第03話 オープン当日
ヒロインの1人が登場します。
発表会から3ヶ月、そのあまりの内容からイベント内の話に収まらず、様々なメディアや情報サイトを賑わせることになった。テレビでは特集が組まれ、可能なのかを大学教授、民間の技術者を交えて議論が行われている。
しかし、イベントで告知された専用筐体の設置場所に関して、実際に大型の何かが搬入され、内装が整えられていることが確認されていた。ここに来て世の中は、その存在を確信し、期待を持って動向を見守っていた。
この日、学校を終え帰宅した結貴は、ニュースからファヴニルオンラインの公式ページが更新されたことを知った。早速閲覧してみると、なんと正式サービス日程が告知されている。
「ついにかっ!プレイ料金や施設の利用時間は分かるかな。」
概要情報を開くと、プレイ料金は無料となっていた。
(アイテム課金制なのか?)
さらに、以前のイベントに参加した人には優待チケットが贈られると書かれていた。
「優待チケット?プレイじゃなくて?」
説明によると、優待チケットとは1年間専属の筐体が近くの施設にリザーブされるという。これに結貴は歓喜していた。
「施設の利用には事前予約が必要で、抽選倍率もとんでもなく高かったのに、専属筐体!?いつでも出来るってことか!?」
踊りだしそうになっている結貴だったが、一つだけ気にかかっていることがあった。それは、今までと全く異なる概念で動作するシステムをベータテストなしで、いきなり本サービスしようとしていることだった。
しかし、興奮している結貴はその引っかかりを隅に追いやり情報収集をしながらはしゃいでいた。
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☆オープン当日
オープン当日、朝から結貴は地元に出来た施設に来ていた。懐には届いた優待チケットが入っている。入り口近くまで来ると、既に事前予約に当たった人達が列を作っていた。列に並ぼうとしたが、よく見ると入り口近くに看板が立っている。
『優待チケットをお持ちのお客様はこちらへどうぞ →』
(僕のことですか!僕のことですね!他にもいるんだろうか、あのイベント招待人数100人いない気がしたけど。こんな近場で複数いたらビックリだね。)
看板の示すまま建物を右に迂回する結貴、少しすると別の入り口と中を指す看板が見えてきた。その入り口でチケット見せ、身分証明確認と自身の生体情報の登録が行われた。次からはチケットを持たなくても、生体認証で通れるらしい。
案内人の女性が付き館内を先導される。そのまま端末に向かうのかと思ったら、更衣室へ案内された。繊細な調整が必要とされるシステムだから、着替えて素肌に近い状態になる必要があるらしい。
シャワーを浴び、光沢のある浴場着のようなものに着替えた。引き続き案内人に先導され歩いてゆく。次に通された部屋には、カプセルホテルのようなベッド型筐体が置かれていた。どうやらこれが相互フィードバック型専用筐体らしい。しかも2つある。
「見たところ2つしかないですけど、他の人はどうするんですか?」
「この部屋は優待者専用となっています。一般参加者は別の部屋に同様の筐体を用意しています。」
「2つあるようですが、僕の他にもここを使う優待者が?」
「はい、この地区ではお二人が対象となっています。」
他にもいるらしい。まさか数少ないイベント参加者がいるとは。
案内人は手前の筐体を示しながら、
「ではこちらが九条様の筐体となりますので、次回以後お間違えのないようにお願いします。」
「あ、はい。どっちでもいいわけじゃないんですね。」
「はい、もう一人は女性の方ですので、固定させていただきます。」
「そうなんですか、でもベッド型のカプセルなのに異性と同室でいいのですか?」
「室内への入室はセンサーで常にモニタールームに通知されます。筐体から起きられた時にも同様に通知されますので大丈夫です。」
なるほど、睡眠状態になってログインすることになるし、着ているのも1枚だけだからその辺は徹底しているようだ。
「では、利用方法を説明させて頂きます。こちらに仰向けで寝ていただき、眼鏡・コンタクトレンズ等使用されている場合は外してください。準備ができましたら、内側のこのボタンを押すと閉まります。施錠後、1分程で睡眠導入が始まります。その後は意識した時にはもうファヴニルオンラインに入っております。」
「分かりました。では、早速。」
筐体に寝そべり、ボタンを押して蓋を閉める。ロックされる音が鳴りしばらく待つと、頭の上の方から何かが噴射される音がした。
(これが睡眠導入か、確かに段々意識がおぼろ・げ・・に・・・Zzz)
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☆もう一人の優待者
私は三島遥歌、今日は待ちに待ったファヴニルオンラインオープン日。優待チケットをポシェットに仕舞い、意気揚々と施設へ向かう。
(ついにこの日が、生産に力を入れたゲームなら長期間遊べるだろうし、いちご狩りとかできるかしら。戦うよりも作物育てたり、アイテム製造して露店とかしたいのよね。)
遥歌は運動が苦手なためゲーム好きだったが、相互フィードバック型VRMMOということで、体を動かすゲームというものに興味を持っていた。自分では上手く動けなくても、想像で操作するのなら、自由自在に動けるかもしれないと期待を抱いていた。
施設に到着すると、結貴の時には並んでいた列が既に館内に収容されていた。遥歌は入り口に置いてある看板を見て、建物を右に迂回してゆく。少し歩いて別の入り口を見つけると、そこで身分証明・生体情報登録が行われ、結貴の案内をして戻ってきていた女性に案内された。
更衣室でシャワーを浴び、着替えた遥歌は筐体のある部屋に案内された。部屋に入ると筐体が2つ置いてあり、1つは既に誰かが入って閉じているようだ。
「あの…手前の筐体には誰かがもう居るようですが。」
「はい、先に到着されていた方が既にログインされております。」
誰が入っているのだろうと興味を引かれ蓋を覗こうとするが、透明な筈の見取り窓は周囲の外装と同じ色に変わっている。
「プライバシー保護のため、見取り窓は中の者が睡眠に入った時点で遮光されます。」
「そうですか、折角なら女の子同士向こうで一緒に遊ぼうと思ったんですが。」
「いえ、入られているのは男性です。」
「え!?男性!?」
「はい」
「え?え?だってこんな格好ですよ!?一緒の部屋っておかしいでしょ!?」
「ご心配なく。このようにログイン中は遮光されますし、入室・起床時にはモニタールームに通知され、使用者を監督致しますので。」
「そっそうですか…。いやでも…。」
動転しながら遥歌はどうしようか悩んでいた。
(やっぱり止めて帰る?でも楽しみにしてたし…。)
散々悩んだ遥歌は監視されているなら大丈夫かと、自分を納得させ筐体に向かう。説明された手順で蓋を閉め、睡眠導入が始まるのを待つ。
こうして、同じ部屋からログインした2人は、お互いを知らないままファヴニルオンラインへと導かれてゆく。
次回ログインしますと言いましたが…嘘です!
ログインするつもりでしたが、ヒロイン登場させようと思い立って色々変えたらギリギリログインできませんでした。orz
気の向くままつらつら書くこの作品、予定は未定です。
タイトルすらいつの間にか変わるかも。