 玖堂詩乃
第1章 世界の理
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第06話 神殿と祝福

 色々なことと必要な場所を教えてくれたNPCと別れ、北に進んでいる。宿屋や雑貨屋、武器屋なども知らなければならないので、キョロキョロと左右の建物を観察しながらだ。

 しばらく進むと、心なしか街並みが綺麗になってきたように思う。建物も1つ1つが大きくなっているようだ。


(あ、あの家馬小屋がある。もしかして貴族とかの居住区なんだろうか。そうか、城に近づいてるんだもんな。)


 こういった世界観では貴族と平民は区画が壁と門で別れていて、通行証が必要なものであるが、どうやらこの街はそこまで分けることはないようだ。

 街並みが変わり始めてから少し進むと、宿屋らしきものを見つけた。


「あれは宿屋かな、入り口から見える位置にカウンターあるしそれっぽい。」


 建物の横にはある程度の敷地があり、厩舎と強固な扉の倉庫が見える。


「って言っても高そうだな。見えるところに値段が書いてない…。そんなもの気にするやつはそもそも入らないのか。」


 そこは貴族御用達の商人や、下級貴族の参内時に利用される宿屋だった。

 別の宿屋を探そうと思いながら北に進む。城の前庭門が見えるようになってきた辺りで、雰囲気の違う建物が右手に見えてきた。


 若干白味の強い石材で組まれていて、人が使う窓は透明度がある。採光用の高所の窓にはステンドグラスのような物が(はま)っている。入り口は開かれており来るものを歓迎している雰囲気だ。敷地内には細い別塔が建ち、その最上部には釣鐘が下がっている。


「ここが神殿みたいだな。明らかに周りの建物とデザインや構造が違う。」


 結貴は入り口から中の様子をうかがった。どうやら中には神官か司教のような立場の女性がいるようだ。装飾が施された服を着ている。


「あの、すみません。この施設は信者の者でなくても入れますか?」


 入り口から声をかけられた事に気づいた女性は、こちらに向き直ると近づいてきた。


「あら、信者の方ではないと言いますと冒険者の方ですか?」


 その口ぶりだとこの世界の人間は基本的に神殿に縁があるようだ。


「はい、冒険者です。少々こちらの祭壇に用がありまして。」

「祝福を受けに来られたのですね。門戸は全ての者に開かれております。どうぞお入りになってください。」

「そうですか、では失礼します。」


 女性は横身になり手のひらを祭壇に示すように中を促す。


「私は神官を勤めております、サナディアと申します。」


(うん、ターゲットして名前見えてるけどね。)



  サナディア Lv13 [メイジ Lv13]



(Lv13?神官なのに低くないか?確かに若そうだけど。)


「私はくじょ…ユウキ=クジョウと言います。」

「ユウキさんですね。分からないことがあれば何でもお聞きください。」

「ありがとうございます。」


 ユウキはサナディアに会釈すると祭壇に近づいてゆく。


(とりあえず自分で試行錯誤しないと、何が分からないか分からないって状態だしな。)


 祭壇の前にやってきた。しかし、ジョブ変更に関するイベントは起きないようだ。


(近づいただけでは何もないのか。まぁ何かの時に祭壇近くにいただけで変更確認が出続けてるのは問題だしな。)


 試しにジョブ変更と念じてみる。


『ジョブ変更を行います。現在インターバルはありません。変更すると12時間は再変更が出来なくなります。』


 正解だったようだ。

 脳裏に左右2つの枠が浮かび、その下には確定とキャンセルボタンが並んでいる。左には現在の自分のステータスが表示されている。右の枠には何も表示されていない。


(右は変更後のステータスかな。)


 メイジと念じると右の枠に変更後のステータスが表示された。


(HPやMP、攻撃力とかのパラメータが増えてる…。メイジなのに攻撃力まで?基本ステータスはプレイヤーレベル依存だと思ってたが違うのか。)


 結貴はイベントでの説明で、装備のレベル制限はジョブレベルに依存すると聞いていたため、プレイヤーレベルはパラメータ用だと考えていた。


(これは…プレイヤーレベルに基づいたパラメータに、ジョブレベルでのパラメータを合算してる?。ジョブはスキルだけじゃないってことか。)


