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第02話 発表会2

 目の前では5人組のパーティーが、スケルトン型の兵士2体と平原よりも強そうなゴブリン2体の団体と戦っていた。パーティー戦闘の解説だろうか。

 盾持ちが何かのスキルをスケルトンに放っているのが見える。魔法が飛んだようには見えないが、対象になったらしい敵が一瞬震えた。横の短剣職に向かっていたスケルトンが即座に方向転換し、盾職に向かってゆく。


(あれはヘイトを上昇させるタウントか。)


  タウント:(ACT) 自分の敵に対するヘイトを増大させる。


 盾職はスケルトンにはタウントを使ったようだが、ゴブリンには使わないようだ。さすがに団体相手に全て自分に貼り付けたらもたないのだろう。スケルトンは防御力が高いため後に回し、他の3人にゴブリンを倒させ、1人はヒーラーとして盾に着く作戦のようだ。


 ゴブリンは前衛が攻撃で自分に1体ずつ貼り付けるようだ。もう1人のメイジは全体回復を入れながらゴブリンに魔法を放っている。時間をかけながらも着実にゴブリンを倒し、3人が盾職に合流する。スケルトンは強固と言っても、5人掛かりではさすがにあっという間に倒してしまった。


 倒されたモンスターが光の粒になって拡散する…と思っていたら、黒い粒になって地面に吸収されるように消えてしまった。


(今度は黒い粒?何か意味があるのかな?)


「御覧頂いたのが、最もポピュラーなパーティー戦闘の1つです。

 パーティーモンスターの強さは、1体1体で見れば単独モンスターよりも弱いステータスにあります。これは、単独で生きる必要がある者に比べて、群れで生活する者は訓練量が減るためです。

 またパラメータについても、単独型がバランスタイプなのに対して、パーティー型はそれぞれの役割に合わせた特化型となります。

 しかしながら、数と連携によってその弱さを補って余りある強さの集団と化します。」


(厄介そうだな。ダンジョンじゃあ迂回の余裕もないだろうしな。パーティー必須か。)


「お気づきになった方も居られると思いますが、フィールドではモンスターは白い光の粒となって消滅します。それに対し、特定のエリアでは黒い粒になって地面に吸収されます。これはマナの発生条件が違うことから発生します。外のフィールドではマナは自然から供給されるため自然に還ります。しかし、ダンジョンではマナの供給源がありません。よってこういった場所では倒したモンスター、或いは倒されたプレイヤーは黒い光の粒となってエリアに吸収され、新しいモンスターの生成に使用されます。」


(なるほど、設定が細かいがそう言う理由から違いがあったのか。)


「洞窟でも火口に繋がっているものなどは、火口からの供給とエリア吸収とで二重の供給源を持つため、モンスターのポップが早い傾向にあります。」


 そう言うと、藤堂は右手を観客に向かって振った。足元に魔方陣が出現し、周囲に光の帯が立ち昇りどこかへ転送された。


(移動か?今度はどこだ。)


 光が収まり周りを見渡すと、どこかの街の広場のようだ。すごく広い街だ。広場の中央には模様が描かれた青い石柱4本が建っており、その中を魔方陣と光が満たしている。


「ここが、皆さんがログインした時、最初に降り立つ街『グランポリス』です!」


 石畳の床に石材を主に使った建築物。道の中央には馬車や荷車が通り、人が左右を歩いている。しかし、一番気になったのは…。


(あれはNPC?でも決められたパターン行動じゃないように見える。まるでプレイヤーが動かしているような…。)


 結貴は、店先で店員と雑談しているというNPC同士の行動に衝撃を受けていた。しかも人によっては値引き交渉をしているようだ。


「この街の外観もおすすめではありますが、我々が最もご紹介したいのは、NPCのAIです。量子コンピューターの実用化によってAI分野は瞬く間に高度化していきました。しかし、どうしても超えられない壁がありました。膨大な演算でより細かな選択を行えるようになったとしても、人と同じ自発的な選択はできなかったのです。」


(プログラムで動作するんだから、予め用意している選択肢以外は取れるわけがない。でもどうして…)


 結貴はNPCの行動を観察しながら解説を聞いていたが、「高度なAIを開発しました」で済むはずの解説が、AIの詳細な説明を始めたことに疑問を持っていた。そして一つの予感に胸を掻き乱されていた。

 藤堂はニヤリと笑みを口に貼り付けると、


「本作品に使用されているAIシステムは、人と同じ思考を可能としています。そして、それを可能とした根幹技術によって、人と機械の相互フィードバック通信を可能としました。」


(人と同じ思考AI!? いやそれよりもっ、人と機械の相互フィードバック!?)


「これにより本作品は従来の家庭用HMDではご利用になれません。よって我々は2つ目の発表をさせて頂きます。」


(そんなことができるなら確かに今までのHMDじゃ駄目だろうけど。でもそれじゃあどうやって!)


「我々は、この相互フィードバックを可能にする端末を新たに開発致しました。そして、ゲームのリリースに先駆けて特定の施設に対し、設置を進めております。」


(施設に設置?そんな馬鹿な…ゲームだろうに、それじゃあログイン人数が限られる。端から破綻してるじゃないか。……そんな事は分かっているはずだ。にもかかわらず実行するってことは、ゲーム以上の目的があるのか。或いはスポンサーが付いているのか。今までの常識を覆すシステムなら確かにありそうだ。)


 相互フィードバック型端末は、ゲーム等娯楽に限らず、学問、研究、シミュレート、経済、軍事、あらゆる場面の形態を激変させるだけのポテンシャルを持っている。その点で言えばスポンサーはどこからでもやってくるだろう。

 周りからも驚愕や疑問の声が聞こえてくる。


 衝撃に襲われている中ポータルが光出し、周囲を光の洪水が覆ってゆく。視界が白に染まり、その中に『ファヴニルオンライン』のロゴが現れ、消えてゆく。しばらく待つとHMDのバイザーが透明になり、視界が現実に戻ってくる。場内が段々と明るくなり始めると、周囲からは次々と藤堂に対して質問が投げかけられる。


「皆さん落ち着いてください。我々からの発表は以上の2点です。これより残りの時間は質疑応答としたいと思います。アシスタントがマイクをお持ちしますので、質問がある方は挙手をお願いします。」


 その後の時間はほとんどの人が手を挙げ、フィードバック型の仕組みや、専用筐体の設置場所についての質問や希望が殺到し、好評の中で幕を閉じた。結貴は自分の地域にもその施設があることを確認し、オープンを心待ちにしながら帰途についた。



プロローグ的なものが終了しました。

次からゲームにログインし、本編が始まります。

たくさんの投稿に埋もれて中々目に付かないだろうなと思っていたのですが。

これを書いている間に早くもお気に入り登録されていたようで、驚きました。


6/29 パーティーモンスターの説明を修正しました。


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