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トーラス工房まったり生活記  作者: 玖堂詩乃
第1章 世界の理
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第05話 チュートリアル

 光の洪水に呑まれ真っ白な空間から転移された。一体何が起きているのか混乱しながらも、出口が近づいてくる。

 光が収まり、周囲が見えるようになった結貴の目に飛び込んできたのは。あの日見た石材建築の街であった。


「ここは…あの街か!あの石柱に囲まれた魔方陣も、通りの角にあるあの店も、そこにいる店員もあの時のだ!」


 本来最初に来るべき場所に、ついにやってきた結貴。


「何だったんだよ一体…。はぁ、気にしても仕方ないか。とりあえずチュートリアルの役割をするものがあるか探すか。」


 悪態をつきながらも、ようやく目的の場所に来れたため、気分を一新して周りを確認する。


 通常MMORPGというものは、操作やシステムを説明し、実際にその操作をして覚えさせようとするクエストを与えるNPCが近くにいる。そのNPCが誰かを探すのだが…。


「誰の頭にもクエストが発生してるようなマークが見えないんだけど…。」


 チュートリアルクエストを与えるNPCであれば、その場を動かず転送位置の近くにいるはずなのだ。しかし、周りのNPCは皆思い思いに動いている。じっと立っているのは待ち合わせをしているかのような者だけである。


「まさかチュートリアルなし?そんな馬鹿な。………あっ!もしかして、NPCにリアルな行動が可能になったから、見た目にこだわってクエストもパッと見で分かるようにしてないんじゃ。」


 人と同じ思考ができるAIであることを思い出した結貴は、クエストではなく人に聞くという感覚で教えてもらうのではないかと思った。

 試しに近くで人待ち風の男に話かけてみる。


「あの、お聞きしたいことがあるのですが。」

「はい、何でしょう?」

「今ログインしたばかりなのですが、確認したら外にもインベントリにも武器がないんです。」

「?ログイン?えっと…武器が見当たらないというのは、無くされたんですか?インベントリが開けるということは冒険者の方ですよね。」

「冒険者?えぇと、確かに冒険者と言えなくはないかと。無くしたのではなく、最初からどこにも見当たらないのですが。」

「冒険者というのは、この世界とは違う場所からここにやって来た人のことで、我々よりも強力な力と成長力を持っています。」

「あぁっ!そうです!それなら冒険者に間違いないです。」


 どうやら冒険者だけがインベントリを持っているらしい。やはり人に会話として聞くのが正解だったようだ。


「武器が最初から見当たらないというのは…、お持ちの武器はインベントリに保管されてたんですか?」

「いえ、ログインしたばかりなので持ってないです。最初に支給される武器のことでして。」

「支給?どなたからか貰う予定だったのですか?」

「え?いえ、予定はないですが。」

「???お持ちでないなら、見当たらないのは当然なのでは?」

「え?あれ?」


 なんだか会話が噛み合わないことに混乱していた。


(いや、あるよね?一番安い武器が支給されるよね?)


「ログインというのがこの世界へ来られることでしたら、世界を渡る影響で混乱されているのでしょう。元々冒険者というのは書物で残っている寓話の存在に近かったのです。しかし、昨日から突然数十人の方がこの広場に来られました。皆さん程度はあれ混乱した様子だったので、そういう影響を受けて来られるのかと思ったんですが。」

「昨日?サービス開始は今日のはずですが。」

「いえ、確かに昨日多くの方が来られましたよ。皆さんしばらく会話された後、どこかへ行かれました。武器が無いという話をされる人もいました。」


(どうやら他の人も武器がないらしい。開発の設定ミスだろうか。昨日ってどういうことなんだろう。)


「では、武器はいいとして、お金についてなのですが。」

「えぇ、それも昨日聞かれました。基本的に冒険者の方は、ギルドから依頼を受けるか、モンスターを狩った素材を売ったりするのがいいと思います。露店に関しては道や中央広場に出すのはやめてください。通行の邪魔になりますので。衛兵が来ますのでご注意ください。」

「ではどこで出したらいいのでしょう?」

「街の東に公共公園があります。そこであれば出してもらってかまいません。」

「なるほど、ではお金の単位について教えてください。」

「この世界ではシグと呼ばれています。銅貨が1シグです。10枚ごとに上の貨幣があり、銅貨・大銅貨・銀貨・大銀貨・金貨・大金貨・白金貨・大白金貨があります。」


 種類が多かった。最大8枠もお金で埋まってしまうのだろうか。


「ありがとうございます。とりあえず何とかなりそうです。」

「いえいえ。それと、冒険者ギルドはここから南の中央通路沿いにありますので。」

「あ、そうですね。では神殿はどちらでしょう?」

「神殿は北の中央通路沿いです。北の通路の終点であるお城の近くにあります。」

「分かりました。早速行ってみようと思います。」

「お役に立てたようで何よりです。」


 お互いに手を振りながら別れ、一路北を目指した。


(とりあえずジョブ設定してから冒険者ギルドかな。)




お金の基準は1S=10円くらいで考えています。

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