 その認識は正しかった。ジョブで補正するのではなく、両方合わせて1つのパラメータとなるのである。


(あれ?もしかしてジョブリンクした時もパラメータ増えてたのかな。)


 ジョブリンクの時は、詳細な変更後ステータス覧が無かったため気づかなかったが、実は増えていた。


(よし、確定しよう。)


 確定と念じると、ジョブが変更されることを祝福するかのように、ユウキの周りに転送の時よりも淡い光の粒が湧き上がった。

 ユウキを見守っていたサナディアは、無事祝福されたことに微笑んで佇んでいた。


(どんなスキルがあるのか見られるかな?)


 スキルと念じると、左右2つの枠が脳裏に浮かぶ。枠の中はアクティブとパッシブに分かれている。

 左には少数のスキルしか無かった。右にはアクティブスキルに魔法スキルが並び、生産系のスキルもある。パッシブにも色々なものが並んでいた。


(左が今持ってるスキルで、右が習得可能なスキルか。右のはスキルのLvの他に赤文字で()されてるLvがある。スキルポイントとかが見当たらないってことは自動取得か?)



  (ACTIVE)

    ファイア      Lv1 (PL Lv3 / JB Lv3 / ファイアの知識)

    ファイアストーム Lv1 (PL Lv5 / JB Lv5 / ファイアストームの知識)

       :



(ファイアを覚えるにはLvと知識がいるのか、PL Lv3は白くなってるからクリアしてるってことかな。)


 右のスキルをパッシブスキルも含めて、全部が条件を満たしてないことを確認すると、意識を戻した。


(持ってるアクティブスキルにはマナボルトが増えてた。クラフターとメイジはLv1だから設定した時点で覚えたんだな。)


 ユウキは振り返ると、少し離れた所からサナディアに見守られていたことに気づいた。


「無事に完了されたようですね。」

「ハハ…初めて試したので色々と時間がかかってしまいました。」

「他の皆さんもそうでしたから、お気になさらずとも。」


 気まずげな雰囲気を察したようだ。


「そうでしたか。あ、お聞きしたいことがあるのですが。」

「ふふ。メイジに就かれたのでしたら魔法の知識についてでしょうか。」

「えぇ、スキルの取得条件にその魔法の知識が必要なようなのですが、それらはどうやって知るのでしょう?」

「魔法の知識については、魔法協会が管理しています。と言っても、管理しているのは古代魔法の石版や魔道書の原本などと、研究結果ですが。」


 魔法協会というのがあるようだ。


「魔法協会に入ればいいのですか?」

「いえいえ、飽く迄遺物や原本を管理、研究しているだけでして。魔法の知識自体は一般に開放されています。」

「ではどうすればいいのでしょう?」

「魔法の知識はそれらを読むことで得る事もできますが、難しい上に時間がかかります。そのため、それらを自動的に記憶させてくれる魔法アイテムを作って、協会が各地の魔法具店に卸しているのです。」

「魔法具店でそのアイテムを買うんですね。」

「えぇ、所有権を持つ者が開くと自動的に発動する、スクロールというアイテムです。」


(図書館で読むとか、書店で本を買って読むかと思ったら消費アイテムなのか。読むより簡単だけどお金が問題だな。)


 魔法の覚え方が分かったユウキは、いずれ行くだろう魔法具店の場所を聞くことにした。


「魔法具店はどの辺りにあるんですか?」

「中央広場から東に伸びる中央路沿いにあります。雑貨店や武器屋、防具屋などのお店は東に集まっているんです。宿屋や酒場などは逆に西側に集まっています。」


 魔法具店だけでなく、他に必要になる場所も色々と教えてくれた。


「助かります。」

「ふふ。他の方にもよく聞かれましたので。」


 チュートリアルが無いため、やることは皆同じだった。


「色々とありがとうございました。」

「また何か困ったことがありましたら、いつでもいらしてください。」

「はい、その時は。それでは失礼します。」


 会釈をし、サナディアに見送られながら神殿を後にする。


(次は冒険者ギルドだな。)


 北の神殿から一路、南の冒険者ギルドへ向かうことにした。



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