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トーラス工房まったり生活記  作者: 玖堂詩乃
第1章 世界の理
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第19話 モンスターAI

 防具屋を後にした2人は、そのまま東門へ向かっていた。

 南のスライムはLv3-4だが、東のゴブリンはそれよりも少し高い。

 ハルカのLvに不安はあるが、最初は自分が狩りまくれば直ぐに問題無くなるだろうと考えてのゴブリン討伐だ。


 途中、魔法具店を見かけたので、念のためにヒールとキュアの魔法スクロールを買った。それぞれ1000Sと高かったが、スキルを覚える最初に使うだけなので、あまり売れずこんなものなのだろう。

 売れないのに安くならないのは、人気性や消費期限があるわけではないため、少数生産品として高値止まりするためである。

 早速スクロールを使ってみる。開いた瞬間にスクロールから光が立ち昇りユウキに吸い込まれていく。光と共にその魔法の知識が流れ込んできた。スキルの取得条件は、プレイヤーとジョブの各Lv5と魔法知識だったので、無事スキルを習得した。



  魔法スクロール(ヒール)を使用しました。

  ヒールLv1を習得しました。

  魔法スクロール(キュア)を使用しました。

  キュアLv1を習得しました。



  ヒール:対象のHPを回復させる。

  キュア:対象の状態異常を治癒する。スキルLvまでの重度の毒・麻痺・呪い等を解除。



「強化系の魔法はLv10か…お金も無いしな。」

「あれだけ稼いだのに、あっという間に無くなったわね。」

「まぁ1日で稼いだものだし、地道に行くさ。」

「どこが地道なのよ…。」


 ハルカは、自分の5日分の稼ぎを1日で狩った事にも、それを既に使い切っている事にも呆れていた。



 東門へ着くと、チェックを受けて外へ出た。

 ゴブリンはまばらに歩き回っているようだ。Lvを確認すると5-6である。


「それじゃあ適当に倒して回るから、ハルカはLv3になるまで後ろから着いてきて。」

「Lv3?もしかして私は薬草を採るかかりなの?」

「あぁ、この辺だとモンスターは一撃だから。木剣は薬草を採ってる最中にはぐれた時用かな。」


 そう言うと、ユウキはインベントリから杖を取り出した。ハルカも続いて剣を取り出す。

 ふと、ついでにユウキはセカンドジョブをファイターにしておく事にした。ハルカが薬草を採るので、被っているクラフターにしておくよりは、他の場所に行った時のために育てておこうと思ったのだ。


「Lv3になったらハルカが先頭で適当に採取に向かってくれ、後ろから進路にいるゴブリン倒すから。」

「分かったわ。」


 ユウキは一番近いグランゴブリンに向かって行く。ゴブリンは手に棍棒を持っているようだ。


(棍棒は店に並んでなかったなぁ。マスタリが無いからかな。)


 そんなことを考えながらゴブリンに近づいて行った所、不意に目が合った。気にせず近づいて行くと、ゴブリンは警戒しているようだ。



  グランゴブリン Lv5 (PSV)



(パッシブならこのまま目の前に行けそうだけど、なんか様子が変だな…。)


 目が合った時点で20mくらいあった距離は、既に10mを切っている。さらに数歩進んだ時だった。突如ゴブリンがアクティブに変わり、棍棒を振り上げながらこちらへ走って来た。


(なっ!?マナボルト!)


 ユウキが咄嗟とっさに放ったマナボルトがゴブリンに命中すると、ゴブリンは倒れ消滅した。後にはゴブリンの角が落ちていた。

 ユウキはゴブリンの角を拾い、インベントリに放り込みながら考える。


「今のは一体…。ハルカ、今のゴブリンはパッシブだったよな?」


 後ろから様子を見ていたハルカも困惑しながら同意する。


「えぇ、確かに最初はパッシブ表示だったわ。それが突然アクティブ表示に変わって、走って来たように見えたのだけど。」

「俺もそう見えたんだが、…まだ何もしてないのになぁ?」

「ん?あぁ~もしかして。」

「心辺りがあるのか?」

「今の状況に似た話を酒場で聞いたわね。

 その人はスライムのエリアでLv3になってスキルを覚えたのね。そのまま短剣を買いに行って、今度はゴブリンのエリアに移動したのよ。で、スカウトなものだから急所にスキル打ち込もうと思って、ゴブリンがパッシブなのを確認して後ろから近づいて行ったの。そうしたら、振り返ったゴブリンと目が合ってその人は硬直したのだけど、パッシブだから大丈夫だと考えてそのまま近づいたら、行き成り襲われたらしいわ。」

「まさに同じ状況だな。」

「そうね。」


 その話と自分が遭遇して感じた事から、ユウキは1つの結論を出した。


「モンスターにもNPCと同じAIが走ってるんじゃ。」

「やりそうね。高度シミュレートするなら、モンスターの種族ごとに専用のAIを作るくらいはしそうね。」


 ハルカもユウキも、このゲームのために専用施設の確保・機材導入までやっている異常さを思い出し納得した。

 そして、高度AIと今の現象から出てくる予測は一つ。


「パッシブは飽く迄、積極的に攻撃しないというだけで、野生動物のように一定の条件で襲いかかって来るということか。」

「そう考えておいた方が良さそうね。」


 ユウキは認識を改め、アクティブ・パッシブ関係なく生物として警戒することにした。しかし、次のゴブリンに向かって歩こうとした時だった。ハルカがユウキを呼び止めた。


「ちょっと待って。」

「ん?どうした?」

「今ドロップを拾ってたじゃない?」

「あぁ、どうかしたのか?」

「忘れてたわ。まだパーティーしたことなかったから、そっちの設定はいじってなかった。」

「設定って…。まさか。」

「ドロップの取得を自動にできるのよ。パーティーについても同じく。それにパーティーの場合は分配方法もあるんじゃないかしら。」


 ハルカはメニューからパーティーを選び設定を変更する。ドロップを自動取得にした。分配方法には取得者・ランダム・共有ストレージがあった。デフォルトでは共有ストレージのようだ。

 共有ストレージに意識を集中すると説明が表示される。



  共有ストレージ:パーティー結成中のみメンバー全員がパーティーコマンドから閲覧できる。

          取得したアイテムはここに入れられる。

          中身を残したままパーティーが解散された場合、お金は均等分配、アイテムはランダム分配される。



 枠内に表示された共有ストレージには、さっきユウキがインベントリに入れたゴブリンの角が入っていた。


「ふんふん。拾ったアイテムの分配は、取得者・ランダム・共有ストレージが選べるみたい。」

「共有ストレージって?」

「パーティー用のストレージがあって、インベントリ開いて放り込むとそこに入るようね。後でまとめて精算する用みたい。」

「じゃあそれでいいな。設定は終わった?」

「えぇ、もう大丈夫。バリバリ倒して良いわよ。」


 確かに一撃で屠って回るには、一々拾うのは面倒である。ユウキは倒す度に止まる必要がなくなったため、真っ直ぐ相手に向かうのは止めた。2・3体目星を付けて、その間を歩いて倒すようにルートを取った。これによって唯でさえ早かった殲滅速度が流鏑馬やぶさめの様になっていた。





 今回から本格的に狩りが始まりました。

 これによってジョブLvの成長に合わせて色々できるようになるので、話が広がるといいなぁと思います。



 ついに日刊ランキング1位になってしまいました。合わせて週間ランキングも1桁に。

 何が起きているのやら恐れ慄いています。

 筆の進みの遅い当方ですが、これからも応援をよろしくお願い致します。


7/1 ルビの振り方を()から《》に変更し、全話修正しました。

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